旅行情報誌がプロデュースしている、一風変わった飲食店をご存じですか? 2019年3月27日、「editor’s fav『るるぶキッチン ASAKUSA エキミセ』(以下、浅草店)」が浅草にオープンしました。直営店舗としては3店舗目、東武スカイツリーライン浅草駅直結、銀座線や都営浅草線の駅からも徒歩3分以内で初めての駅近出店となります。

editor’s fav『るるぶキッチン ASAKUSA エキミセ』。壁面にるるぶをディスプレーした独特の外観

店舗から旅行需要を創出

 運営会社は、旅行情報誌「るるぶ」などの出版社・JTBパブリッシング。るるぶキッチンは、旅行情報誌「るるぶ」編集者が全国各地を旅して見つけたとっておきの素材を活用したご当地連動型飲食店です。素材や料理といった「作り手」からの発信でなく、編集者という「第三者」の客観的な目線から作られている点が面白いです。

 通常、飲食店では定期的にメニューを変えてレシピを作り直すことが手間とされていますが、「るるぶキッチン」では、このあえて手間のかかる非効率に挑戦。旅行理由の2位である「食・グルメ」の可能性にかけ、実店舗での飲食をきっかけに現地にも足を運んでもらい旅行ニーズを増やすことを目指します。

店内には白地図が掲示されており、どの土地発祥のメニューかが分かりやすい。 各都道府県に興味を促す仕掛けをしている

「るるぶ」は、2010年には「発行点数世界最多の旅行ガイドシリーズ」(Longest book series-travel guides)としてギネス世界記録TMに認定されており、現在までの発行部数は4億7千万部。認知度は抜群に高いです。

JTBパブリッシング今井敏行社長

 JTBパブリッシング・今井敏行社長は、「われわれは出版社ですが、紙の『るるぶ』だけでなく、Webメディア『るるぶ&more.』も、この「るるぶキッチン」店舗もメディアと位置付けています。各メディアを通じて旅行需要の創生や地域の活性化、インバウンド集客を狙っていきます」と語りました。

編集者お墨付きのご当地グルメ

マーケティング本部の青木洋高事業開発マネージャー

 同社マーケティング本部の青木洋高事業開発マネージャーは、「るるぶキッチンは、るるぶの3要素『見る・食べる・遊ぶ』を体験できる場所」と説明します。メニューはグランドメニューと地域特集メニューの2部構成で、後者は1カ月おきに内容を切り替えます。

「地域特集メニューでは、いわゆるB級グルメではなく、地域に根差して地元民が食べ続けてきた食事を積極的に提供していきます。来店をきっかけに、続きは現地で体験してもらいたい」(青木氏)と意気込みを語り、地域のことを知ってもらうきっかけづくりを目指します。

出版社の強みを最大限に生かす

 最も特徴的なのは、メニューブック。るるぶを作ってきた出版社だけあり、かなり読み応えのある内容で非常に作り込まれています。

【5秒動画】るるぶ風のメニューブック。本格的な作りでしっかりしている8ページ構成

 さらに店頭ではご当地の名産品やオリジナルPB商品なども販売し、一部テークアウトメニューも用意されていました。

ご当地缶詰や観光パンフレットも用意

 最近では個人のSNS投稿から人気が出る飲食店が増えています。一方で情報量が爆発的に増えたことで、「選択肢が多過ぎて探せない・選べない」という問題も生じています。店を探す際に客観的な「プロの目」を求める声も聞かれており、旅行情報誌に長年携わってきた「るるぶ」編集者がどれだけ信頼感を打ち出せるかは気になるところです。

 また、企業が顧客との接点を複数持つことは、同時に事業の多角・分散化を意味します。全体を通して共通したイメージを打ち出せるか、新しい消費チャンスや循環サイクルを生み出せるか、今後楽しみなところです。

カウンター席前のホワイトボードでは、手書きでオススメ商品をアピール

沿線・地域に関連したメニュー構成

 浅草店はオープンから約1カ月間は、東京都「台東区・墨田区」で見つけたプチ旅グルメを提供します。18席で6.1坪と小型な店舗ですが、既にオープンしている直営店と同等以上の1日平均60人の来店を目指します。

浅草店で力を入れる釜飯。松阪づくしの極上肉釜めし2780円
海鮮彩り釜めし2480円
パリカリ★そうからあげ680円。唐揚げの衣に草加せんべいをブレンドし、冷めても食感が楽しめる工夫をしている
22時まで営業なのでご当地おつまみにも力を入れる。言われてみればイカを感じる玉こん480円(山形県鶴岡市)
駿河湾産しらすと春キャベツとアスパラのサラダ480円(静岡県静岡市)
松阪豚のとろっとろ角煮980円(三重県松阪市)
ショコラティエ川路の北斎チョコレート【神奈川沖浪裏×赤富士】2個セット780円。生涯のほとんどを墨田区で過ごした葛飾北斎の作品が元となっている
店頭では『るるぶキッチン』PB商品「りんごよりリンゴな林檎ジュース」600円、プレミアム(無添加)680円の販売も行う

 浅草店は「るるぶキッチン」初のランチから夜まで通し営業を行います。浅草は平日でも外国人や観光客が多数訪れ、集客には困らない好立地です。多くの名店がひしめき合う中、どうやって店舗のある7階まで上がって来てもらえるかが注目されます。