写真は阪急メンズ東京 6F「クリエイターズ」

 阪急メンズ東京が3月15日、新宿伊勢丹メンズ館は翌16日と、東京を代表する百貨店のメンズ館が相次いでリニューアルした。阪急メンズ東京は11年10月の開業以来、新宿伊勢丹メンズ館は03年9月の開業以来の大規模リニューアルとなるが、なぜ今、百貨店メンズ館のリニューアルが相次ぐのだろうか。

阪急メンズ東京は『クリエイターの冒険基地』へ

 03年の開業時には『世界が舞台の、男たちへ』をテーマにジェットセッターなビジネスマンをターゲットとした阪急メンズ東京。今回のリニューアルでは『クリエイティブコンシャスな男たちの冒険基地』をテーマにIT関連などスマートクリエイティブ層、自営業など成功ライフスタイリスト層、スペシャリストなど個性クリエイティブ層にターゲットを転じた。その分、ビジネスクロージングの売場が圧縮され、ストリートブランドやヴィンテージアイテム、靴を中核とした服飾雑貨が拡充され、レコードやインテリア、アートなど男たちの趣味の世界が展開されている。

 B1「トラベラー&アクセサリー」は従来と変わらないが、1F「デザイナー&コスメティクス」は化粧品が拡充され、ブランドショップもコムデギャルソンやルブタンなどクリエイターに入れ替わった。2F「デザイナー」は大枠は変わらないものの、クチュール系からクリエイター系に幾つかブランドが入れ替わった。3F「ラグジュアリーブティック」はほとんど変わっておらず、4F「オーセンティック」は旧5F「モダントラディショナルスタイル」から追いやられたクロージングブランドが詰め込まれて旧態臭がきつい。

1F「デザイナー&コスメ」のコスメの売場

 全くの新設となったのが5F「シューズ」でクリエイター系やストリート系もそろうが、堅苦しいオーセンティック系やクロージング系も少なからず並ぶのは違和感がある。6F「クリエイターズ」は「エーエイプ バイア ベイシングエイプ」などストリート系もちらほら導入されているがバラエティが限られ、大半は他フロアから移動したクリエイター系やコンテンポラリー系が占めてインパクトは限られる。

5F「シューズ」

 最も新鮮だったのが7F「ヴィンテージ&リバイバル」で、駅ビルまがいのキャラクターカジュアルが一掃されてヴィンテージカジュアルブランドやクロージング古着、LPレコードやミッドセンチュリー家具、レアものトイやアートギャラリーなど趣味的世界が広がる。百貨店メンズ館という枠からは逸脱しているが、『男たちの冒険基地』というコンセプトを最も体現している。

 5Fと7Fは全くの新設でリニューアルの目玉となっているが他フロアは大きくは変わらず、従来のビジネス客も捨てず新たなクリエイティブコンシャス客も取り込みたいという二正面作戦が奏功するかは予断を許さない。リニューアルによる売上げの積み増しは大きくないと思われる。

伊勢丹メンズは既定路線の『継承と進化』

 伊勢丹メンズのリニューアルは既定路線を一段と進化させるもので阪急メンズのような路線転換はなく、顧客向けの案内でも『継承と進化』とうたっている。これまでの「ラグジュアリー」「クリエイティブ」を深耕するとともに「パーソナライズ」「リアル」を加え、デジタル時代の消費スタイルにアップデートするものだ。

 B1では靴下が肌着側に移ってビジネスバッグが拡充され、ラゲッジコーナーでリモワとグローブトロッターのカスタマイズができるようになったぐらいで(靴のオーダーは18年9月から先行)、変化は限られる。1Fではコスメを移動・拡充してシンク付きのトライアルスペース加え、本館と同じようなラグジュアリーブランドのレザーグッズ編集平場を設け、シャツ売場にビスポーク専門店(ミナミシャツ)を導入。2F「メンズクリエーターズ」ではストリートブランドも導入し、一部ブランドを入れ替えている。3F「メンズデザイナーズ」にはセリーヌを導入、一部ブランドを入れ替えたにとどまる。

 大きく変わったのが4F「メンズラグジュアリー」で、エスカレーターサイドにクリスチャン・ルブタンやジミー・チュウなどモードシューズブランドをそろえ、オーセンティックなクロージングブランドやファクトリーブランドを5Fに移動するなどしてコンセプトを明確にしている。

 5F「メンズテーラードクロージング」では4Fと6Fからクロージングブランドやファクトリーブランドを移動して集約、ビジネス系でまとめている。6F「メンズコンテンポラリー」でもビジネスブランドを5Fに、トラッドブランドを7Fに移動して圧縮、クリエイターやコンテンポラリーカジュアルを拡充している。7Fではスーパーメンズは変わらないがゴルフ関連を圧縮し、トラッドブランドを移動してまとめている。8Fでは1Fからフォーナインズを移動してアイウエアをまとめている。

 近年の変化に対応してブランドを移動しフロア編成を明確化しただけで大きく変えたという印象はなく、ブランドの入れ替えも10%ほどにとどまる。プロモーションスペースを1.5倍に広げて30カ所で展開、陳列面積を8%圧縮して25カ所のコミュニケーションスペースを設置、2FにはDJブースも設けるなど、実店舗ならではのリアル・コミュニケーションを強化したインパクトの方が大きい。変化でなく『継承と進化』を選んだのは、メンズ専門館として関東圏のみならず世界でも突出した圧倒的一番店という実績の重さがあるのだろう。変化のリスクは「10%」に抑えて着実な積み増しを狙ったという印象だ。

2FにはDJブースを設けた