日本に先駆けて「デジタルサイネージ」を導入

 タイで口火を切り、その後、日本に導入された試みもある。デジタルデバイスを使って情報を発信する電子看板「デジタルサイネージ」だ。

「セントラルワールドの店で初めて導入しましたが、非常に反応がいい。新しいルック(ブランドが毎シーズン用意する小冊子やカタログ)など、伝えていきたい商品を紹介するメディアとして利用しています。8店舗あるので、いろいろと実験ができますね。ここでデジタルの看板の効果がよくつかめたことから日本の店でも取り入れました」

 ファッションとしてのスーツを求め、最新のディスプレーを受け入れ、高い価格帯にも抵抗なく買物をするタイ人。スーツ専門店にとっては良い材料ばかりのように見えるが、もちろん課題もある。

 日本では、ある程度着用したらスーツは消耗すると考え、シーズンごとにスーツを新調する層が一定数存在する。一方、タイではそうした層は少数派だ。スーツを着て仕事をするという文化が比較的新しいからだろう。一度購入するとその次の機会はなかなか訪れない。つまり、購入頻度が低いのだ。

 スキニーに人気が偏り過ぎて、売れ筋が限定的なのも課題の1つ。異なるデザインにも興味を持ってもらい、買い替えのサイクルを促進していかなければ、マーケットは広がらない。

SNSの活用、パターンオーダー開始、EC強化も

「意識を変える働き掛けをし、より客層を広げていかなければなりません。そこで、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSの担当者を設けて、新しいデザインや着こなしを訴求しています。既に昨年の10月からはパターンオーダーの展開も始めました。利用は着実に増えています」

 ECにも力を入れている。タイではまだ小売りに占めるECの割合はさほど高くないが、今後、伸びていくことは必至。将来に向けて、タイの大手ファッションECと手を組み、クオリティとファッション性をアピールしている。ECを通して、顧客とのコミュニケーションを深めていく方針だ。

 他国への進出はどうか。シンガポールや中国の店舗は既に全店クローズしたが、他のアジアの国からは出店のオファーが寄せられている。

 だが、湖中氏はこう断言する。

「欧米よりも東南アジアの方がビジネスの可能性は高いことは確かですが、他国への進出はタイで事業基盤を固めたその後。現在のバンコク市内から他の都市への出店を先に進めていきます」

「スーツらしいスーツが好まれる国」で『スーツセレクト』が果たす役割は大きい。全国的な店舗展開を支える物流のインフラも整ってきた。タイの地方への出店はコナカの次なる成長エンジンとして力を発揮しそうだ。