B2B事業起死回生のFBZが足を引っ張る?

 落ちたとはいえ、営業利益は前期で256.5億円と収益力は高く、ZOZOARIGATOを終了しPBから撤退すれば前期とは逆に増益要因となり、今期計画では320億円を見込む。

 PB事業は前期に撤退した海外だけでなく、国内事業も事実上の撤退を決めている。今期の売上計画ではPBで17億円、MPS(サイズ展開コラボPB)で10億円と、前期の目標200億円が27.63億円に終わったことを踏まえて2000億円という壮大な構想を引っ込め、『規模の拡大を追うことなく着実に行っていく』とアナウンスしているから、PB事業による出血は止まるとみてよいだろう。

 代わってリスクとなりそうなのが、ユナイテッドアローズの離脱で壁に当たったB2B事業の起死回生を図って子会社のアラタナが19年10月から始めるFBZ(フルフィル・バイ・ZOZO)だ。

 FBZはクライアントの在庫を丸々預かって「ZOZOTOWN」のみならず「自社ECサイト」「店舗」に一元的に引き当てて欠品による機会損失を最小化せんとするものだが、店舗をお試し/受け取り/在庫引き当て/宅配出荷の拠点として顧客利便と在庫効率を高め、宅配外注費を圧縮するC&C(クリック&コレクト)を最優先の戦略課題とする有力アパレルとは真っ向から対立してしまう。ZOZOARIGATOを契機とする「ZOZO離れ」とて本質的な背景は有力アパレルのC&C戦略と見るべきで、FBZを推し進めればかえって有力アパレルとの距離は開いていく。

 FBZを必要とするのは自らC&Cに向けた顧客と在庫の一元管理・運用体制を確立できない中小あるいは出遅れたアパレル事業者であり、ユナイテッドアローズのような大手を取り込むのは難しい。店舗網やTBPP網を持たないZOZOはC&Cのご利益を提供できず、取扱高対比15%という手数料を放棄してはフルフィルコストだけがのしかかってくる。FBZ導入企業に提供する「ZOZO ID」ログイン決済も「Amazon Pay」を連想させるが、手数料率など詳しいことは未発表で、クライアント自社EC支援の囲い込みサービスなのか手数料収入と顧客決済データを狙う戦略なのか見えていない。

 明確なのはFBZを拡大すると倉庫投資も運営コストもかさむ一方で宅配外注費は抑制できず、15%という手数料の無料化対象が広がるほど収益が圧迫されていくということだ。店舗網を持つアパレル事業者なら格段に低コストな店舗物流を活用するC&Cで宅配外注費を抑制できるが、ZOZOにもAmazonにもそれはできない(『小島健輔が指摘「プライム会費値上げで露呈した宅配依存というアマゾンの弱点」』を参照されたい)。

自らの強みを知りオフバランスに徹する

『棚入れする限りロボットもITも茶番 小島健輔が指摘する物流プロセスの壮大な無駄』で指摘したように、棚入れして宅配出荷する以上、ECのフルフィル倉庫運用を効率化するのは限界があり、在庫を預かって宅配出荷を代行してはコストに見合う収益は期待できない。それはAmazonとて同様で、ロボットを駆使してもプライム会費を値上げしてもAWS(Amazon Web Services)の稼ぎで補っても限界がある。ましてやWS事業を持たないZOZOが収益を確保するのは格段に難しい。

 受注してからZOZOの倉庫に移送して宅配出荷する「出荷委託型」なら出品側の在庫効率を損なわないし、「種まき」でスルー出荷できるからフルフィルコストは格段に抑制できる。受注した宅配情報をオンラインで送って出品者が出荷する「マーケットプレイス型」なら、C&C体制を確立したアパレル事業者にも受け入れられる。

 ZOZOSUITとPBを仕掛けて以来のZOZOは投資と在庫が肥大してキャッシュフローを圧迫し、ファイナンスに依存するオンバランスに流れて財務の健全性に注意信号が灯ったが、FBZに固執せず投資を抑制してフルフィルを効率化すればオフバランスに転じ、財務の健全性も回復できるのではないか。

『在庫を人質に取る』と揶揄される「フルフィル型」商法は、ZOZOは“強み”と思い込んでいてもC&Cを進める有力アパレルにとっては“迷惑”でしかない。ZOZOはかつての“強み”が“弱み”に転じたことに気付いていないのだろうか。

 ZOZOの真の“強み”は「ZOZOTOWN」開設以来の高感度イメージと使い勝手の良さ、それが築き上げてきた顧客であり、在庫を抱えるフルフィル体制ではない。顧客にとってはECフロントに好感が持てて使い勝手が良く、速く便利に送料負担なく商品が手に入れば済むことで、バックヤードのフルフィルは問うていない。それにはお試しや受け取りの利便は必須だし、送料負担のないことが望ましい。だから宅配料金が高い欧米ではC&Cが主流となって小売りチェーンとEC事業者の攻守が逆転しつつあるのだ。宅配が安く速く確実だったわが国とてヤマト運輸の料金値上げで状況は一変した。

 そんな状況の変化を先読みしていたなら、ZOZOSUITで大損失を被らずTBPP網に投資してC&Cのご利益を享受できていたのではないか。今からでも遅くはない。オフバランスでファイナンス依存を脱し、ZOZOファン顧客が喜ぶC&C体制の確立を急いでほしい。

※TBPP:Try Buy Pickup Point=中身を確認したり試着してから購入や返品ができる受け取り拠点