グーグル社リテールショッピング&ペイメント部門長ダニエル・アレグレ氏 [出所]ショップトーク

 かつてマーケティングを勉強したことのある人なら、消費者は購入にいたるまでに「認知→関心→欲求→記憶→行動(購買)」のプロセスを踏むというAIDMA理論を耳にしたことがあるだろう。しかしオンラインやソーシャルメディアが購入プロセスに大きく関わる現在、この理論はもう過去のものだ。

 ショップトークではグーグル社リテールショッピング&ペイメント部門長ダニエル・アレグレ氏と、ピントレスト社共同創業者でCEOのベン・シルバーマン氏が、購買行動に大きな影響力を持つショッピング検索の最前線について語った。

■グーグル:「画像・動画・音声」での検索で即座に意思決定・購入できる環境作り

 アレグレ氏は、現在の購買行動はAIDMA理論とは異なり、数多くある選択肢の中で、検索やソーシャルメディアでの情報収集などを行いながら、ジグザグと行きつ戻りつしながら購買にたどり着くと説明した。

 最近では、今すぐ消費行動を決めるための検索が増え、「今営業中」とか「私の近くの」というキーワード検索が前年より3倍も増加[1]しているそうだ。また、受け取る情報があらかじめ自分用にパーソナライズされていることが重要で、「配送先・支払情報はデバイス上に記憶させるべき」(同社調査対象の59%)、「過去の購買歴に基づいた販促を希望する」(同58%)[2]など、即座に意思決定・購入できる環境を望む傾向にある。

 また、新たなブランドをユーチューブ動画で見つける人は90%に上っている。化粧品チェーンのセフォラはさまざまなメークアップやスキンケアなどの指導ビデオを掲載して人気だが、昨年ビューティ関連ビデオへのアクセスは8100万人を超えた。

 グーグルはこうした変化に基づき、消費者の購買プロセスの入り口である検索だけでなく、全体を支援する方向に動いている。また、ユーザーの50%は画像によって購買を刺激されるため、グーグル広告では画像や動画で、消費者がブランドとつながる機会を提供している。

グーグル社プレゼン資料より、ユーチューブ動画でブランドを発見する人は90%というデータ[出所]筆者撮影

 さらに、ブランドを知った消費者の購買行動喚起のため、双方向の会話ができるグーグルアシスタントが重要な役割を果たすと同社は期待している。会話を通じて的確な情報に絞り込めるため、より具体的でリアルタイムな情報提供ができると考えられている。グーグルアシスタントは現在モバイル、ボイススピーカー、テレビなど計10億台のデバイスに搭載されている。

■ピンタレスト:画像検索から自分の夢の実現を支援

ピントレスト社共同創業者兼CEOベン・シルバーマン氏 [出所]筆者撮影

 ピンタレストは、ユーザーが例えば「私の理想のキッチン」「一番気に入っているファッション」など自由にテーマを作り、それにふさわしい写真を探して自分のページにブックマークするソーシャルメディアだ。ユーザーが自ら商品画像を集めて編集し、それをソーシャルメディア上に拡散するという点で、米国ではフェイスブック、インスタグラム、ツィッター等に並んで消費への影響力の大きいメディアとして注目されている。

 昨年に続きショップトークに登壇した同社共同創業者CEOのベン・シルバーマン氏は、「ピンタレストを使うことでユーザーはワクワクし楽しいショッピング経験ができる。ピンタレストはユーザーが持つさまざまなアイディアとそれを実際に生活の中で実現する架け橋の役割を果たしている」と述べた。

 以下はインタビューからの抜粋だ。

Q.ピンタレストは他のソーシャルメディアとどう違うのか

A.ユーザーがこういう家を作りたいと思うことと、実際にそういう家に住むことの間にはブリッジが必要で、それは買う、という行動だ。われわれはそこを手伝っている。私たちが「ピントレスト・マインドセット」と呼ぶユーザーのマインドセット(価値観)には、家具はこれ、靴はこれ、など特定の要素が含まれている。このマインドセットを知ることは企業にとって非常に重要だ。

Q.ピンタレストが消費者から学んだ重要なポイントは何か

A.マーケターは消費行動についてAIDMA理論を持ち出すが、私は、現実はそうではないと思う。例えば6歳の子供がキッチンで絵を描いているとする。最初はアイディアがあって描き始めるが、そのうち周囲で目にとまったものがインスピレーションを生んで、絵が出来上がっていく。「見る」という行為は重要な役割を果たしている。

Q.ユーザーの行動はどのように変化してきたか

A.まずはユーザーの持つ情報が「この商品のこのモデル」というようにどんどん特化してきていること。もう1つはヒトは自分はクリエイティブだと思っていなくても、道具(筆者注:ピンタレスト)を渡されるとクリエイティブになっていく、ということだ。私たちが創業した頃はまだデスクトップが主流だったが、現在は80%がモバイルで、これも変化だ。

Q.ヴィジュアル検索の未来とは

A.まず、あなたのインスピレーションが最も重要だ。それに対してより多くの選択肢があること、そして選ぶときに双方向のプロセスがあること。服を決めるときに会話があって、その結果、服が絞り込まれていくべきだと考える。最終的には信頼できる小売業者がいて、あなたのインスピレーションが形になる、というプラットフォームが大切だと思う。

 

 米国のショッピング検索では、リアルな購買行動の流れに沿いながら、要所要所を即断するための情報提供に向けて、画像検索、動画検索、音声検索が重要となっている。

 

[1] グーグル社データ、2015年7月~12月と2017年7月~12月の比較

[2] グーグル社およびIpsos社「ショッピング・トラッカー調査」18歳以上の48時間以内に購入をしたアメリカ人1万1191人、2018年1月~12月