規制緩和の中で大型化が進んだスーパーマーケット(SM)の売場面積も、小商圏化や都市部への出店が進む中で小型化を模索する動きが盛んになっている。一方でそうした中、あえて広域商圏をターゲットとした大型店を出店し、マーチャンダイジングに磨きをかける動きも確かにある。今回、総合スーパー(GMS)の食品売場ではない、「SM の900 坪」へのチャレンジが始まった。

 カスミは埼玉県越谷市に4月21日、フードスクエア(FS)カスミ アルコ越谷店をオープンした。売場面積3070m2(約929坪)の大型店。最大の特徴は売場の一等地に94席のイートインを設けたこと。隣接して惣菜・即食の売場を大々的に集積した。

 イートイン対面にはカスミがフランチャイジーとなり運営するパン専門店「BOULANGERIE LE BENKEI(ブーランジェリー ル ベンケイ)」を配置。その後方には、コンセッショナリー(コンセ)の炭火焼鳥・惣菜専門店「銀座惣菜店」、中華専門店「上海飯店」、惣菜専門店「オリジン」がロの字型に囲む。オリジンの向かいにはカスミの直営惣菜を展開。50弱の新規商品を導入した。

カスミでは3年前ほどにベーカリーをコンセから直営に戻し、若手社員を配属して一からやり直したが、急速な時代の変化に対応するため、ル・ベンケイのFCに加盟。16年11月に1号店を守谷テラス(茨城県守谷市)に出店した。粉からスクラッチで作っている。
カスタードホイップコロネ180円、カルピスバターを使用したクロッシュー300円、エビカツバーカー、フィッシュバーガーなど、ボリュームのあるル・ベンケイのパン。

 

惣菜のコンセの一つのオリジン。10種類(のりチキン竜田弁当390円から回鍋肉エビフライ弁当690円)の出来たて弁当の注文カウンターの横に、セルフの量り売りおかず(100g当たり170円)を展開。
オリジンの量り売りの前にカスミのライスバイキングを設置。米飯類の他、ビーフカレーやえび玉あんかけなどのトッピングも用意。

 

 惣菜に隣接して、第2磁石に設置したワインセラーを中心に酒売場を配置。壁面にビールや酎ハイなどのレディ・トゥ・ドリンク(RTD)類をリーチインケース扉16枚で展開。クラフトビールに扉2枚を当て、こだわりも訴求する。

第2磁石に配置されたワインセラー。スパークリングワイン、アルコワインセレクション、日本ワイン、オーガニックワインに大きく分けている。

生鮮四品の新MDを集客マグネットに

 駅側の入口トップは青果。旬のキウイフルーツやパイナップル、ネーブルオレンジなどを馬蹄形の什器で展開。対面の壁面は生花やカットフルーツで華やかさを演出。売場奥には越谷市近郊野菜と不ぞろいの野菜を集積した訳あり野菜の島コーナーを設け、集客マグネットとしている。

訳あり野菜は青果売場の集客マグネット。不ぞろいの新玉ネギ、ナス、ピーマンなどを大量陳列。
アジサイやサフィニアなどの鉢植えをラウンドに配置。壁面にはバラの花束や仏花などの切り花を陳列する。

 

 鮮魚では、対面販売の窓口を設けた他、マグロの品揃えを強化。生のたねを使った鮮魚部門の握り寿司や魚惣菜を展開。初マーチャンダイジング(MD)で黄、白、赤の3色の卵焼きを導入。

鮮魚売場の寿司。にぎり寿司盛合せは、海鮮にぎり盛合せ(中とろ入り)780円(10貫)、まぐろたっぷりにぎり盛合せ1580円(10貫)など5SKU。
鮮魚部門で作る卵焼きを初導入。赤パプリカや国産米、トウモロコシを餌にした鶏が産んだ赤、白、黄の3色の玉子焼き(398円)。

 

 精肉では専門店の大久保をコンセで導入。対面販売と壁面多段ケース、平台で展開する。一方のカスミの精肉売場は壁面と平台。焼肉やしゃぶしゃぶといった料理用途別の提案を行う他、健康志向に対応して低塩、糖質ゼロ、アレルギー対応ハム、ベーコンなどをコーナー展開する。

精肉はコンセで大久保を導入。壁面の多段ケースでは、新潟県産の雪室熟成豚、徳島県産の地鶏の阿波尾鶏などを訴求。
カスミの精肉売場。銘柄豚・鶏、鶏肉コーナーなど、畜種別の他、生ハンバーグなど用途別にも分かりやすくサインボードで仕切っている。

 

 グロサリーでは、アレルギー対応商品や健康食品をゴンドラ12本で訴求。ゴンドラごとに「お子様にも安心して食べられます」「野菜不足が気になる方へ」などのボードでアピール。

上段がインストア、下段がアウトパックのサラダコーナーのNew Style Deli。“たっぷりの野菜がとれます”の文言で、サラダ感覚で食べられるベジごはんなどのアイテムも訴求。
海鮮つまみ揚げ、一口サイズの甘エビを使用したガーリックシュリンプ、ふっくら真あじの大葉フライなど、お魚DELIは9アイテム。

