(右)写真提供:共同通信社

 前世紀の“メカトロ”に最新のIT仕掛けが加わって物流の自動化が急進しているが、どれも技術先行で実用性が疑わしい“茶番”に見える。メカトロやIT仕掛けの前にアナログ段階の基本プロセスを抜本から見直すべきではないか。

ロボットピッキングは“茶番”だ

 アマゾンの巨大フルフィルセンターでは、ばかでかいルンバみたいなロボットがAI制御でポッド(規格化された可動ストック棚)に潜り込んではアソシエイト(ピッキングスタッフ)のところまでポッドを運んでくるが、そのロボットが運べるポッドの重量が567kgに増強されたという記事を見て、何と壮大なエネルギーの浪費かと絶句させられた。大概は数百グラムに過ぎない商品をピッキングするたびに半トン(ロボットの自重も加わる)もの重量を往復させるのは合理的ではないし、秒速1.7メーターというトロさでは決して効率的でもない。トロいといっても半トンもの重量では十分に危険な速度で、米国のアマゾンでは負傷事故を経てアソシエイトにロボットが検知して回避する安全ベスト「Robotic tech vest」を着用させている。

ファーストリテイリング資料より

 最新の自動化装備を誇るユニクロの有明倉庫(EC出荷専用)にしても、1点をピッキングするごとに同一商品をぎっしり詰め込んだオリコン(プラスティックコンテナ)をロボットが取り出し、ピッキングラインのスタッフの前までローラーコンベアで運んでくる。スタッフがオリコンを開けて商品を取り出し、宅配出荷用ダンボールに入れてオリコンを閉めたら、逆の手順でストックヤードへと自動で戻されていく。IT制御になったとはいえ、1990年代からある自動化倉庫の古典的な仕組みで、アマゾンの巨大ルンバと大差ないエネルギーの無駄遣いが指摘される。

 どちらもピッキングスタッフが商品を探して移動する作業をロボットがポッドやオリコンごと運んでくる自動化に置き換えただけで、ピッキングそのものは人手を要するし、ポッドやオリコンに商品を詰め込む作業にも人手を要する。いわゆる『机上の空論』というやつで、目先のピッキング作業だけ取れば効率化されスピードも多少は上がるが、入荷から出荷までの倉庫内物流プロセス全体での作業効率やエネルギー効率は相当に怪しい“茶番”と言わざるを得ない。

棚入れしたらドツボにはまる

 そんな大仕掛けの“茶番”が横行するのは「棚入れ」を大前提にしているからで、一度棚入れしてしまうと倉庫のスペースと費用が生じ在庫が滞貨するし、効率的な自動化が難しい「ピッキング」が必要になってしまう。

 ユニクロの有明倉庫はスペースの大半がストックヤードだし、アマゾンもZOZOも取扱高の拡大を見込んで物流倉庫スペースに膨大な投資を続けている。それは「棚入れ」→「保管」→「ピッキング」→「宅配出荷」という工程を前提にしているからだ。「棚入れ」しなければそんなスペースも手間もコストも掛からないし、大仕掛けの“茶番”に巨大な投資をしなくても済む。

 実際、ZARA(INDITEX)の店舗物流は一切、棚入れせずにハンガーソーターやローラーソーターで自動仕分けして出荷するだけの「スルー物流」だし、しまむらの店舗物流も棚入れせずにパッキン/バンドル単位にローラーソーターで自動仕分けして出荷する「トランスファー物流」だ。「棚入れ」しないから倉庫スペースも棚管理も「ピッキング」も必要がなく、倉庫に棚入れして在庫を積む「ダム型物流」に比べればスペースも運用人員も格段にコンパクトで在庫回転も速い。

 消費地倉庫から補給する「ダム型物流」のユニクロやH&Mはどちらも店舗在庫の1.5倍ほどを倉庫に積んでおり、その分、在庫回転は遅くなるし(INDITEXの4.20回に対して国内ユニクロは2.17回、H&Mは2.79回、いずれも直近決算期)、倉庫在庫管理と手間取るピッキング作業を強いられる。それは店頭のフェイシング管理やストック管理とて同様だ。

 ピッキングが手間取り自動化が難しいのは棚入れするゆえ「摘み取り」を強いられるからで、棚入れせずに入荷即「種まき」して出荷すれば倉庫スペースも手間取るピッキング作業も一切不要になる。「種まき」は自動化・高速化が容易で、ロボット化しても効率化・高速化が難しい「摘み取り」より桁違いに素早くさばける。ならば不合理な物流プロセスのまま自動化するのではなく、「棚入れ」「摘み取り」を回避できる物流プロセスを仕組むのが先決ではないか。