平均給与ランキング、見るときは「ここに注意!」

 一方、平均給与ランキングのデータを読み解く際に注意しなければならない点がいくつかあるので、改めて指摘しておこう。それらをスルーしてしまうと、小売業の給与水準の実態が見えなくなってしまう。

 1つ目は、上記の平均給与ランキングはあくまでも“名目上”の数値で、必ずしも“実質的”な「給料の高さ」を現しているわけではないということ。

 平均年間給与額だけでなく、とりわけ、「従業員平均年齢」の項目に着目してほしい(従業員勤続年数は直近で経営統合があると、異常に短くなったりするようなので参考にならない)。勤続年数が長くなり、年齢が高くなれば、昇給・昇格によって給与は上がっていく。従業員の平均年齢が高ければ、平均給与も高いに決まっているのだ。

 本当は、同年代同士の平均給与を比べなければ、給料水準が高いのか、低いのかを判定できない。例えば、伸び盛りのECは従業員の平均年齢も若い。給与水準も他の業態より相対的に低いのだが、若年層同士で比べたら、おそらくトップクラスに躍り出るECが続出すると予想される。

 2つ目は、同じ企業でも、職種によって給与水準に大きな格差があるということ。

 例えば、金融や商社のように、従業員の多くがホワイトカラーの総合職(一般職などもいる)の場合、平均給与は高くなりがちだ。反対に、メーカーの場合、工場で商品生産に従事するブルーカラー(技能職などと呼ぶ)も大量に雇用しているため、平均給与は低めになるのだが、大卒・院卒の総合職に限れば、金融や商社の総合職とそれほど格差がないケースもある。

 就職活動中の大学生なら、くれぐれも平均給与ランキングだけを見て、「給料の低い会社だ」などと早合点しないことだ(なお、有価証券報告書では、正社員の給与のみが対象で、パート・アルバイトなどの給与は含まれない)。

今後は幹部候補とそれ以外で差が生まれる?

 そして、3つ目は、ホールディングカンパニー(HD)の給与は割り引いて考えるということ。上記のトップ10クラスのほとんどがHDであることに注意してほしい。確かに平均給与は高いのだが、従業員数が少なく、従業員平均年齢も高い。

 小売業グループによってHDの経営形態や人事制度はさまざまだが、要するにHDはグループの司令塔であり、少数精鋭の“エリート集団”である。その従業員は中堅以上の総合職が中心で、新人を採用するケースはまずないので、平均年齢も平均給与も高くなってしまうのだ。グループの事業会社の給与水準は、HDよりも低いと考えたほうがいいだろう。

 ただし、同じ業態で固まっているグループはともかく、イオンやセブン&アイ・HDのようにさまざまな業態が複合したグループは、各事業会社の平均給与のデータを公開してもらわない限り、業態別の給与水準は残念ながら、藪の中ということだ。

 2つ目の部分で述べたように、企業内でも職種によって給与格差があるはずだが、HD化はグループ内での給与格差を拡大すると考えられる。小売業の再編は今後も進むと予想され、HDを頂点とする小売業グループは増えていくだろう。

 HDが“幹部候補生”となる一握りの新人を直接採用し、彼らが傘下の小売業を支配するという経営統治モデルも広まるかもしれない。そうなれば、もはや業態は関係なく、HDの給与水準だけがアップし、金融や商社を上回るケースも出てくるかもしれない。