Amazonの2018年総売上高は25兆円(2018年末1ドル110円換算)で30%の伸び、純利益は1.1兆円、純利益率は4%台の優良企業です。これはグローバルトータルの数値ですが、人口減少の進む日本法人でも売上高は2ケタの伸びを示しています。興味深いのはグローバルの売上高が30%の伸びなのに対し、純利益が300%も増加している点。そして、これはプライム会員の収入増による効果が大きいという事実です。

 通販事業でも、モノを売るには商品の調達・物流コストが発生します。昨今の原材料費と人件費が上昇する中で利益率を上げていくのは容易ではないわけで、物量に比例しない仕組みを考えない限り、いずれ限界がくるのは明らか。この問題は今、小売流通の最大の課題といえます。

なぜ、Amazonは純利益を3倍にできたのか?

 Amazonは早くから、この課題ための投資をし続けてきたわけです。

 例えば、プライム会員の送料無料サービスもその1つ。1個当たりの配送費を350円とすれば、年間12個以上注文する顧客にとってはプライム会員の特典はとても魅力的なものとなります。今回、会費の1000円の値上げが発表されましたが、それでも年間14個以上購入する顧客にすれば、350円×14個=4900円となることを踏まえると“ただも同然”の値上げといえます(アメリカでも会費は年々引き上げられ、今では日本の2倍以上に設定されています。これも顧客1人当たりの購入個数とで決められたといえるでしょう)。

 このプライム会員の仕組みのように、定期収益のビジネスモデルがうまくいくには、お客さまが「Amazonのプライム顧客を続ける」か「Amazonでもっと商品を買う」かの行動をとってもらうことが重要で、それなくして事業は成功しないわけです。そのため、まず有料会員になった顧客に対して無料配送枠を設定し、顧客利益を増やす仕掛けを積極的に実施。それが整った状態で一般顧客の送料無料を取りやめ、プライム会員へ誘導することで、純利益が3倍にも伸びたわけです。

人件費改善見込みが大きいのは店? センター?

 チェーン経営の店舗でも、モノを売るには商品の調達費と販管費が発生します。しかし、通販のように商品ごとの配送コストが把握しにくいので、販売数量が増えればコストが増えると感覚的には分かっていても、実際はどうなのか、把握できていません。

 実は、そうしたことも店舗での人時生産性(従業員1人の時間当たりの生産性)への意識が乏しくなる一因で、「人時売上げよりも売上げ」や「無駄削減より売れるチラシ」であったり、「店舗より物流センター」といった話が常に優先されてきました。

 事実、物流部門に行くと積載効率や人時生産性という数値がすぐに出てきます。問題はその数値が会社の収益にどう影響しているかですが、物流コストが優先されると、運送コストの安い時間帯に納品時間が設定されたり、積載効率を上げようとトラックが満タンになってから運行するため店着時間がバラバラであったりということが起きます。

 本来、物流納品時間はお客さまの来店時間に合わせた人時割りレイバースケジュールに基づいて設定しなければ、意味がありません。これができていないことが店舗の人時売上高が上がらない理由になるわけですが、そうすると「物流センターにもコスト予算がある」という声が聞こえてきそうです。

 では「店舗の人件費改善見込み額と、物流費の効率改善見込み額のどちらが大きいですか?」と伺うと、「うーん」と皆さん、言葉を濁します。

 語弊を恐れず申し上げれば、物流のように数値が明白な部門の基準を優先させた経営が良い結果になるとは限りません。

 1店、2店ならともかく、10店以上の店舗をもつ企業であれば、物流センターで仮に年間5百万円のコスト改善を見込めたとしても、スーパーマーケットなら1店で同等以上のコスト改善は見込めるわけで、10店でそれを実現できれば10倍もの直接利益が変わってくる計算になります。

店舗でまだまだコスト削減できる2つの理由

「店は人が足りないのに、今以上にコストは下がるのか?」という声も聞こえてきそうですが、それができる理由は2つあり、かつて日本のチェーン経営は店舗売上げの向上を第一優先とし、人時売上げを上げる視点に欠けていました。人時売上げとは1人当たりの時間売上げのことですが、この指標を使うようになると、店長は単に売上げだけを上げればいいという“売上思考”から発想が180度変わり、「この売上げには何人時が必要なのか」という視点をもつようになります。その結果、人件費要因によるコスト超過を抑えられるようになるというのが、1つ目の理由です。人件費は月に一度しか確認できませんが、人時に置き換えてコントロールすれば、日々追い掛けて進捗管理でき、店舗ごとの人件費管理レベルを高められます。

 2つ目の理由は、物流センターと店舗の総人時数の関係にあります。仮に1つのセンターに1店舗分の人時がかかっているとすれば、最低でも同額のコスト改善は店舗でも見込めるということです。センターと店舗は利益相反することが多く、センターのコスト改善を優先させたばかりに、店舗で品切れが発生したりします。そうして店舗の人時売上げが落ちれば、その店舗数の分だけ企業全体の経営数値は悪化するわけで、つまり、『木を見て森を見ず』という諺のごとく、物事の一部分や細部に気を取られて、全体を見失うことがあってはいけないわけです。このようにチェーン経営の業務改革を進めるには、全ての数値を見えるように分かりやすくし、比較していくことが欠かせません(断っておきますが、物流センターのコスト改善をしなくていいということを申し上げているのではないので、ご注意を)。