「通販に不慣れ」「効果をすぐに」もマイナス要因に

 通信販売というチャネルへの不慣れも現状、足を引っ張っている要因の1つだ。

「スマホは非常に普及していますが、ネットでの決済にはあまり慣れていませんね。今、決済方法として導入しているのは代引とクレジットカード。クレジットカードの方は決済のURLをいったんこちらから送る形ですが、うまく処理できずに、結局、代引に切り替えるケースも目立ちます」

 ドモホルンリンクルでは、各アイテムの効果を最大限に引き出すための「お手当て法」(同社ではお手入れではなくお手当てと呼ぶ)を紹介しているが、これを面倒くさいと考えるタイ人も多い。スキンケアに関する知識や使い方など基本的な知識も不足気味だ。

「異なるアイテムを混ぜて使ってみたり、洗顔フォームを泡立てずにお顔にそのまま塗ってしまうという方、他社のブランドと組み合わせて使うことがベストという価値観の人もいらっしゃいます。順番や手入れ方法が人によって本当にまちまちなんですね。字を読むのが煩わしいという方も多く、細々したことはいいから内容を簡単に教えてと言われることもよくあります」

 字を読むのが面倒という感覚が強いため、サンプルの申し込みフォームにも記入ミスが目立つ。名前のところに、悩みを書くのだと勘違いして「シミ・シワ」と書いたり、住所を間違ったり。ミスがあれば、その分、別途のやり取りが必要になる。タイランドポスト(日本でいう郵便局)が構築している住所のマスターデータの精度がそう高くないのか、記入された住所に商品を送っても届かないというケースも頻発している。一事が万事、日本のようにことはスムーズには運ばない。

 手っ取り早く効果を得たい。そんな意識が強いのもタイ人女性の1つの特徴だ。この化粧品を使ったら肌がどうきれいになるのか、どんな効果が得られるのか。地道なお手入れを続けて肌の美しさを保つよりも、手軽に素早くきれいになりたいと、結果をインスタントに追い求める傾向が強いのだ。

「楽観的というか、日本人ほどシミ・シワには悩んでいない印象もあります。日本の女性同様、タイの方も化粧品に入っている成分にはこだわりますが、こだわる中身が違いますね。その成分がどういったプロセスで生まれ、肌にどのように作用するのかには関心が薄い。高い化粧品なんだからこれだけの成分が入っていて当然という、どちらかといえば『上代に対するこだわり』なんです」

 楽観的でブランド志向が強く、スキンケアに関する知識がいまひとつ少なく、通販にも不慣れで、お手入れ方法を学ぶよりも手っ取り早い効果をすぐに手に入れたがるタイ人女性。こうした問題にタイの再春館製薬所は直面しているわけだ。

苦戦の1年を経て見えてきた「明るい兆し」

 しかし明るい材料もある。

 1つには、8点まとめて購入する人が多いことだ。台湾と比べても多い「一括購入客」の存在は、良いと思えばすぐに行動に移す消費者が多いことを意味している。これは、「8つの商品を正しく使うことで肌を内側から美しくする」を訴求するドモホルンリンクルにとってはポテンシャルを示す事実だろう。

 昨年からスタートしたCMも好評だ。CMを放送後、サンプル請求数は一気に増えた。購入率を上げるためには、サンプル請求数をさらに上げる必要がある。ブランドの認知度を上げ、興味を喚起するこうした施策は不可欠だ。

無料お試し8点セット。サンプルに関しては上々の手応え。後はいかに購買につなげるかだ。

 商品の正しい使い方を知ってもらうために、画像で分かりやすく見せる方法も取り入れている。

「Facebookで『お手当する』シーンの動画を入れて、商品を使う順番を紹介しています。タイでは口コミの力が強いですから、ドモホルンリンクルのコンセプトや弊社の企業理念への共感度が高い女性をメインキャラクターに据え、年間を通してプロモーションをしてもらう計画も進めています。単にタイで有名な女性ということではなくて、ドモホルンリンクルの本質を理解してもらえる人を条件に何人か打診中です」

スキンケアの知識が乏しいお客も多いため、「ドモホルンリンクルエクスペリエンススペース」で丁寧に使い方をアドバイスしている。

 LINEの導入も検討中だ。Facebookページを通して1日50件ほどの問い合わせが来ているが、タイ人は短い文章でのやりとりを好む。LINEによる個別対応で顧客の固定化を図っているタイの小売店は非常に多い。タイにおいてLINEは販売チャネルとして最適なのだ。

「タイの方が慣れているコミュニケーションの手段を使った方がいいというのが結論です。LINEで直接、問い合わせにこたえていきたいですね。申し込むフォームのシンプル化にも着手します。名前や住所登録をQRコードだけでできるとか、手続きを簡素化できるサービスを考えています」

 長期戦にはなるだろうが、ドモホルンリンクルのクオリティに対する評価はポジティブだ。あとはいかにタイ人の気質や志向を踏まえた「分かりやすく敷居の低い訴求や販売方法」を実践していくかだ。「その場しのぎではなく、じっくりとお肌を健やかにしていきたい」がドモホルンリンクルのコンセプト。このコンセプトそのままに、じわじわとドモホルンリンクルの良さが市場に浸透することを期待したい。

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