イラスト/永谷せん

 一時期、「カリスマ店員」「カリスマ美容師」といった言葉が流行ったことがありました。あれはいつ頃のことだったのか、調べてみて少し驚きました。1999(平成11)年の流行語だったんですね。いやはや月日のたつのは早いものです。

 とはいえ、ファッション界の最前線では今もカリスマ店員が活躍しています。最盛時ほどではないようですが、若い女性客にとってカリスマ店員は憧れの的ですし、彼女たちの働いているショップは不況知らずだといいます。

 当時との違いは、彼女たちがショップだけでなく、ブログやソーシャルネットワークを使って情報を発信しているところでしょうか。毎日のコーディネートが写真付きで載っているので、その着こなしを参考にしようと読者が殺到。その結果、商品がますます売れるという相乗効果も生まれているようです。

 カリスマ店員が着こなす商品が売れるのは、センスの高いコーディネート法を彼女たちが身につけているからに他なりませんが、それを選びたくなってしまう顧客の心理も見逃せません。顧客である私たちも、彼女たちがいるおかげでとても助かっているのです。

 現代人は、情報の洪水の中で生きています。自分が今、何を欲しがっているか、何を着たいのか、逆に何が必要ないのかということまで、「今、流行のものはこれ」「これが健康にいい」といった情報や、もっともらしい理屈があきれるほど氾濫していますし、これでもかというほど目に耳に届いてきます。それを選り分けるだけでも大変な労力が必要です。中には、取捨選択するのに疲れて途方に暮れている人もいるのではないでしょうか。

  それを一気に整理・単純化してくれるのがカリスマ店員なのです。何しろ彼女たちのマネさえしておけば、悩まなくて済む上に、買うだけで同じセンスの持ち主になれる(ような気がする)のですから、それは買いたくなって当然です。

  そんな風に憧れの存在と自分を重ね合わせてしまうことを、心理学では『同一視』と呼んでいます。つまり、あふれる情報を整理・単純化してあげることが売る側の務めであり、売上げを伸ばすキーポイントにもなるということです。コーヒーショップに「今日のコーヒー」というメニューがあるのも、整理・単純化の良い例です。

 それがあるおかげで、コーヒーの銘柄に疎いお客さまでも「ブラジルにしようか、キリマンジャロにしようか、それともマンデリン?」と、頭を悩ませることなくコーヒータイムを満喫できるからです。

カリスマ店員のいないお店をカリスマ化する方法も

「うちの店には、カリスマ店員はいないし……」と、お嘆きの方はこのコーヒー・ショップの例を参考にしてみてはいかがでしょう。つまり、お店に「本日(今週)のイチオシコーディネート」といったコーナーを設けて、マネキン等を使ってお客さまに着こなしの提案をするのです。

  もちろん、個性を重視するお客さまもいらっしゃるでしょう。そういうお客さまには、「ここは、こういう着こなし方もありますよ」とバリエーションを提案して差し上げることができれば申し分なしです。

 そのためには、あなた自身のセンスを磨く努力が必要なことは言うまでもありませんが。