セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(株)のホームページより

 以前にZOZOSUITの失敗を『リープフロッグの罠』と指摘したが、ハイテク投資には罠がつきもので、今度は家事負担を軽減する185万円の全自動衣類折り畳み機という触れ込みで100億円超を集めたセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが破綻した。

100億円を集めて3年で破綻

 全自動衣類仕分け畳み機「laundroid」(ランドロイド)の発売を目指して開発していた(株)セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが開発に行き詰まって製品化の目処が立たなくなり、4月23日に東京地裁に自己破産を申請して同日、破産手続開始の決定を受けた。負債は22億5000万円で、子会社のセブン・ドリーマーズ・ランドロイド(株)も同日、負債9億3000万円で破産手続きの開始決定を受けている。譲渡先が決まるまで事業は継続するとしているが先行きは不透明で、解散になるようだ。

 セブンドリーマーズは2011年に創業してカーボン製ゴルフシャフトなどを販売していたが16年4月、「ランドロイド」の開発・販売を意図してパナソニック(10%出資)、大和ハウス工業(10%出資)と合弁でセブン・ドリーマーズ・ランドロイド(株)を設立。資本金7億5000万円、資本準備金7億5000万円でスタートしている。その後、16年11月にパナソニックと大和ハウス工業、SBIインベスティメントが運用するファンド等を引受先とする第三者割り当てを実施し、60億円を調達している。さらに17年6月には米投資ファンドKKRの創業者ら個人投資家や滋賀銀行、大和企業投資から25億円(研究開発助成金を含み全てが資本に組み入れられたわけではない)を調達しているから、計100億円余を調達したことになる。

 それだけの資本を集めても製品開発は進まず、17年発売の予定がどんどんずれ込んで売上げが成り立たず、18年3月期決算公告では売上高7億4100万円に対して売上原価と販売費及び一般管理費が30億1800万円とかさんで営業損失22億7700万円、当期純損失17億2400万円を計上。累積損失が54億3300万円に達し、株主資本は25億3500万円まですり減っていた。

 その後、今回の自己破産申請に至るまでどのような経緯があったのか知る由もないが、調達した資金を使い果たしたということなのだろう。100億円をわずか3年で使いつぶしたと非難する見方もあるが、国民の血税をINCJ(旧・産業革新機構)が4000億円も注ぎ込んだ挙句800億円で外資に売り捨てるJDI(ジャパンディスプレイ)のことを思えば、作り手のロマンが市場ニーズとすれ違った悲劇と冷静に見るべきだろう。

家庭向けの市場がなかった「ランドロイド」

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(株)のTwitterより

 ロボティクスとAIを駆使した画期的な便利製品として2030年に売上高3500億円、経常利益700億円を目論んだベンチャーが100億円の投資を使い果たして行き詰まった根本的要因は、肝心の「ランドロイド」の市場性と技術的難度を見誤ったことに尽きる。

「ランドロイド」は画像認識AIとロボティクスを組み合わせた自動衣類仕分け畳み機で、1)衣類を投入→2)ロボットアームがピックアップして広げる→3)画像認識AIがアイテムを認識→4)ロボットアームが最適サイズに畳む→5)ロボットアームが畳まれた衣類を仕分けて積む。

 蓄積されたデータをAIが学習して精度を上げていくとしていたが、正しく認識して正しく畳むようになるまで投入された衣類はどんな運命になるのか、コピー機の紙詰まりを想起すると怖くなる。

 その処理能力は実用性を疑わせるに十分で、Tシャツやポロシャツ、パンツやタオルなどプレス仕上げを要さない軽衣料に限られ(布帛シャツやスカートは端から除外)、一度に最大30枚を投入できるが1枚の処理に5〜12分もかかる。それでは人がやった方が遥かに速くて確実だし、カジュアルシャツやパジャマなどは人手に頼らざるを得ない。家事労働の軽減効果はほとんどないのが現実だった(同社公式ツィッター@laundroid_0を参照されたい)。

 洗濯物の仕上げで手間がかかるのはプレス仕上げを要するワイシャツやスラックス、コートやアウターなどクリーニング屋に出すアイテムで、それらはクリーニングした後、アイテム別の専用マシンでピシッとプレス仕上げされて帰ってくる。日用の下着や軽衣料(それもカットソーなどに限定)を家庭の全自動洗濯乾燥機から取り出して日陰干しした後、畳み仕分けするだけの機能に200万円近くを払うのもともかく、幅87cm×高さ220cm×奥行き63cm、150kgもの大型冷蔵庫並みのバカでかいマシンをリネンルーム(そもそもリネンルームがある家も限られるが)に置ける邸宅は極めて限られよう。一般家庭向けとしての市場性は端から疑わしかった。

業務用としても市場性はなかった

 畳み直し作業に翻弄されるユニクロなどアパレル小売店や縫製工場の仕上げラインならもっと高くてもかさ張っても購入したかもしれないが、それには桁違いの速度と精度が要求されたはずだ。実際、縫製工場ではシャツやカットソーなどアイテム別の畳み仕上げマシンが多数、活用されている。

 それぞれデザインや仕様の異なる商品を傷めずきれいに畳むには全自動とは行かず、1枚ごと人がセッティングする半自動だが分速数枚と「ランドロイド」より格段に速い。業務用畳み仕上げ機はフィニッシュ品質や処理速度の要求に応えるためアイテム別に設計されており、Tシャツもパンツも同じ機械で折り畳もうという「ランドロイド」は元より無理があり過ぎた。

 店頭での畳み直しには大型の装置を持ち込む訳にもいかず、アマゾンでは軽量で収納しやすい手動の折り畳み機が千円ちょっとで幾つも売られている。そんな手軽なものでもTシャツ、ポロシャツからニットやカジュアルシャツまで結構素早くきれいに畳めるから、高価でかさ張り処理速度が極端に遅くアイテムが限定される「ランドロイド」に出番はなかった。

 さすがにドレスシャツは熟練の技が必要で、工場に戻して専用畳み仕上げ機に任せることもあるが、鎌倉シャツの娘たちはびっくりするほどサクサク上手に畳む。教育のレヴェルが違うのだろう。とまれ、「ランドロイド」は縫製工場や小売店舗向けの業務用としても市場性はなかったと思われる。