2019年3月26日、レストラン「KICHIRI」を展開する(株)きちりホールディングスが香港でのグローサラント展開に向けて現地の高級スーパーマーケット「City Super」との業務提携を発表した。

 グローサラントとはスーパーマーケットを意味するグロサリーストアとレストランを合わせた造語。『スーパーマーケットに外食機能を融合させたもので、売場で販売している食材を活用したメニューの提供、同一事業者による小売りと外食の運営』が定義とされている。 

 元々、欧米発のコンセプトで、米国のホールフーズ・マーケット、イタリアのイータリーが知られている。イータリーは2009年に日本橋三越内、17年に東京駅内での出店が話題になった。ちなみに日本出店に際し、きちりはイタリアのイータリー本社、三井物産と3社で運営会社を立ち上げるなど深く関わっている(現在は保有全株を三井物産に売却している)。

 このグローサラント、イオンや成城石井など一部のスーパーマーケットチェーンで取り組まれており、ブームとなっている。中でも、売場との一体感、本場イタリアの世界観を再現した先端事例として注目されているのが、きちりが運営する「Merca」。これは2018年4月、「ルクア」(大阪駅に隣接した大型商業施設)の「キッチン&マーケット」(阪急オアシスが開設した店舗)内にできたものだ。

グローサラントと店舗支援事業を成長ビジネスに据える

 きちりは1998年に創業。2007年に東京証券取引所JASDAQに上場(2014年に東証一部へ指定替え)、ダイニングレストラン「KICHIRI」やハンバーグ専門店「いしがまやハンバーグ」などの主要業態中心に95店舗を展開する。

 2018年6月期で営業収益92億41百万円(前期比104.5%)、営業利益3億58百万円(同112.4%)。今期も通期(2019年6月期)では営業収益98億円、営業利益4億円を見込み、増収増益を継続しそうだが、フードビジネス業界にあっては特に目を引く収益性とはいえない。

 ただし、同社の決算資料では事業モデルについて、基幹業態である「いしがまやハンバーグ」のFC展開に続き、グローサラント事業を挙げている。外食およびスーパーマーケット市場の低迷の一方で成長を続ける中食市場を捉えてのものである。

 また、他の外食企業に向けた、仕入れ・配送、調理・加工、会計・労務管理などをシェアリングすることにより店舗運営効率化の支援メニュー、さらにAI、IoTを活用した採用・教育ツールを整えており、人材不足への対応をうたっている。City Superとの提携もプラットフォームとしてのグローサラント事業の展開ともいえる。

 “大好きがいっぱい”という企業理念、「ホスピタリティ」を中心に据えた社是など外食企業ならではの“人重視”を打ち出しつつ、決算資料にはグローサラントはじめ、プラットフォーム、シェアリングなどフードビジネスやITの世界における“バズワード”(意味や定義が曖昧なビジネス流行語の意)的な言葉を盛り込んだ説明がなされ、今どきの新興企業を思わせる。

 しかし、恒常的な競争激化、人材不足に悩む外食業界にあって、単なる業態と立地の組み合わせとは違えた、グローサラントという視点を変えた店舗づくり、そして店舗を支える業務支援と人材育成を両立させる仕組みづくりの点に既存の外食企業と一線を画した独自性が見られる。