Amazon、コストコ、TDL(東京ディズニーランド)といえば、国内では高収益企業ですが、その共通点は何でしょうか?

 Amazonはプライム会員。コストコはメンバーシップカード。TDLは年間パスポート会員。こうした有料会員制度があるということです。

 国内小売りチェーンでいえば、こうした制度を持つ企業はコストコ以外ほとんど存在しません。

 小売業界は「何でも年会費無料」という考えが定着してしまっているといえばそれまでですが、それは小売業界という狭い世界で考えれば……ということになります。同じチェーンでも、スポーツジムなどは有料会員を集めて立派にビジネスとして成り立たせています。

 そこでは商品を販売するのでもなく、食べるモノを売っているわけでもありません。「健康維持」「体を鍛えたい」「基礎体力づくり」といった指導が受けられ、同じ意識の仲間と共有できる時間を商品化して販売しているのです。

 今のお客さまは、ある日の2時間は「ジムで汗を流す日」、また別の日は「TDLで1日楽しむ日」、今度の週末は「コストコに行く日」と自分がしたいことの時間をライフスタイルに組み込んでいます。健康維持や気分高揚、節約といったことが顧客の心の中で高い位置付けになっているのです。

無関心なために儲け損ねている!

「ウチは物販だし、小売業に有料会員化は向いていないのでは」という声が聞こえてきそうですが、批判を恐れず申し上げれば、ほとんどの小売りチェーンでは、こうしたことに無関心で儲け損ねているということです。

 SNSやスマートフォンの普及とともに、今日の消費行動は(自動車、衣料品のように)『所有から利用へ』と全く変わってきています。“月額いくら”という会員ビジネスの登場で、かつては買うしかなかったものが買わなくても利用できるようになり、購買全体の仕方も大きく変わってきています。

 その代表格がAmazonプライム会員。年会費を払うことで送料無料や即日配達のサービスを受けられるのはご存じの通りですが、DVDやCDを借りにいかなくても映画・音楽配信を優待価格ですぐに観たり、聞いたりもできます(無料で映画、楽曲が楽しめる別のサービスもある)。衣料品の試着サービス(『プライム・ワードロープ』)もやっていますし、不要になった商品を買い取るサービスも再開(運営は別会社)とさらに“品揃え”が広がっています。

 こうしたことは、BtoBビジネスにも大きな変化を与えており、購入時の大きな出費を平準化支払いにでき、資金繰りが大きく改善されるメリットがあります。

自社の強みで「顧客の利益実現」をする

 Amazonがプライム会員向けの“品揃え”を拡充させるのは、顧客となる企業がどうしたら成功できるかを分かって支援しているためといえます。それはベンチャー企業からスタートしたジェフ・ベゾスが、ビジネスの成功には常に金がかかることを自ら体験しているからでしょう。

 Amazon発展の陰にはこうした“人の心の内なる希望を満たす高次元のサービス”があることがプライム会員化を促進させているといえます。

 ひと言でいうならば「顧客利益の実現」ですが、その基盤となる1億アイテムの品揃えによって、Amazonが自分の土俵で商売を完結できてしまう仕組みをつくったということでもあります。

 これは見方を変えれば、小売りチェーンでも、自社の強みを「顧客の利益実現」としてサービスメニューづくりをすれば、有料会員制度を導入できるということです。

口コミで良い顧客がさらに増えていく

「小売りチェーンで有料会員を集める意味があるのか?」という声が聞こえてきそうですが、有料会員を保有するメリットは幾つもあります。中でも大事なことは、気付いていない自社の強みを発見できる点です。

 そもそも有料会員になっていただける人は、貴社に高い関心のある顧客です。そして、お金を払ってきちんと「ここをこうしてほしい」と願望を伝えてくれる、顔の見える最も大事なお客さまになります。 

「そんなことしたら クレーマーが増えるのでは?」という声が聞こえてきそうですが、有料会員は買物金額以外にもお金を払ってくれる人で、年間購入額も非常に高い人です。そうした方は企業にとって合理的なことや、本当に店に役に立つことを教えてくれます。クレームをつけるといった、ムダな時間を過ごすことしません。

 つまり、貴社に来てほしいお客さまをファンにするために有料会員制度は必要であり、そこから自社の強みを磨き、ビジネス化させていくことができるわけです。

 そして、そのサービスが素晴らしいものであればあるほど、優良顧客はお友達に話をするわけで、いわば「ロイヤル顧客を作ることで、口コミで良い顧客がさらに増える」というのが最大のメリットといえます。

 無料会員アプリや一部のクレジットカードのように、誰でも入れる名ばかり会員からはクレームはあっても、今後、成長に必要な“企業の強みのヒントとなる意見”を聞けません。これからの時代、有料会員化を柱にしたロイヤル顧客づくりは、必要不可欠と言っても過言ではありません。

スーパーマーケットはこうして衰退した

 スーパーマーケット(SM)や総合スーパーでこうしたことが進まなかった背景には、扱い品目を決める上でメーカー側の力が強く、問屋側の品揃え提案で店のモジュールを作って棚に並べていたことがあります(そうすれば売上げが確保できた時代が長く続いていました)。一見、安定して見えたこのやり方が品揃えで何の特徴のない小売りチェーンの店を増やし、それが衰退を招いたといえます。

 気付けば、その品揃え手法はコンビニやドラッグストアにまで波及し、コンビニは24時間営業期間を強みとし、ドラッグストアは医薬品を強みに、SMなどが取りこぼしてきた顧客を自社に取り込んでいったといえます。

 女性の就業率が高くなる中、必要なときにいつでも買えるコンビニ。子供が熱を出したときに必要な医薬品が買えるドラッグストアは、その利潤を一般食品の価格訴求に投資することで、SMなどの牙城を崩しているわけです。

 一方、SMなどでは夕方の生鮮食品の値引きは当たり前で、夜は売り減らしスカスカ状態のまま閉店を迎えるといった昔ながらのスタイル。自社で医薬品の新規取り組みや、品切れ防止、営業時間の拡大に動く企業は皆無といえます。

 販促手法も、高度成長期を支えた団塊世代を対象とした、新聞折り込みチラシがメインのまま。10年以上続く新聞購読率の低下を考慮すれば、まるで見当違いのやり方をやり続けているといえます。

 各社のやり方なので、それをどうこういうつもりはありませんが、高度成長期のお客さまは既に高齢化し、お一人ではお買物に来られなくなっています。この現実を直視せず、旧態依然の販促策を続けることが、本来取り組むべき新しい戦略の足かせになって動きを遅くしているといえます。