 

 菓子ではチョコレートやキャンディ、ラムネなどの量り売り(10g 20円)や輸入菓子コーナーも導入する。

 売上高構成比とSKU数は、野菜10%/422、果実5%/234、鮮魚10%/347、精肉8%/370(直営)、和日配4.7%/611、洋日配11%/1509、一般食品11%/3595、菓子7%/2456、日用雑貨1.6%/2492、デリカ10%/275(直営)、ベーカリー4%/52、酒4.5%/1323。コンセはデリカ6.8%、精肉5%。

ソーシャルシフト(個店対応)でドミナント内をすみ分ける

越谷駅から200m南に立地。1次商圏(1km)は1万6133世帯・3 万7030人、15歳未満13.1 %、15~64 歳68.2 %。2km圏にはヨークマート越谷赤山店、ベルク越谷西方店、イオン南越谷店、ロヂャース越谷店、ベルクス南越谷店などの競合がある。

 同社の出店は同市内に6店舗目となる。市内1号店は1981年に出店したカスミ東越谷店。今回、アルコ越谷店の出店に際してキーとなったのが越谷駅前に2012年に出店したFS越谷ツインシティ店の存在だ。

 カスミの石井俊樹社長は「同店の出店には悩んだ」というが、理由は500坪しか取れない売場面積にあった。フラッグシップのFSフォーマットの標準である600~700坪には満たない。一方で、乗降客数4万5000人の駅前立地という魅力があった。

 そこで単身個食に対応した細かい商品の提案と利便性の追求が不可欠と判断。グロサリーを圧縮、ゴンドラを高くし、高密度MDの実験を行うこととした。併せて生鮮を大きく拡大したことが奏功。足掛け5年で平日日販700万~800万円の繁盛店となった。

 また、同店はカスミが進める個店対応型ソーシャルシフト店の1号店でもある。店長は個店対応の考え方を第一に、パートタイマーの女性の知恵も生かした。その一例がデリカ壁面の100~190円の少量パックの提案だ。刺身、天ぷら、うどんなどのミニサイズを集積して品揃え。平均日販400~500パックの売上げを誇る。

 そんな同店から200mしか離れていない距離に開業したアルコ越谷店だが、もともと同地ではイトーヨーカドー越谷店が1969年から2009年まで営業していた。その後、10年12月にディスカウントストア(DS)のミスターマックスが入居し、17年1月に撤退。

 建物はALCo越谷ショッピングスクエアという商業施設となり、その核店舗としてカスミがFSフォーマットで出店した。

惣菜売場とイートインをつなぐ位置にイートイン専用レジを設けた。コーヒーやソフトクリームも販売。5点以内の商品精算も可能なスピードレジ機能も持つ。
全1万4500SKUのうち、2500が新商品。そのうちドライグロサリーの新製品が約半分だが、通常のFSフォーマットよりも多いという。

 商業施設内への出店ということもあり、カスミではアルコ越谷店について足元だけでなく、広域からの集客も見込む。そこでコミュニティ機能として94 席のイートインスペースを地域客の集いの場、憩いの場にすることを決め、売場の一等地に設けた。

 また、100店以上で構成される越谷駅前の地元商店会にも加入。将来は越谷市全体の活性化に結び付くようなイベントや企画などでも協業したい考えだ。

 イートインにはキッチン機能のあるバーカウンターも設置。料理教室の他、管理栄養士による健康相談コーナーなどのイベントも行っていく。

 また、居抜き前の店舗がDSであったため、特にグロサリーのゴンドラ下段を中心に価格面でも訴求する。高質のアイテムを入れつつ、ベーシック商品の値頃感も同時に訴求しないと今の消費者を捉えることはできないからだ。

 越谷ツインシティ店にはソーシャルシフトで培った固定客が付いており、十分にすみ分けできると同社では判断している。同店は右肩上がりで伸び続け、現在の年商は23億円。

 越谷駅前にはフードコートなどの飲食店の集積がない。そのためアルコ越谷店のイートインスペースには地域住民の期待がかかる。「コミュニティとして機能したいということが優先順位にある。人々のつながりを第一義としたため、売場の一番よい所に最も面積を取った」(石井社長)。同社は、スーパーマーケットが地域のコミュニティの中心となる時代へとかじを切った。

フードスクエアカスミ アルコ越谷店店内レイアウト

 

(関連記事:→食品売場900坪への挑戦――ヨークベニマル 落合店)

  • 店舗概要
    所在地/埼玉県越谷市越ヶ谷1-16-6
    オープン日/2017年4月21日
    営業時間/9時~21時45分
    店長名/福田充雅
    従業員数/正社員23人、パート・アルバイト75人(7.75時間換算)
    商圏人口/1次商圏(1km圏)1万6133世帯、3万7030人、2次商圏(2km圏)4万7042世帯、11万2761人
    年間売上高目標/28億円
    駐車台数/303台
    駐輪台数/438台
地図エリア

※本記事は『食品商業』2017年7月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。