ファーストリテイリングの現状と今後の展望についてお話しします。われわれは「全く新しいステージに入った」ということと、「世界中で尊敬される企業になる」、それと「LifeWearが世界を変える」といったタイトルでお話ししたいと思います。

〈動画〉ファーストリテイリングがこの半年に行ったこと
 

 これらはここ半年のことで、われわれはさまざまな世界一流のパートナーと協力して、過去に類のない取り組みを実行しております。

 ユニクロがアメリカに1号店を出したのが2006年。10年前には予想もできなかったことが、日常の仕事で起きている。私たちは既に過去とは全く違う新しいステージにいると思います。それも「From Dhaka to New York」。発展途上国から先進国まで同じ商品をグローバルで売る体制をつくった企業はほとんど例がないと思います。今年秋にはインドに1号店を出店します。地域的な広がりに加え、私たちほど世界中の多岐に渡る領域の一流プレイヤーと一緒に仕事をしている企業はほぼないといっても過言ではないと思います。

『LifeWear』『MADE FOR ALL』というわれわれの服に対する根本的な考え方は世界各地で支持され、ファーストリテイリングはグローバルで最もイノベイティブな企業の1つとして認知されつつあると思います。

 海外のユニクロ事業の営業利益は国内ユニクロ事業を大幅に上回る状況が定着しつつあります。グローバル企業としての基盤を確立し、世界中で多彩かつハイレベルなパートナーと一緒に協業し、新たな段階の成長ステージに入りました。

「世界中で尊敬される企業になる」

「世界中で尊敬される企業になる」というタイトルで、われわれがどういったことを目指してビジネスをやっているのか、このことについてお話ししたいと思います。

 私たちはこれまで「製造小売業」でナンバーワンになろうといってやってきました。しかし、世界はもはや業界とか業種、国、地域といった既存のカテゴリーが無意味な時代に入りました。企業の評価基準も変わりつつあります。売上高とか利益率とか、市場のシェアなどの指標に留まらず、企業として全体的な質の高さ、つまり世界各地で社会に何よりよい影響を与えられる企業、世界中の人々の生活をよりよい方向に変え、尊敬される企業、これらが最も重要な時代になったと思います。私たちもそういう企業になる決意をいたしました。

「企業は欠乏によって滅びるのではなく、過剰によって滅びる」

 私たちの基本的コンセプトである『LifeWear』を世界中のあらゆる人々に提供するため、根幹となるのが『有明プロジェクト』であります。『有明プロジェクト』は構想フェーズから、いよいよ実践フェーズに入り、日々、試行錯誤、悪戦苦闘を繰り返しながら前進しております。今後の中長期戦略は全て『有明プロジェクト』に従って進めていきます。

 これまでも繰り返してお話ししてきましたが、『有明プロジェクト』は世界最先端の情報システムを導入しようとか、Eコマースにさらに力を入れようとか、そういった表面的な発想ではありません。『有明プロジェクト』は私たち自身の考え方の変革であり、働き方そのものの改革。企業文化を変え、社会に提供する価値を変え、社会そのものを変えていく。それによって本当の『LifeWear』を実現するためのプロジェクトであります。

 店頭やカスタマーセンター、ECという顧客接点で得た生の情報を起点に商品計画や企画、マーケティング、生産などが完全に連動したマーチャンダイジングを実現し、お客さまに適正な商品を適正な時期、適正な場所に、適正な量と価格でお届けする。世界13万人の従業員がフラットにつながり、お客さまにとって不都合なことを全て解消し、お客さま満足を徹底的に追求する。まだまだではありますが、そのための具体的な環境が整ってきました。ただ、このプロジェクトは永遠に完成しないプロジェクトであります。お客さま満足を追求するために、全社員が参加し、お客さまの変化、世界の変化を常に敏感に感じ取り、自ら変わり続ける。

『膨張でなく、成長を』。一言で言えば好調な決算の反動、商売が好調だったが故に気持ちに緩みが生まれる可能性があります。そういった事態にならないようにするのが『有明プロジェクト』の大きな狙いであります。社員全員が具体的な数字をリアルタイムで見られるようにし、全ての施策の方向や決定プロセスを透明化、可視化し、判断の結果をすぐに検証できるようにするAIの力も最大限活用しながら実現していく。単なる膨張でなく、真の成長を目指してまいります。

 何より重要なことは、お客さまに評価されることであり、あらゆる物事を先端技術で自動化したところで、お客さまのお役に立たない限り、何の意味もないというように考えております。

『企業は欠乏によって滅びることはなく、過剰によって滅びる』。これは私が座右の銘としているものの1つであります。好調なときこそ気を引き締めていかないといけない。うまくいくときはちょっとした努力で大きな成果が出たりするものでありますし、どこまでが自分の実力なのかを勘違いしやすくなります。組織にそういった空気が流れ始めると、転落するのはあっという間です。経営環境が厳しいときは人もお金も足りないので、自然と気を引き締めて踏ん張るのでこういったことは起こりにくい。『企業は欠乏によって滅びるのではなく、過剰によって滅びる』。これは長年に渡り経営してきた中で身をもって実感してきたことであります。