各店で1日に1枚以上、タキシードが売れる

毎日、最低でも1着は売れるというタキシード。日本の『スーツセレクト』にはそうした店はない。

 オーソドックスなスーツスタイルを好み、夜のパーティ用にタキシードを買い求めるお客も多い。日本の場合、仮にパーティがあってもタキシードを着用して出掛ける男性は少数派だろう。だが、タイの男性は当然のごとくタキシードを選ぶ。フォーマルな場でフォーマルな服装で出掛けたい、出掛けるのがマナーだと考えるからだ。

タキシードに合わせるネクタイも多数品揃えしている。お客の関心は高い。

 そのため、おのずとファッションには詳しくなる。

「タキシードにはショールカラーやピークドラペルなど4つの品番がありますが、よくご存じですね。『新しいタキシードが入ったら連絡をしてほしい』とリクエストされるお客さまもいらっしゃいます。各店で1日に1枚以上売れていますが、日本にはそれだけ売れるお店は皆無です」

 オープン当初は半袖のシャツも品揃えしていたが、現在は扱っていない。タイ人は「長袖でないと格好がつかない」と考えるため、需要がないのだ。「半袖のシャツはありませんか」と来店する客もいるが、そのほとんどは日本人だ。

当初販売していた半袖のシャツはニーズがないため、売場からカットした。

 比較的涼しい季節である11月〜2月にはコートもポンポンと売れていく。

 暑い国でなぜコートが売れるのか。「旅先や出張先で着用する」「肌寒いときに利用する」「ただ単にファッションとしてほしい」などいろいろな理由が考えられるが、この時期、タイの店では日本の中堅都市の店と同程度の売上げがあるそうだ。『スーツセレクト』に来店するタイ人にとって洋服の機能性は二の次。ファッションは自らを表現する手段なのだろう。

暑い国でもコートはよく売れる。こうしたファッションで決めたいと考えるお客も多いようだ。

売上げの50%以上が「スキニータイプ」

 日本と比べて異なる点は他にもある。スキニータイプのパンツは既に日本では下火になっているが、タイで売れるのは一にも二にもスキニータイプだ。

「日本ではスキニーが売上げに占める割合は15〜20%程度ですが、タイでは50%以上。スリムやテーパードタイプを入れても、やはりスキニーに人気が集中しています。日本ではテーパードに人気がシフトしましたが、タイでは変わる気配がない。今後も売上げの3分の1程度は占めていくと見ています」

スーツは2プライスに絞ったラインアップ。売れ筋は圧倒的にスキニー(超細身)タイプだ。

 スキニー人気の高さを受けて、タイの8つの店では独自企画のスキニー商品を投入している。接客については、アプローチからお客の見送りまで全てが日本式を実施しているが、売場づくりや商品に関しては現地化が進んでいる。

 スーツ、シャツともに価格が2種類に絞られているのは先に記した通り。日本でもおなじみの販売スタイルだが、タイで売れるのは高い価格帯だ。低い価格帯の商品を買い求めるのは日本人。機能性に加えて、コストパフォーマンスの高さを追い求める日本人志向がよく分かる。