世界で問題になっているプラスチックごみ

 近年、プラスチックごみの環境破壊が世界的に問題となっている。プラスチックによる海洋汚染は地球規模で広がっており、北極や南極でもプラスチックごみが観測されたと報告があるくらいだ。プラスチックごみの投棄により、海岸での漂着、生態系を含めた海洋環境や観光・漁業への影響が問題視されている。

 三菱総合研究所作成のデータによると、1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを超え、63億トンがごみとして廃棄された。回収されたプラスチックごみの79%が埋立・海洋等に投棄されており、リサイクルされているプラスチックは9%と少ない割合。世界各国ではプラスチックを規制する動きを見せており、日本でも使い捨てのプラスチックの使用を25%削減する目標とした「プラスチック資源循環戦略」を進めている。実際にグローバル企業では、店舗でのビニール袋を紙袋へ置き換え。飲食店ではストローを紙製や堆肥化可能なプラスチック製のストローを導入するなど、環境に配慮した動きを見せている。

 しかし、プラスチックは食品貯蔵寿命の延長や重量軽減による輸送燃料の削減などの大きな利点があり、コストも低いので今後も生産量は増えていくと予想されている。このような状況の中、プラスチックをメイン商材として扱っているメーカーは、環境に配慮した製品の普及が急がれる。今回、プラスチック食品容器大手の中央化学の取り組みに迫る。

プラスチックと共存するには

 中央化学は1957年に創業したプラスチック食品容器メーカーで、スーパーマーケット(SM)、コンビニ、専門店の弁当容器等、多岐にわたってさまざまな製品を製造・販売している。もちろん、環境問題にも取り組んでおり、大きな課題となっている廃棄物の削減については、使用済みのプラスチック容器の店頭回収・地域循環型リサイクルの推進などを通じて、廃棄物の削減を企業全体として行っている。

 廃棄物の削減だけではなく、プラスチック食品容器のリサイクルにも力を入れている。使用済みプラスチックを溶かすなどして、もう一度プラスチック製品にして利用する「マテリアルリサイクル」でエコ・ベンチの設置。回収した食品トレーを熱分解後、再生プラスチック原料にし、最終的に食品トレーに戻す「ケミカルリサイクル」といったリサイクルシステムの構築にも挑戦している。

 また、最新の技術により製造された、環境に配慮したリサイクル素材の「C-APG」シリーズを2016年に発売。回収されたPETボトルを使用しているので、国が推奨する「プラスチック資源循環戦略」にもマッチしている。そして、厚生労働省のガイドラインとPETトレイ協議会の自主規制基準に適合しているので安全性も問題なく、全ての食品に使用できる。

 

 

 同社は、この素材を使用して環境に配慮した新たな製品の開発に力を入れており、2月にはミールキット容器を発売。ミールキットは栄養バランスが良く、料理の時短ができることから市場規模は年々拡大。現在、女性の社会進出による共働き世帯の増加や単身世帯の増加といった時代背景と合致している。

 SM、総合スーパー、コンビニ各社では今後の成長市場に向けて商品を多くそろえ、認知度を上げるためにミールキットへの取り組みを強化していく予定の企業が多いが、肝心のミールキット専用容器は市場にあまり出回っていなかった。既存のプラスチック容器をミールキット容器として、無理やり詰め込んで展開している企業もあったので、昨年より専用容器の開発を行い、今年に発売したのだという。

 容器はシンプルで中身がよく見える形状で、大・中・小の3サイズを展開。深さと透明感を生かしてさまざまなメニューに対応でき、3サイズとも広い蓋天面で具材がよく見えることから、レシピ表もきれいに映える作りとなっている。

 そして、見た目だけでなく機能面も考えられており、同社の他のトレーと組み合わせることで精肉、鮮魚、青果とセットアップできる。消費者目線で見ても、「レシピ表」が目立つ形状なので、買物時に目に入りやすい。実際に手に取ってもつまみ形状になっているので簡単に開けやすく、閉めたときも分かりやすいので、小さなストレスもなくなる。

展示会風景

 製品発表会を行ったところ、環境面の配慮や使いやすさを評価されて早くもSM数社からの採用が決定した。このことからも簡便さの訴求だけではなく、環境問題にも配慮した製品を社会が求めていることがうかがいしれる。

 先に記したようにプラスチックの生産量は今後も増えていくと予想されていることから、われわれの生活に必要なものといっても過言ではないわけだが、消費者としても軽くて使いやすく、企業から見てもコストの削減や生産性向上につながり、プラスチックが産業的に優れた製品であることに違いはない。  

 しかし、このままの状況でプラスチックの使用を続けることは、環境破壊に直結してしまう恐れもあり、企業がプラスチックとうまく共存していくためには、使いやすさ以外に環境への付加価値の提供をすることが大切になるのはいうまでもない。

 近年、消費者の環境意識も年々高まっている。身近な例を出すと、エコバックを持って買物している風景も珍しくなくなった。社会全体が世の中のためになる製品を好んでいる傾向にあるが、同社のミールキット容器ように、簡便性と環境の2軸に配慮することで企業・消費者から好まれて、新しい時代のスタンダードになっていくように思う。

 2030年にはこのような製品が当たり前になり、さらに社会全体の意識も向上することで国が目指す「プラスチック資源循環戦略」が実現し、経済性・機能性・生産性を兼ね備えたプラスチック容器が持続可能な循環型社会を形成することを願うばかりだ。

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