談笑している古谷監督とマネージャーの加藤さん

 現在、春の選抜高校野球大会が開催されていて、改めて高校野球シーズンが始まったことを実感する。前回は「高校野球から見る、新世代のビジネス像」と、監督と選手の指導法について書いたが、今回はマネージャーから見た高校野球とビジネスについて少し書きたいと思う。

作業と仕事の違い

 どの部活でもそうだが、マネージャーの役割は大きく、練習補助から雑務まで幅広い仕事をこなし、選手がプレイしやすい環境を作ってくれる。細かい業務が多いが、その一つ一つに意味があり、社会でいえばは土台を支える縁の下の力持ちのような存在だ。

 立場的にあまり目立つことはないが、マネージャーがしっかりしているチームは、選手が練習に集中できるので強くなる。会社でもこのような立場の人がしっかりと業務をこなすと、その部署は業務が上手に回り、生産性も上がることだろう。

 取材をした成田国際高校の野球部では、自ら考えて行動することを大切にしており、監督が選手の意見を聞いてコミュニケーションを取っていくボトムアップ式の指導法で高校野球界に新しい風を吹かせようとしていた。

 実際に選手にも取材をしたが、高校生から将来のビジョンをしっかりと持っていて、非常に驚かされた。今回、マネージャーの加藤晴絵さんに話を聞いたが、私自身の仕事について考え直すきっかけとなった。

――マネージャーになったきっかけは?

加藤さん:学校説明会の時、1人の野球部員の方が会ったこともない私に対して、自然な感じで「こんにちは!」とあいさつをしてくれました。誰も見ていないのに、何でこんな素晴らしいことができるんだろう。どんな指導を受けているだろうと思い、入部しました。

――野球部に入り、以前の自分より成長した部分は?

加藤さん:相手の立場に立って行動できるようになりました。少し前の話ですが、監督に選手の身長と体重をまとめたデータを作ってほしいと頼まれたので、言われた通りにExcelにまとめて提出しました。

 すると監督は、「提出したものでも良いんだけど、これだと作業になってしまう。仕事と作業の違いって何だと思う?」と言われて、最初は何のことだか分かりませんでした。

 しばらく固まっていると「人が見やすいものにするともっと良くなるよ」とヒントをもらい、色の変更や太字を上手に使うなど自分なりに考えて見やすい表を意識して作り直しました。

 再提出すると「すごく見やすくなった。作業は頼まれたことを何も考えずにそのままやることで、仕事は頼まれたことを自分なりに考えて創意工夫することだよ。仕事をしたね」と言われたことが、今も私の心の中に残っています。

 今はその言葉を大事にして、自分が行う仕事で相手がどうしたら喜んでもらえるかを意識するようになりました。

――最近した仕事は?

加藤さん:選手の練習効率を上げるために、マネージャーたちで守備練習用のスローイングネットと高校野球の広いストライクゾーンに合わせたホームベースを作りました。

 これを作ったことで練習効率が上がり、選手が満足してくれるとうれしいです。

 

 マネージャーたちで考えて作った、練習用のホームベース。

 

 守備練習用のスローイングネット。真ん中に穴が開いているので、下にカゴを置くだけで後片付けが簡単にできる。

――将来の夢は?

ホテルマンです。人が人に行うサービスの最高峰だと思うので、そこでお客さまに喜んでもらえるサービスをしたいと考えています。

高校野球から学ぶブランディング方法

 取材して感じたことが、監督・選手・マネージャーとチームが一丸となって、成田国際でしか体験できないような新たな伝統を作っている気がした。それが人間が真に求めることであれば、それは新たなブランドになり、自然とファンができる。

 小売業・メーカー等の会社でも同じことがいえる。今はインターネットで簡単に欲しいものが手に入る時代で、その勢いはこれからも続いていく。しかし、どれほどテクノロジーが進歩しても、最終的な判断をするのは人間である。簡便さはもちろん大切だが、その会社でしかできない付加価値を提供して、人の心を揺さぶることが新たなファンを開拓していくきっかけになることだろう。

 個人としても、何か一つ自分自身の強みを保持して、社会に提供できる人がこれからの多様化の時代に必要だ。それはどんなことでもよいと思う。

 例えば、掃除が得意です。このような一見、小さく見える付加価値であっても、今まで試行錯誤しながら頑張ってきたことは、自分自身の中で根を張って揺るがないものとなり、一つのブランドになる。

 どんな些細なことでも人に自信を持っていえる何かがあれば、社会で活躍できる場はたくさんあり、企業から求められる人材になるだろう。そして、自分自身のブランディングと、作業ではなく仕事をする。この2つが社会人にとって必要なスキルではないか。

 そんなことを高校生の加藤さんから教えられた気がした。

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2019年に前身のジャスコ設立から50周年を迎えるイオン。 これまで「絶えず革新し続ける企業集団」を標榜しイノベーションを続けてきた。 この節目の年、中核企業であるイオンリテールの革新への挑戦が加速してきている。 イオンリテールは一体どのように変わろうとしているのか。