初代、次代のZOZOSUITSが大コケしてボディスーツ型の採寸システムは実用性が疑わしいという答えが出たが、他にも3Dスキャン型や画像AI型などさまざまなハイテク採寸システムが乱立している。その一方、ハイテク採寸には見切りをつけてリアルにお試ししてもらおうという返品無料サービスも広がっているが、経費倒れに終わっているケースも多い。ECのアキレス腱たるフィッティングを解決する決定打はないのだろうか。

ハイテク仕掛けは報われない

 ハイテク仕掛けで採寸の精度を追求するアプローチは、3Dスキャン型にせよ画像AI型にせよ、どれも報われることはない。なぜなら人間の体にも服にも物性や質量があって互いに作用反作用で変動するし、人によりトレンドによりフィットの好みも多様だからだ。靴も同様だが、足形や運動による荷重のかかり方で履き心地どころか健康まで左右するから、ハイテク採寸は熟練のフィッターの接客に遠く及ばない。店頭でもアシックスは3D採寸機を置いてフィッティングの精度を追求しているが、かなり前に開発された古い技術で荷重センサーAIなどを欠くから、フィッターの経験値で補足していると思われる。

 服にせよ靴にせよ、3D荷重・加速センサーによる物性マッチングAIが実用化されない限り、新し物好きのギミックを出ることはないだろう。実用化されたにしても、医療機関での心肺機能検査並みの装備と手間を要するから、フィッティング目的で普及するとは思えない。

 人の体は外見の寸法だけでなく、筋肉質だったりもち肌だったりと物性で服と触れ合ったときの反発が異なるし、服とて張り腰がある素材と柔らかく落ちる素材、伸縮性のある素材とない素材、あってもワンウェイかツーウェイか、張り腰素材のストレッチとヌメ落ち素材のストレッチでフィットは全く違う。ましてや、タイトなフィット、ゆる抜けなフィット、オーバーサイズなフィットと個々人の好みやトレンドで極めて流動的だから、いくら正確に測ってもフィットが決まるというわけにはいかない。故にハイテク仕掛けの採寸はフィッティング目的では報われることがないのだ。

 ハイテク採寸は報われないが、顧客の手持ちアイテムの物性と実寸から選択した商品の最適サイズをレコメンドするデータベースAIは実用性が期待できる。ZOZOなどハイテク採寸に頼らず、購入履歴からデータベースAIでレコメンドするシステムに注力すべきだったのではないか。加えて、購入したいアイテムごとに顧客に好みのフィットを選択させれば、サイズ推奨の精度は格段に高まる。その時々のトレンドやTPO、アイテムやデザインで顧客の求めるフィットは当然に異なるからだ。

 ビッグデータAIは往々にして全体に流され、個へのフォーカスが定まらないことがある。パーソナルデータをベースにその時々の好みを本人に聞くのが一番正確で、レコメンドAIの定石だと思う。コールセンターの音声AIはプロセスが手間取るしヒアリングの精度には限界があるが、ECのオンライン画面なら相当に複雑な嗜好も項目選択のタッチパネルでサクサク進む。『パーソナルデータは本人に聞け』がデータベースマーケティングの鉄則であり、ハイテク仕掛けで勝手に推測するのは不正確で非効率だ。

リアルお試しのネックは宅配料金と減耗

 実用性の疑わしいハイテクに頼らず、リアルなお試しで販売機会を広げようとするサービスはアマゾンやZOZO、ロコンドなどEC各社が標準サービスやオプションサービスで提供しているが、それには2つのネックがある。

 1つは往復の宅配料金負担で、買上げ金額が一定以上でないと経費倒れになってしまう。プライム会員向けに往復とも送料無料のアマゾン「プライム・ワードローブ」は対象商品を限定しているし、ZOZOは行きの送料200円に加えて返品の送料も顧客に負担させている。一部商品を除いて「返品自由」をうたうロコンドは行きは送料を負担させても返品は無料(着払い)にしているが、プラットフォーム事業を除く金額ベースの返品率が18年2月期で24.8%、18年3〜11月でも23.4%と高く、送料負担が収益を圧迫していると思われる。個別顧客に宅配する限り、行き帰りの送料負担は重く、EC事業者と顧客の押し付け合いになって普及を妨げている。

 もう1つは、返品商品の汚れや破損による減耗と回収手間だ。SPACメンバーアンケートでは年度によるが17〜20%程度が再販不能状態で帰ってくると報告されている。服の返品率は最大13%、平均4%前後だが、再販可能な状態でも検品は不可欠だし、再プレス、再パッケージが必要な商品もあるからコスト負担はばかにならない。加えて、返品回収のマテハンはイレギュラーになるから通常出荷の何倍も人手がかかる。

突破口はC&CとTBPPだ

 これらの課題を解消するのが受け取り・お試しのC&C拠点で、店舗事業者は店舗を活用したりショールーミングストアを設けてEC事業者に対するアドバンテージを広げる一方、EC事業者は専門拠点(TBPP)を布陣して対抗しようとしている。

 

 専門拠点としては、国内ではヤマトシステム開発が洋服リフォーム店と組んだケース、三井不動産が自社のECモールと商業施設をリンクした「&モールデスク」、米国ではお取り寄せお試しサロンの「ノードストロム・ローカル」が挙げられる。いずれも加工・修理サービスと組み合わせてプロによるフィッティングで精度を高め、非購入商品を手順通りに回収して再販不能率を抑制しようというものだが、採算に乗せるには外せない肝がある。

写真はNordstrom-Local (次も同様)

 第1は商品の行き来を顧客ごとの宅配物流ではなく定時一括物流に乗せること。顧客ごとに宅配物流しては自宅での試着サービスと同じ宅配料金負担が生じるが、その日のお試し商品を何人分もまとめて一括配送すれば行きも帰りも個別宅配の何分の一かで済む。本格的に多拠点展開したり店在庫活用のテザリングと組み合わせるならルート便を使うのが効率的だ。

 第2は返品商品の回収手順を規格化し、再販可能状態を確保するとともに、物流センターでのマテハン負担を軽減することだ。それには使い捨てのパッキンではなく専用の通用コンテナで行き来する必要がある。

 この2点を実現するにはDCからの出荷と回収に個別宅配と分けた専用プロセスが必要で、個別宅配のお試し・受け取り拠点という発想ではいずれ行き詰まる。宅配サービスの延長ではなく、大手小売業者とECプラットフォーマーがC&Cで顧客利便と覇権を競う戦略拠点と位置付け、出荷〜フィッティング・修理加工〜回収と顧客コミュニケーション&デジタル販売を一貫するプロセスを確立すべきだ。

※C&C(クリック&コレクト):ECのプラットフォームをベースにウェブルーミングで店舗に誘導しショールーミングでECに誘導し、ECから店舗在庫を取り置いて試したり、EC注文品を店舗で受け取ったり返品したり、EC注文に店在庫を引き当てたり店から顧客に出荷して顧客利便と在庫効率を最大化するオムニコマース体制。

※TBPP(Try Buy Pickup Point):中身を確認したり試着してから購入や返品ができる受け取り拠点で、筆者が名付けて提案している。顧客は専門スタッフによるフィッティングと修理加工の利便、EC事業者は返品商品のコンディション保全と宅配料金負担の軽減というメリットがある。