GINZA SIX 13階にリニューアルオープンした「旬熟成HAKKO」

 2月21日、「GINZA SIX」(東京・銀座)13階にある熟成肉のレストラン「旬熟成GINZA GRILL」が「旬熟成HAKKO」という店にリニューアルオープンした。同店を経営するのは(株)フードイズム(本社/東京・渋谷区、代表取締役/跡部美樹雄)である。

 同店は主要食材に「発酵熟成肉」「発酵熟成魚」を使用して、「身体を温かくする」「身体を活発にする」「身体を癒す」という効果をもたらす素材と発酵調味料を巧みに融合させたコース料理を組み立てている。

 同社の跡部美樹雄氏は、2013年当時にブームとなり、価値の高い食品として定着した「熟成肉」を広く知らしめた人物で、今日、熟成肉の事業家として活躍している。その跡部氏が熟成と発酵を結び付けた事業を始めたのはなぜか。跡部氏の沿革をたどりつつ、これからの展望についてリポートする。

「熟成肉」食べ歩きの過程で衝撃を受ける

 まず、跡部氏がいかにして熟成肉を事業とするようになったか。2013年のブームに至るまでを紹介しよう。

 跡部氏は1975年8月生まれ、千葉県野田市で育つ。服部栄養専門学校卒業後、立川の寿司割烹に就職、次は砂町の割烹、竹橋のうなぎ割烹、そして新橋の和食店で料理長を務める。その後、27歳で洋食のチェーン化企業に就職、さらにコンサルティング会社に転じる。2009年に独立し、餃子専門店の「立吉」で起業した。

フードイズム代表取締役の跡部美樹雄氏

「立吉」の業績は振るわず、2011年3月11日の東日本大震災に合い、「店は終わった」と思ったという。しかしながら、仕切り直しを決意して“明るく楽しい店”を心掛けたところ店の業績は上向いていった。

 このころ、「熟成肉」というワードと出合った。「これは何だろう」と東京、大阪など熟成肉を扱う店の食べ歩きをするようになった。その過程で食べたある店の熟成肉が衝撃的においしく、「身体の中に電気が走った」という。

 その瞬間、「この商売がしたい」と思い立ち、物件探しを始めた。物件探しは2011年から始めて、2012年9月六本木にこの事業の1号店となる「旬熟成」を東京・六本木にオープンした。

「旬熟成」とは跡部氏がつくった言葉である。「旬」と「熟成」の概念は相反するものだが、跡部氏は「熟成肉となる前は“鮮度のよい”旬であり、一方で“熟成した”旬が存在する」と考えた。それが「旬熟成」という言葉に落とし込まれた。「店名をどうしようかと考えているときに、この言葉が天から降りてきた」(跡部氏)という。

 この当時の様子を跡部氏はこう語る。

「料理人から外食産業に進み、コンサルタントとなり、外食のことを知っていると思っていたが、単に気合いと根性でやってきました。熟成肉についても、興味本位で動いているうちに衝撃を受けた経験から手掛けたことで、何かビジョンがあり戦略を立てていたわけではありません」

 しかしながら、周囲の環境が熟成肉のことを盛り立てるようになった。赤身ブームがあり、熟成肉にはそれに大きな付加価値をもたらす存在として注目されるようになった。

 また、和牛より安価な交雑牛や乳牛を熟成させることで価値を高められるという点からも熟成肉の新しい意義が見いだされた。

欧米で発展して日本にやってきた「熟成肉」

 熟成肉とは、一定の条件のもとで牛肉の赤身部分を寝かせて旨味を引き出した肉のこと。ただ単に寝かせるだけでは肉に有害な微生物もついてしまい、腐敗肉になってしまう。熟成肉は環境管理をした上で適切な微生物を付着させた肉のことをいう。

 熟成肉は欧米で発展した。30年ほど前にニューヨークのステーキレストラン、スーパーマーケットで扱われるようになり、広く一般市場に出回った。日本では、きめ細かいサシが入った霜降り肉とは別に健康志向の高まりとともに、熟成させた赤身肉が注目されるようになった。こうして、冒頭に述べたように2013年にブームとなった。

 熟成肉のつくり方には幾つか方法がある。

 まず「ドライエイジングビーフ」。保管庫の室温を冷蔵、湿度を70~80%にして、ファンで風を送って乾燥熟成される方法。熟成させる時間を管理することで、香り高く旨味の十分な熟成肉をつくることができる。

 次に「ウエットエイジングビーフ」。これは真空パックにした牛肉をそのまま熟成させる方法。鮮度を保ちながら熟成を進め、保存が利くという利点がある。フランスやイタリアの精肉店ではこの方法が主流となっている。

 そして「枝枯らし」。日本で古くから行われてきた方法で、枝肉に風を当てずに熟成させる。ドライエイジングでは付着しない微生物もついて、みそのような香りを出せる。

 フードイズムの熟成肉はドライエイジングビーフで、4℃の熟成庫内で数カ月を経て製造されている。