売れ筋は完全オーダーメイド2.5万円

 そうした意味では、商店街の一画にある東京・吉祥寺の「ピロースタンドイプノス吉祥寺中道通り店」は、実際に試して枕を作り、買える小売店として先見の明がある。10年前、関東では初めての東京・西川の枕専門店としてオープンした。

 

「10年前オープンした当時は『まくらステーション・イプノス』という名称で、枕のセミ・オーダーのお店でした。シートで枕の高さを調節する簡単なものだったんです。もちろん、枕で一番大切なのはその人に合った高さですが、決してそれだけではありません。徐々に『作る』ことにこだわるようになり、オープンから3年目に完全オーダーメイドの枕を始めました。すると、圧倒的にその方がニーズがある。お客さまは『自分に合ったマイ枕が欲しい』という志向になってきました」

 そう話してくれたのは、マネージャーの矢野由香さん。こちらの店舗でも日本橋西川と同様に、お客さまへのヒアリングから始まり、首のラインを測定し、枕に入れる素材を選び、実際にベッドに横になって枕の高さを調節しながら作っていける。もちろん1時間弱で完成して当日持ち帰れる。さらにこちらは、9800~3万5000円までオーダーできる枕に幅があるのも特徴だ。

 

「売れ筋というと、完全オーダーメイドの2万5000円の枕が最も人気です。さらにホワイトグースダウンなど天然素材を使ったプライム・シリーズという、3万5000円の枕をオーダーされるお客さまも増えています。9800円のレギュラータイプを選ばれるお客さまもいらっしゃいますが、皆さん『しっかり作りたい』という方が圧倒的です。その主たる違いは多層構造を持つか持たないかで、実際に寝てみると違いを感じることができます」

“睡眠負債”はなんと働き盛りが中心!

 主な客層を聞くと、「30代ですね。20代後半~40代前半ぐらい、男女問わず働き盛りの方が多いのが特徴です」というから、少し驚いた。吉祥寺という若者の街にあるお店ということもあるだろうが、オーダー枕を作る“睡眠負債”を抱える層が働き盛りを中心に存在するとしたら、経済的損益は相当なものだ。

 

「カウンセリングをしていて感じるのは、平均して5~6時間ぐらいしか寝てない睡眠不足の方が多い。“睡眠負債”を抱え、『疲れが取れない』『首、肩の凝りがひどい』『枕が合わないんじゃないか?』『でも自分に合う枕が分からない』とおっしゃってお店にいらっしゃいます。10年前にオープンした頃より年齢層は若くなり、睡眠への悩みは深まってます。最近はうちだけでなく、オーダー枕の専門店も増えていますね」

睡眠市場は1兆円を超える

 オーダー枕を扱う店舗/会社は確かに増えていて、新宿や青山などあちこちで見つけることができた。最近では大人だけでなく、キッズ用もあるし、オーダー抱き枕もある。さらに昼寝用の小型なものや体を覆うような大きな枕と、種類も形も多様化している。もちろん、睡眠には枕だけでなくマットレスや掛け布団、毛布など寝具全体の見直しも必要になるし、そもそも生活そのものを変えること、多少の運動も必要だろうが、その入り口としての「まずは枕から」の需要は今後もさらに高まっていくだろう。「寝具新聞社」の調べによると、3年前の睡眠市場規模は1兆2359億円。今年はそれも増えていきそうだ。

「肩楽寝」を買いました!

 ちなみにいろいろ話を伺い、枕を次々に試し、結果私が今回買ったのは「医師がすすめる健康枕 肩楽寝」という枕だ。オーダー枕を作るならしっかりしたものが欲しい、でもそれは手が届かない、ならば既製品ながら自分でパイプを出し入れして高低差を加減できるこの枕にしようと決めた。何より頭を乗せた瞬間に「ラクだ」と思えたのが良かった。これで安眠!とは即ならないが、目覚めたときの首の痛みがなくなったのはありがたいと感じている。