(株)NATTY SWANKY代表取締役社長の井石裕二氏 【人物撮影】千葉太一

『ダンダダン酒場』はこだわりの結晶

餃子に特化した専門店は、ブームを呼んでいる

 3月28日に東証マザーズに上場した(株)NATTY SWANKY(本社/東京都新宿区、代表取締役社長/井石裕二)は餃子をメインとした居酒屋『肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場』(以下、ダンダダン酒場)を展開しているが、同店は今日の「餃子ブーム」の先駆けとして常に注目されている。店舗数は69店舗(直営50店、FC19店/2019年3月末)。売上高29億3900万円、経常利益1億5700万円(ともに2018年6月期)となっている。

『ダンダダン酒場』の客単価は2066円(2017年7月~2018年6月)。ターゲットはサラリーマン、子供連れ、友人同士、学生、女性同士等々、幅広いことが特徴で、年代別では20代24%、30代29%、40代21%、50代12%と、満遍なくさまざまな世代が利用している。

各店とも手作り感があり個店のイメージがある

『ダンダダン酒場』の誕生は、同社代表取締役社長の井石裕二氏と取締役副社長の田中竜也氏が出会ったことが発端となる。2人は生年月日が1日違いということだが、2001年当時、26歳の東京・府中に住むIT技術者であった井石氏が、田中氏が勤務する府中で人気のラーメン店のファンとなり、足繁く通う中で意気投合して会社を設立。井石氏は居酒屋・バルを、田中氏はラーメン店を、それぞれ2店舗展開した。

 そして2011年1月、東京・調布の飲食店が集まる一帯の中に『ダンダダン酒場』の1号店をオープンする。この店は8坪で客単価2500円、月商650万円の大繁盛店となる。そこから京王線沿線での『ダンダダン酒場』の店舗展開が始まった。

新規オープンの際には鳴り物入りで地域に告知する

 社名である「NATTY SWANKY」とは井石氏、田中氏による造語とのことだが、「粋で鯔背(いなせ)な」という意味を持つ。理念は「街に永く愛される、粋で鯔背な店づくり」~期待以上が当り前、それが我等の心意気~――としていて、「いなせ」をあえて「鯔背」と漢字で表記していることに同社の社風づくりのこだわりが感じられる。

 店舗づくりにも大きな主張とこだわりがあるが、それはまず、壁に描かれた絵画。創業の頃からアーティストの高橋美樹氏がこの作画を担当し、一つ一つ丹精を込めて描いているが、これは『ダンダダン酒場』の店のそれぞれに魂が込められている感覚だ。

髙橋美樹画伯がその店ごとに心を込めて作画する
オープンの直前に「入魂式」を行う

 オープン直前に行われる「入魂式」もそう。これは同店で共に働くアルバイトたちに壁の装飾やメッセージを仕上げてもらう作業であるが、アルバイトにとってはとても楽しく、店に愛着が湧くことから恒例行事としている。

 このような特徴を持つ『ダンダダン酒場』を展開する(株)NATTY SWANKYは、株式公開によってどのようなビジョンを描いているのか、同社代表取締役社長の井石裕二氏に伺った。

上場を目指すのではなく「上場ができる会社」

――株式公開おめでとうございます。2019年3月に向けてその対策はどのように進みましたか?

 スケジュール通りという感じです。上場しようと決めたのは2年半前、2016年の暮れのことですが、当時のわが社はとても小さな会社で、管理体制や内部統制というものがない状態でした。

 上場に向かって業績を向上させることもさることながら、本部の人員を増やして、この部分をしっかりとさせていくことはとても大変なことでした。

 この他、上場に向かう前とそれ以降との違いを述べると、『ダンダダン酒場』は私と副社長の田中(竜也)が始めたことで、以来2人で引っ張ってきたわけですが、上場に向かう中で「社長がやってはいけない」ということがたくさん出てきました。要するに、組織として動かなければいけないということです。

 これは、私ではなく周りの人たちが動いてくれるということで、逆に楽になったという言い方もできます。全部自分でやろうとする考え方から抜け出すことが重要だということです。

――NATTY SWANKYにとって、上場は何のために必要だったのでしょうか。

 

 2年半前は32店舗の規模で、年間十数店舗と出店もするようになり、小さな会社とはいえ、業績はとてもよくなっていました。これから50店舗、100店舗が見えてきたときに、会社の体制がこのままではいけないだろう、どこかの段階でがたんと崩れてしまうのではという思いがありました。上場を目指すというか、上場ができる会社にしないと、駄目になるという発想があり、上場を準備するようになりました。そのためにはまず、社内の体制を整えようということになりました。

――上場に向けて社名を変更しなかったのはなぜですか。「株式会社NATTY SWANKY」よりも「株式会社ダンダダン酒場」の方が伝わりやすいと思いますが。

 そのようなことを考えることはありましたが、社内的に「NATTY SWANKY」という名称が定着していて、これが1つの文化となっていることから、上場を理由にやめてしまうことはもったいないことだと思いました。

 もう1つは採用のことを考えました。率直に言って、「株式会社ダンダダン酒場」と「株式会社NATTY SWANKY」のどちらが学生にとって受け入れやすいかということを優先しました。『ダンダダン酒場』以外のビジネスを考えているとか、ホールディングス化を目指しているとか、そのようなことが要因となっているのではありません。「外食のベンチャー」をうたう上でNATTY SWANKYの方が伝わりやすいと考えました。