クックピット社が供給する鶏白湯スープ(イメージ)

 日本ではインバウンドが年々増加していることから「フードダイバーシティ」(食の多様性)に対する理解が広がり、大きなビジネスチャンスとなっている。

 フードダイバーシティとは、宗教や食への主義主張、またアレルギーなどによって食の禁忌が存在していることを指している。ムスリム(イスラム教徒)の「ハラール」や、ベジタリアン、ヴィーガン、そしてグルテンフリーという存在は決してマイノリティではなくなってきている。

 ここでは、インバウンドではなく、アウトバウンドでフードダイバーシティのビジネスを進めている試みを紹介しよう。

 それは、クックピット株式会社(本社/東京都足立区、代表取締役社長/本間義広)がタイでハラールのスープ工場をつくり、アセアン地区で販路を拡大しているという事例である。

ラーメン店へのスープ供給事業を立ち上げる

 クックピット社の事業はラーメン店をはじめとした飲食店にスープを供給すること。「ラーメン店にとってオリジナリティの象徴であるスープを供給する業者が存在する」ということに違和感を抱く人もいるだろうが、これは同社代表取締役社長の本間義広氏が自らラーメン職人の修業をして、ラーメン店チェーンの経営者として経験してきたことからの「ラーメンスープで世界を救う」という志で営んでいることである。

クックピット代表取締役社長の本間義広氏

 本間氏の人生は波乱に富んでいる。

 本間氏は1957年生まれ、東京・北区出身。服部栄養専門学校を卒業後、和食の料理人として飲食業界に入る。料理人の修業を10年間行い、外資系レストラン「レッドロブスター」に転職しスーパーバイザーとして国内店舗の統括を担う。在職中に東京・西麻布にあるとんこつラーメンの老舗「赤のれん」の味に出合い、1992年12月から「時給800円」の皿洗いから再スタートした。「この味を全国に広めたい」という思いから、大手企業の協力を得て「赤のれん」を「福のれん」として多店舗展開し、12年間で18店舗展開する。その後、大企業の傘下から離れ、2006年8月にクックピット社を設立した。同社の事業となるストレートスープの委託製造のノウハウは、「福のれん」を展開していた当時につくり上げていた。

 本間氏が同社を立ち上げた目的は大きく3つある。

 まずラーメン店の苛酷な労働環境を改善すること。多くのラーメン店では自家製のスープをつくるために1日24時間のうち8時間以上も費やしている。しかも、ただ鍋に火をかけて煮込んでいれば自動的にスープが出来上がるわけではなく、アクを取り、火加減を調節しながら、焦げ付かないように定期的にかき混ぜる作業も欠かせない。そのために、鍋のそばから離れることができない。

 その結果、ラーメン店の経営者はまともな睡眠時間が取れずに、プライベートでは家族との時間が取れない状況になる。

 そこに品質が確かでクオリティの高いスープを外注できれば、ラーメン店経営者はスープの仕込みという重労働から解放されて、人件費と労働時間を削減できて、仕事もプライベートも充実させられるのではないか。

 次にこうしたスープを使用することで誰でもラーメン店で独立開業できる仕組みを作る。

 そして本間氏自身も「一料理人として、人生を賭けてスープを極めたい」と考えた。

 スープは完全無添加のストレートスープで、これらは委託製造しており、現在の工場は宮崎1カ所、鹿児島2カ所、この3カ所で月間300tの製造が可能となっている。さらに茨城に小規模の工場も1カ所ある。

 スープの種類は牛、豚、鶏、豚・鶏のミックス、魚。そしてこれらの濃度を変えたものがあり、全体で8種類を製造。これを冷凍の状態で、全国のラーメン店はじめ、さまざまな飲食店の約1500店に供給している。