今後の消費をリードするミレニアル世代への対応

 今までアマゾンの成長を支えてきたプライム会員は現在、世界中で約100万人とみられ、その大半は米国内であるため、そろそろ会員数拡大には頭打ちという見方も出てきている。

 しかし、20代から30代前半のミレニアル世代が本格的に消費活動に参加し始めている現在、彼らは志向は都市型であっても就職難の上、多くが学生ローンを抱えての社会人スタートで、財布のひもは非常に固い。環境保護運動やヘルシーなライフスタイル志向が強く、前の世代のように、安ければどんどん買物をするという購買態度ではなく、リサイクルやレンタルを活用して、あまりモノを所有しないシェアエコノミーの申し子でもある。ホールフーズ・マーケットが買収後に価格を3度も下げたのも、このような消費トレンドへの対応と考えられる。

 競合環境を見ると、ウォルマートはジェット・ドット・コムや数々のデジタリーネイティブブランドの買収によって、まさにこのミレニアル世代を狙っており、ターゲット社は昔からおしゃれなディスカウンターなので有利なポジションにいる。

 さらに、アマゾンが長年投資し続けてきたオンライングローサリー市場に目を向けると、スーパーマーケット業界トップのクロ―ガ―はロジスティクスから店舗、消費者への配送にまでテクノロジー投資をかけ、防衛が固い。スタートアップ企業ではファームステッドなど、ファーム・トゥ・テーブルの産直型オンライングローサリーがあちこちに誕生し、若い世代の共感を得ている。

 ベゾスCEOが株主への手紙でわれわれはまだ小さい、と述べたのは単に売上規模の話だけでなく、市場では次の戦いが始まっているとの警告の意味も含まれているのではないだろうか。

アマゾンによるオンラインとオフラインの統合の始まり

 全米で銀行口座を持てない世帯は全世帯数の6.5%、約840万世帯[1]といわれている。しかし銀行口座残高や利用率が低い層、つまり現金収入の日当や質屋からの借金等に頼る世帯は18.7%もおり、合わせて25.2%、4分の1以上の世帯がオンラインショッピングやスクエアなどを活用したデジタル決済をしにくい状況にある。

 プライム会員がもしピークに近づいているのであれば、やはり裾野を広げる戦略は避けて通れない道だ。ましてアマゾンが3000店舗展開を目指すコンビニ業態や今後、実現するかもしれないスーパーマーケットでは、現金受け取りは必須だ。

 また、デジタル決済は手数料がかかったり、個人情報窃盗による犯罪の対象になりやすいので、可処分所得に余裕のある層でも使用するクレジットカードの数を絞ったり、クレジットカードの新規加入を渋る人は増えている。

 アマゾンが今後、実店舗を拡大して小売市場でさらなる成長を追い掛け、その過程で現金決済システム導入に力を入れるのであれば、それは従来のプライム会員制度を超えた新たなエコシステムの構築の始まりであり、アマゾン版オンラインとオフラインの統合が本格化するということだろう。

 

[1] FDIC (Federal Deposit Insurance Corporation) 報告書、2017年