「流通業界超入門」第1回で見た国内の企業ランキングでは、イオンと、セブン&アイ・HDの2大巨頭、そしてそれをさまざまな業種・業態の企業が追う構図だった。

 では視野を少し広げて世界を見てみると、どのような企業があり、日本の企業と比べてどれくらいの規模なのだろうか。2017年の世界の動向も合わせて紹介する。

海外流通、注目トピックス

1 アマゾン躍進続く、ホールフーズも買収

 業界内外に最も衝撃を与えたニュースと言えば、17年6月16日に発表された、アマゾンによるホールフーズ・マーケット買収を置いて他にないだろう。アマゾンにとっては過去最大となる137億ドルという買収金額もさることながら、EC企業による(直近の業績動向はともかく、その品質や店舗運営には定評のあった)リアル店舗を持つ小売業の買収は、これからのネットを含めた流通業の方向性を示唆しているようでもある。

 同年8月26日に買収を完了。その後も、北米への第2本社の開設を発表、またニューヨーク市内へのDCの開設も発表しており、世界流通の覇権に向けた動きを加速させている。

 アマゾンは、16年度の世界流通ランキングでも売上げを27%伸ばし、ウォルマート、CVSヘルスに続いてトップ3に入っている。

2 アルディ&リドル隆盛、ハードディスカウント勢が絶好調

 ドイツのシュヴァルツグループが展開するハードディスカウントのリドルは17年6月15日に米国に上陸、9店舗を同時オープンした。7月4日には、18年6月までに100店舗を実現すると発表している。

 一方、ライバルである同じくドイツのハードディスカウントのアルディは、17年6月12日に今後5年間にアメリカで900店舗を出店すると発表。16年度の世界流通ランキングでもシュヴァルツグループは7位をキープし、アルディは初のトップ10入りと好調は続いており、“米国後”は日本への進出も予測される。

3 盤石の米国小売業、Dg.SやHCも増収続く

 ドイツのハードディスカウントが興隆する一方で、世界流通ランキングでは、上位6位までを米国企業が占め、15位までに入っている企業を見ても、13位のディスカウントストアのターゲットを除くと、それぞれ増収と盤石の成長を続けている。とりわけドラッグストア(Dg.S)のCVSヘルスは昨年に続いての増収増益で、ホームセンター(HC)のホームデポ、ロウズは、それぞれ2桁の増益。Dg.Sのウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは減益ではあるが、着実に事業規模を拡大している。

4 増収のウォルマート、買収や新たなサービスを次々と発表

 15年度の世界流通ランキングではウォルマートの減収が大きなトピックスだった。16年度は増収で、また直近の動きを見ても、新たな成長に向けた手を次々と打っている。

 アマゾンによるホールフーズの買収発表直後、メンズアパレルオンラインのボノボス買収を発表。8月23日には、グーグルとタイアップし、アマゾンエコーの対抗デバイスである「グーグルホーム」とスマートフォン、タブレット経由での生鮮食品購入サービス開始を発表した。

5 アリババの飛躍、純利益はウォルマートに次ぐ規模

 中国のネット小売業、天猫(アリババ集団)の躍進が続いている。16年度の売上げは、229億6500万ドルで、前年比46.9%増という伸びで、ランキングも前年の71位から48位にジャンプアップ。日本からも、イオンや三越伊勢丹らがアリババ集団のECサイトに出店しており、17年6月1日にはカインズも出店した。なお同社が16年11月11日いわゆる独身の日に実施したセールの取引金額は、1日で1207億元(約1兆8900億円)だったと発表している。

アマゾンが世界流通の中心にある

 よく指摘されることであるが、この間の世界流通の変動は“アマゾン”を中心に巻き起こっていると言えるだろう。同社のホールフーズ買収や、それに対抗するようなウォルマートの新しい施策などもそうであるが、例えば、アメリカのリアル店舗の大量閉鎖やリアル店舗のオムニチャネル戦略の方向転換、あるいは、強いプライベートブランドを持つ(すなわち、アマゾンに出店しない限りは、アマゾンでは買えない商品を持つ)アルディやリドルが隆盛を極めていることすらも、アマゾンと無関係とは言えないだろう。日本でも進んだ小売業はいち早くそこへの対応を強化している。世界流通の激変、アマゾンが巻き起こす大きなうねりは決して対岸の火事ではない。

 

図表1 小売企業の売上高ランキング(世界)
注)売上高:売上高の過半数を小売が占める各国企業の連結決算ベースの税引後売上高を、2016年12月30日の換算率でUSドルに換算したもの。 記号)*:推定、★:非上場企業、※:フランチャイズ/ボランタリーチェーン(店名が統一されているもののみ、売上高は小売ベース)。

※本記事は『販売革新』2017年10月号に掲載された内容を再掲・一部再編集したものです。