神楽坂に、ちょっと変わった新スポットができました。「BOOK&OFFICE 文悠」という、書店一体型のレンタルオフィスです。飯田橋・神楽坂・牛込神楽坂と3駅の中間に位置しており、いずれも徒歩で数分圏内となる好立地にあります。

 名前の通り、地下1階にはレンタルオフィスがあり、個室契約した借主は特典として1階の文悠書店内の本が全て読み放題(契約室内読み放題サービス)となっています。受付で部屋番号カードを掲示すると、1回5冊まで書店内の本を契約したレンタルオフィス内でゆっくり読むことができる仕組みです。

 レンタルオフィスの契約プランは2種類。「契約室内読み放題サービス」の特典付きの「個室契約プラン」は1~3名部屋タイプが24時間利用可能、「バーチャルオフィスプラン」では住所利用・法人登記・郵便転送などを対象としており、この他に期間限定で2時間からの一時利用も設けています。価格は個室契約プラン1名部屋(1.9~2.0㎡)で月額4万円~(別途、共益費月7000円)、バーチャルオフィスプランで月額8500円~(いずれも税抜き)です。

書店+オフィスという発想

 元々は、7階建ての自社ビルの場所を有効活用しようとレンタルオフィスを企画したとのこと。ゴールドキーカンパニーリミテッドが外観や内装などを総合プロデュースしています。

1階の書店から地下1階に降りていくと、「BOOK&OFFICE 文悠」へたどり着く。書店の営業時間内は店内の中階段から降りていけるので、隠れ家に行くような楽しさがある
入り口から和を基調とした造り

 文悠の橘陽司代表は「ターゲットは女性。個人事業主や起業家、フリーランスのライターや編集者など、若年層の利用を意識しています」と語りました。

「神楽坂は出版社も多く、周辺アクセスも良い環境なので利用者も見込めると思いました。街との調和を意識して、和モダンなテイストで和の趣を残しつつも新しさを持たせる内装にしています。

 また女性に使いやすい施設は、男性にとっても使いやすいはず。施錠スマートロック対応やセキュリティカメラを設置してセキュリティに力を入れており、お手洗いでは女性側の個室スペースを広く取るなど工夫しています」(橘代表)

A-2個室(1.9㎡、1名部屋)。椅子や机はシンプルだが、壁紙のデザインやドアの印字には大正モダンの雰囲気があり、おしゃれ
契約個室スペースには、施錠スマートロックがある。契約者は無料の専用アプリを使用して個室を利用する仕組み
お手洗いの個室にも変化があって面白い。左が女性用個室、右が男性用個室。写真では伝わりにくいが、女性用個室の方が奥行きがあって広くなっている

新しい価値の生み出し方

 お客さまを呼ぼうとイベントや企画を計画するとき、私たちはしばしば「既存のものではない、全く新しいもの」を考えようとします。既に世の中にある商品では顧客に与えるインパクトも弱くなり、時には二番煎じに捉えられることもあるからです。

 でも既存のものと別カテゴリーのものを組み合わせるだけでも、新しいイベントや企画は生まれるのではないでしょうか。

空気清浄器、ウォーターサーバー、自動販売機、コピー機など、共有スペースにはオフィスに必要な備品が一通りそろっている。個室内には飲食も持込可能

 ファッションやアートの世界では「オマージュ」といって、過去に人気の出た作品や作り手に敬意を持ち、現代の新しいエッセンスを加えて再度、世に放つ作品が多数生み出されています。

 もちろん、あまりにも作風や内容が似過ぎている場合には「過去の作品のまね・パクリではないか」と意見が出ることもあります。ただし、既存の作品の良さや価値を作り手がしっかりと理解し、現代に適する形にしてもう一度世の中に発表することは、1つの作品の形であると私は思います。

 イベントや企画に関しても、同じではないでしょうか。良いと思ったものを取り入れて、そこに自分たちなりの魅力を加えて世に問う。

4~5人まで利用できる応接室では打ち合わせもできる(一部プランは利用対象外)

 アルメディアの調査によれば、2017年5月1日時点で書店数は1万2526店とされています。言うまでもなく書店数は年々減少しており、特徴や強みのない書店はどんどん経営が難しくなってきています。

 大型化する、専門に特化するのも1つの案です。そして他業界・他業態とタッグを組み、従来とは違う形で営業を続けていくことも、また1つの策だと思います。

 1階にある文悠書店は19年で創業70年の老舗書店。私が見た限りでは広さや品揃えが特別というわけではなく、Googleのクチコミには「普通の本屋さん」とコメントが寄せられていました。「契約室内読み放題サービス」は個室契約プラン利用者のみが対象ですが、文悠書店の新規利用者は確実に増えるでしょう。そしてレンタルオフィスとしても、場所以外の付加価値を提供できている印象を持ちました。新しい営業形態として、どうなるのか注目しています。