アプリで買いたい商品の場所が分かる[出所]ウォルマート社

 1月に開催された全米小売業協会の年次総会レポートでは劇的に変化したウォルマートのデジタル戦略を報告した。ショップトークでは、より最先端のテクノロジーに挑むサムズクラブに焦点が当たった。

セルフスキャンの最先端

「サムズクラブ・ナウ」店舗 [出所]ウォルマート社

 サムズクラブは昨年11月に「サムズクラブ・ナウ」という100%レジレスのパイロット店舗をダラスにオープンした。この店舗はテクノロジーラボという位置付けで、①顧客のモバイルアプリまたは店舗従業員のスキャナーによるスキャン決済、②アプリで店内の商品位置をリアルタイムにナビゲート、③1時間以内のオンラインピックアップサービス、④AR技術を活用した商品情報、を提供している。

 この春からはコンピュータヴィジョンを活用した新機能を投入する。1つはショッピング支援機能で、例えばアボカドをスキャンすると課金されるだけでなく、過去の購入歴に基づいて関連商品を推奨し、買物を効率化できる。またスキャン時間も短縮でき、バーコードの場合、情報が出てくるまで8.14秒かかったが、コンピュータヴィジョンでは3.04秒で済む(コンピュータヴィジョンへの変更に伴い、システムの誤認識を改善するために2年かけてアルゴリズムを調整したという)。

 さらに、現在、カートに入れた商品をカートごとスキャンする技術を開発中で、詳細は語られなかったものの、これが完成すると店舗出入り口に立つグリーターがスキャンすれば顧客が自分でスキャンする必要もなくなるようだ。

サムズクラブで開花し始めるウォルマート社のテクノロジー投資

 同店舗を利用している顧客はおおむね新システムを歓迎しており、90%以上の顧客が3カ月以内にまたこの店舗で買物をしたいと回答している。

 顧客の中には、1点ずつセルフスキャンして問題なく買物を終了する人もいるが、全部まとめて最後にスキャンしようとして2度スキャンするなどのトラブルを起こす人、そもそもスキャンが下手でイライラし始める人などはいるとのこと。現在は社員が店舗出入り口でスキャナーを持って救済しているそうだ。

 しかし、結果的にはレジ列待ち時間を75%削減できたという。このシステムが消費者の間に定着すれば、レジ待ち時間が短い点がサムズクラブの強みとなるだろうと同社は見ている。

 講演を行った同社エンド・トゥ・エンド・エクスペリエンス部門長エディ・ガルシア氏は企業紹介の際、「私たちは素晴らしい小売業者でもありますが、素晴らしいテクノロジー企業でもあります」と述べていた。NRF年次総会レポートでも紹介したように、ウォルマートの小売り先端技術力は過去1年で格段に飛躍し、目に見える効果を生み出し始めている。

 アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏は創業時から自分たちはテクノロジー企業だと標ぼうしていたが、ようやくウォルマートもその域に到達したということだろう。

サムズクラブでの成果が果たしてウォルマートに生かせるのか?

 もっとも講演中の質問にもあったように、ウォルマート部門は昨年、スキャン&ゴーから撤退している。その理由についてガルシア氏は、ウォルマートはサムズクラブに比べて店舗サイズ、SKU数が膨大であるため難しい、と答えた。

 サムズクラブの売上高構成比はウォルマート全社の11%、全米の店舗数も599店(今年1月末現在)にすぎない。しかも2019年1月期末決算で全社は2.8%成長したが、サムズクラブは2.3%の売上減だった。サムズクラブで培った技術がやがてウォルマート本体に応用されて成果を上げるのか。かつては低価格とワンストップショッピングの利便性で成功した巨大店舗チェーンの革新の道のりはまだまだ長そうだ。