『「脱24時間」拒んだら独禁法 公取委適用検討 コンビニ本部に』『人件費で店舗赤字の場合』という朝日新聞の一面に、朝から目がくぎ付けになった……。

  数年前にコンビニ経営を引退した、元コンビニ経営者です。やめた理由を一言で言うと、「コンビニ経営は時流から外れたと、20年近くコンビニを経営してきて感じていたこと」。

 酒屋からコンビニへの転換が進んでいた店舗数が今の半分ほどの時代に、勤めていた会社をやめ、周囲に「今の時代にコンビニの経営で独立なんて! 24時間営業・年中無休、人生が破滅するだけだ!  勘当だ!」と言われつつ、既に結婚して独立していたので「そこまで言うのなら、コンビニ経営は場所、立地が全てだ! 俺はこれから人生を賭けて『コンビニばくちを打つ!』とたんかを切り、コンビニ経営を始めました。

 その後、周囲の反対や数々の想定外の出来事も起こりましたが、運良く経営するコンビニは繁盛店となり、『コンビニばくち人生』で生き残りました。しかし、業界の先を見通し、事前に準備を整えてから、フランチャイズ契約の更新時に円満に経営を終了し、他の事業へ移行したのです。

競合3店が同時オープンし、売上げ40%減

 周囲からは、「なぜ、繁盛店があるのにコンビニ経営をやめるのか?」、コンビニ本部からも契約の継続と更新を強くおっしゃっていただきましたが、コンビニ経営をしてきての悩み事は①売上げ、②人手不足、③ロス、④日々、起こるトラブル……(20年近くのコンビニ経営で驚くほど、さまざまな出来事が起きました)。

 ①「売上げ」では、同じ日にコンビニの競合店3店舗がオープンし、その日から自店の売上げが40%減りました。『コンビニの店舗経営は、海辺の砂の城』。今まで積み重ねてきた売上げが瞬間的に消え去る現実に驚愕しました。

 そのときは、いずれ訪れるであろう競合店出店に備え、たばこの販売免許を取得し、告知大型看板を設置していたので、事前に用意していたたばこの売り込み案と競合店への反撃策を即時に実施し、何とか売上げは戻せましたが、それも数年間の延命策に過ぎませんでした……。理由は、新たな競合の激化!コンビニ店舗の出店でした。

  ②「人手不足」では、加速する人手不足の中、「働いているスタッフをいかに一人一人ケアしながら大切にするか」、そして「日々のスタッフの状況を見ながら、やめる兆候を感じたら、即座にスタッフ募集の告知活動を行う」対策を行っていました。

 しかし、長年活躍いただいたベテランスタッフの高齢化による引退、アルバイトの学生の卒業などが重なる中、ネットで従業員を募集できる時代になってからは年中、全時間帯で募集をかけて急なスタッフの欠員に備えていましたが、募集時の時給を上げても反応が厳しく、人手不足の深刻さを嘆く事態になりました(③と④もいろいろなことがありました)。

コンビニ経営の「泥沼」から抜け出したかった

 約20年のコンビニ経営を振り返ると、日々増していくコンビニや小売り他業態との戦乱は自店の売上げに過酷に響き、身を削られる思いでした(無論、利益も激変しました)。

 人手不足の深刻さが加速し、時代の変化か、売上げ、人手不足、トラブルと24時間気が休まらない……。そうしたときに契約更新が重なり、自店の売上げは平均日販よりも高いものの、若かりし『コンビニ博打』に人生を賭けようと決めたころを思い出し、頭に浮かんだのは、私の哲学である「博打とは引き際。いかに熱くならず、冷静に手を引き、利益を確保するか。損失を広げ過ぎずに見切るのか」。 そのタイミングを考えたときに、やめ時だと思いました。

 今、コンビニ経営を続けている方は、(失礼ながら)大半の方々が「ハイリスク、ローリターンの経営」を余儀なくされていると感じています。

 私の場合、今でも身近な経営者の皆さんからは「よいときにコンビニをやめた」と言われますが、コンビニ業界の流れが変わってきて、コンビニ経営の過酷な現状から先行きを見据え、他の事業を模索したのは、コンビニ経営に嫌気がさして、「泥沼」から抜け出したかったからでした。

 順調、円滑にコンビニ経営ができている方以外で、現在や先行きに不安を抱えている加盟店オーナーの方への私からの拙い助言は、「コンビニ本部の方針や考えをうのみにせずに、安易な多店舗展開や事業拡大をしないでください」ということです。

 手を広げ過ぎ、目が行き届かなくなると店舗運営レベルと売上げの低下を招きます。そこで収拾が付かなくなり、事業を拡大すると返済する借入金の増加など、泥沼化します(こうしたことを身近にたくさん見てきました。その行く末は、残念ながら、皆さんがご想像になった通りです)。

 繰り返しますが、現在のコンビニ経営は、残念ながら、ハイリスクです。

現地を訪ねて分かったセコマの評判が高い理由

 以前、北海道で勤務をしていたとき、身近なコンビニとして通ったセイコーマ―トの経営の基本方針は「無理をしない、無理をさせない、身の丈の経営」と見聞きしました。

 今回、当時の上司を訪ね、一緒に近隣のセイコーマートを回りました。無理に24時間営業はしない! 店舗展開は距離的なテリトリーを設ける。今後のコンビニ運営を見越して、人手不足、後継者不足の加盟店を段階的に直営店に移行していたりと、先進的なコンビニ経営を行っていました。

 そして、昔の上司から「セコマは不便なところでも、地域のためにつくるんだべ! だから、俺はセコマが好きなんだ。道産子はな……」の言葉に、セイコーマートの評判が高い理由を見いだし、うなずいたのです。

 今、コンビニ業界で、理不尽なコンビニ経営契約の実態が世間に露呈しています。政府の関与が始まり、今後、コンビニ業界・加盟店へのリスクの軽減など、良い方向へ向かうことを願っています。

 最後に、加盟店オーナーの方へ。さまざまな制約から難しいこともあるかとお察し致しますが、普通の生活、暮らしに戻ることを冷静に考えるときだと思いませんか。