圧倒的に海外からの輸入製品で占められているアパレル市場。国内生産率は2.4%と最早、存在自体が希少産業となりつつある国内アパレル製造業。そこに光を当てて話題を集めているお店がファクトリエだ。ライフスタイルアクセント株式会社が2012年に設立、運営し、Web販売をメインにフィッティングスペースを提供するスタイル。現在、本店的な位置付けの熊本の他に、名古屋、銀座に出店しており、海外も台北に2店舗。今回は、その銀座店をのぞいた。

銀座8丁目の雑居ビルの3階にある。少し見つけにくい場所にある。

 銀座といっても8丁目、新橋寄りで、しかも雑居ビルの3階。お世辞にも交通アクセスが良いとはいえない。あくまでフィッティングと来店者に向けた情報発信スペースといった印象だ。一歩足を踏み入れるとシンガー製のアンティークミシンと男女のマネキンに出迎えられる。白を基調とした壁面をベースにどこかのセレクトショップのように、取扱商品が陳列されている。お店のような感覚で商品に触れたり、フィッティングできたりとWebでは得られないことがここでは体験できる。

三重県のスマイルコットン社の撚った綿。「繊維のちぢれ」を残すことによって保温力を高め、汗を吸いやすく乾きやすくなる。同じ重さで紡いだ原綿のかさ高が比較できる。
エレガントな靴をイメージしてしまうマドラスが手掛けたスニーカー。質実剛健な作りが伝わってくるようだ。
「永久交換保証」付きのソックスはLIFE LONG by GLEN CLYDE。条件を満たし穴が空いたら新品と交換してくるそうだ。

 このファクトリエが主題とするテーマだが、「日本の工場を元気にすること」から始まって「アパレル業界の構造改革」までうたっている。これは工場の利益を確保して中間業者を介さない=適正価格を実現とのことだが、米国のエバーレーンのように、商品ごとにコスト構造がオープンになっていれば別だが、そこまでの分かりやすさはない。

 もう1つのテーマ「日本の工場を元気にしたい」の意味は何だろう。単純に精いっぱい仕事に取り組んでいる人を応援したいからか、それとも愛国心に訴えたものなのか。そのあたりにコンセプト自体に希薄さを感じてしまう。

マンスリーで取り扱っている工場の産地を紹介。この月は青森県で、縫製業の傍ら営んだリンゴ農場のリンゴジュースを紹介。一定額以上の購入で獲れたリンゴが1個もらえるキャンペーン中だった。

 日本は先の敗戦を乗り越えた戦後も繊維産業が旺盛だった過去がある。それが1985年のプラザ合意を境に、そしてバブル景気がはじけてデフレ経済のスタートともに、旺盛だった国内繊維産業が、安価な海外工場へ移ってしまって今日の状況があると思う。

来店比率は7:3くらいで男性客が多い。物作りを前面にしたウンチクに弱いのが男の特性でもある。

 これを何人の生活者が問題視しているのだろうか。食の生産地は気にするものの、服の産地を気にする人はいない。食の安全は気にしても服に対しての安全を考える人が少ないからだろう。食べ物は直接口から体内に取り込んでしまうのに、服は肌を通したところからしか感じられないからか。

 実際、服による健康被害もあまり耳にしない。せいぜい化学繊維が引き起こす皮膚アレルギーなど直接生命に関わることがないからだろう。いずれにせよ生活者が着用してみて「日本製だからこんなに心地よいのだ」というレビュー数が増えて、口コミとして広がっていくくらいになれば面白い。そうやって服の産地に対する生活者の意識が変わるところまでくれば本物だ。しかし、サイトには商品レビューの投稿項目も無くて、いくら中間業者をカットして適正価格が実現したといってもチェーンストアと比べれば、はるかに価格は高い。

 ユニクロやジーユー、無印良品でさえ商品レビューは自由に見られて購入時の検討基準の1つとして機能しているのに。工場のための適正価格を理解できた生活者だけをターゲットにして完結してしまうくらいのビジネスサイズでは、日本国内の繊維産業にパワーを加えるには物足りない。

 そして単なる日本の工場紹介サイトのままではもったいない。自己満足型から他社共感型へのスイッチを図ってみてもよいかもしれない。ファクトリエのキュレーションサイトとして「日本製」は適正価格以上にお買い得だと、生活者の洋服の産地に対する意識まで変えてしまう。そんな活動と仕組みづくりに期待したい。

最新号

商業界

商業界

ドンキとアマゾン/脱「パワハラ」「セクハラ」

●巻頭特集 ドン・キホーテ(㈱パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は1989年の1号店開店以来29期連続増収増益を続け、 2019年6月期末の売上げ規模は1兆円を超える見込みだが、2018年5月末には国内向けオンラインショップから撤退,リアル店舗専業の様相を見せている。 他方、拡大を続けるアマゾンは2018年度(1月~12月)の日本国内での売上高は1.5兆円超(国際会計基準)。 ドンキとアマゾン、まったく別の世界観を描きながら強さを発揮する両社から日本の商業経営者が読みとるべきものは何か? ●販促特集 いよいよ10月1日より「消費増税」が施行される。周知のとおり、これに付随するのが「軽減税率」だ。この適用は想像以上に広範に及んでおり、読者各位には飲食店以外で も適用される範囲を確認し、十全の準備で混乱することなく当日を迎えてもらいたい。  また、過去の経験に照らしつつ、10月から年末年始まで、増税をものともしない売場の販促計画を立て、無事に予算を達成してほしい。 そこで本特集では、①現場で徹底したい増税の準備項目チェック②ことしだから可能な駆け込み需要喚起などを含めた8月から年末年始までの販促の組み立て、この2つを盛り込んだ 2019年後半戦の「売場の行動計画」の立て方を提案する。 ●特別企画
  中小店経営者や店長が今すぐに使って成果を出せる「やってみたい!シートのススメ」 ●人材特集 セクハラだけでなく、パワハラも社会問題化している昨今、厚生労働省の2016年度の調査では、企業で働く3人に1人が「過去3年間にパワハラを受けたことがある」と回答しています。 企業へのパワハラの防止義務をうたった女性活躍推進法などの改正案要綱が、20年4月から大企業で適用され、中小企業は22年4月までに義務化されます。 既に女性活躍推進法施行3年後の見直しが昨年行われ、雇用管理上の措置義務導入に至ったことも考慮すると、今からハラスメントに対する準備・対策を打つことは、決して早過ぎません