「人真似」ロボティクスが致命傷

「ランドロイド」は製品化へのキーテクノロジーにロボットアームを選択した段階で離陸する可能性が閉ざされていた。

 ロボティクスは人体工学に置き換えたくなるもののようだが、生体維持と生殖、愛玩の機能を必要としない以上は人体から発想するメリットは皆無で、不要に背の高いガンダムは狙撃目標にしかならないし、アンドロイドの最大需要は愛玩であることは言うまでもない。ロボットアームでつかんで畳むという「人真似」発想は致命的で、安価で使い勝手の良い手動折り畳み機を見ると自動織機から発想するのが正解だったと分かる。

 アイテムを見分け寸法や縫い立てをつかむのに画像認識AIは有効だが(厚みや番手、編み地や織り地も認識可能だが、そんな発想はなかったようだ)、人より速く正確に判断できない限り実用性はないし、それを学習するまでの失敗をエンドユーザーに負担させる訳にもいかない。人より速く正確に認識する日が来るとしても、ロボットアームの処理速度が追い付くことはなかっただろう。

 多くの工業用ロボットが熟練職人の動きをトレースしてAI制御しているが、それでは1人力を大きく超えるのは難しい。歩兵をアンドロイドに、戦車を戦闘ロボットに置き換えるようなもので、戦術的メリットは限られる。その点、AIで編隊制御するドローン群は画期的な低コストで戦術的効果を発揮する。ロボティクスが陥る「人真似」の隘路は視野狭窄による思い込みの典型で、生産ラインでも物流プロセスでも店舗運営でも、もがき続けるだけで隘路は抜けられない。

成否は使い勝手と普及が決める

 新たな技術や製品がマーケットを獲得して離陸できるか否かは技術の革新性や製品の優秀さとはほとんど関係がない。それは作り手論理の押し付けであって、使い手の利便に応えているわけではないからだ。

 マーケットを獲得する製品はバーコードやQRコードなど、意外に古典的な技術やニーズに立脚していることが多い。その理由は1)完成され汎用化された技術は使い勝手がよく、2)開発費が回収済みで安価あるいは無料でリソースが公開されており、それゆえ3)リソースを活用した周辺技術やパーツがそろっているから、4)使い手にとって安価で使い勝手が良くメンテも容易で、5)急速に普及して一段と手軽になる。逆に、開発費が高く未回収で信頼性も未確立でリソースが公開されておらず、それゆえ周辺技術/ソフト/パーツもそろわず、使い勝手もコスパもメンテも悪い技術と製品はマーケットを獲得できず競争から脱落していく。ベータがVHSに追い落とされたように、人真似ロボティクスもAI制御でチームアクションするドローンや高速ソーターなど専用機器に追い落とされていくに違いない。

空気に煽られず冷静な判断を

 作り手、売り手が“強み”と思い込んでいても、顧客にとってはニーズに合わなかったり使い勝手が悪かったりして実態は“弱み”に転じていることも少なくない。マーケットに受け入れられるか否かは使い勝手とニーズが決めるのであり、技術の斬新性や話題性が決めるわけではない。周囲やメディアに煽られることなく、広い視野で鳥瞰して冷静に判断するべきだ。

 実際、「ランドロイド」は家電やITの業界のみならず大学や経済産業省、内外のメディアがこぞって囃し立て、経営者を舞い上がらせて冷静な判断力を損なったきらいは否めない。起業直後から注目されて17年には「日本ベンチャー大賞技術革新賞」を安倍首相から手渡され、スタートアップワールドカップ2018の日本代表に選出され、18年には「ものづくり日本大賞優秀賞」を受賞。経済産業省はJ-Startup企業に認定して後押しし、アカデミーもメディアもこぞって持ち上げた経緯は冷静な検証を欠いたフィーバーでしかなかった。

 周囲やメディアに煽られて冷静な判断を損ない破綻に至った「ランドロイド」のケースは過熱するベンチャーブームに冷水を浴びせた。斬新な技術もものづくりのこだわりも市場性や事業の成功とは直結しない。アイデアやロマンをギャンブルに終わらせないためにも、技術の実用性と汎用性、商品の市場性や競争環境、量産体制や素資材背景を冷静に検証し、生産プラットフォームと提供プラットフォーム(販売・決済・物流)の優位確立に注力すべきだ。