“睡眠負債”は寝具業界ではよく知られていた

「オーダー枕」が日本で大きく展開されるようになったのは1996年、「ロフテー枕工房」が新宿の百貨店に出店したのが最初だ。当時20代だった私には枕をオーダーするなんてぜいたく!と思えたが、今では20代から枕をオーダーする時代になった。「枕はお母さんの手作り」が当たり前だった私の子供時代からすると、枕を取り巻く環境は大きく変わっている。

「睡眠負債、という言葉が一昨年ごろから日本でも言われるようになりましたが、アメリカの大学では10年ほど前から研究されていて、実は寝具業界ではよく知られていました。睡眠の健康への影響が知られ、睡眠への関心は高まり、自分に合った枕を求める人も増えていることを感じます」と大渕さん。

測定は立ったまま5秒!

 では、実際に「オーダー枕」を作るのは、どういう手順なのだろう?

「最初に眠りの状態、肩こりや腰の痛みなどヒアリングをします。また枕に使う素材を6種類から触っていただいて、お好みの感触も確認します。その後は首のラインを測定します」(大渕さん)

 

 この測定、試させてもらったが、立ったまま、5秒で終わる。後頭部、頸椎、背中の形に合わせて計る器具があり、一瞬で、すぐ分かるのがいい。

「それから実際に横になって、寝心地、かたさを選んでいただきます。さらに寝比べて調整を加えますが、上層部と下層部の合計14カ所に分かれた『部屋』に素材を詰めます。その場でお客さまと会話しながら、40分ぐらいで作ることができて、持ち帰り、その日からすぐ使うことができますし、何度でもお持ちいただければ調整もいたします」(大渕さん)

 

 なんと!その場で作れて持ち帰れるとは! オーダー枕は確実に進歩している。しかし、こちらのオーダー枕は2万7000円。「もうちょっとお手頃なものはありますか?」と小声で尋ねると、「既製品も全部で80種類ぐらい、お手頃な価格からあります」と笠原さんが言うので、既製品の枕コーナーへと行ってみた。

 

「ああ、ラクだ」と思わず声が出た

 いろいろある中で、1万円以下の枕を幾つか試してみた。

「枕を試すには後頭部と首、肩の下の隙間を枕で埋め、両手で枕の端をつかんで肩に枕を寄せるようにして頭を真ん中に載せてください。どうですか?」

 笠原さんに枕をあてがえてもらい、横になると、家とは違う寝心地の良さ。「ああ、ラクだ」と思わず声が出る。「こちらはどうでしょうか?」とまた違う枕を試させてもらうと、今度は感触がソフトで優しく、かつてない心地よさ。

「柔らかさは人間が心地いいと感じやすく、枕の感触も大切にしていただきたいですね。寝るときはリラックス度を上げられると深い眠りがとれます」(笠原さん)

 さらにもう1つ、最初に試した枕と同タイプの少し大きいのも試してみると、大きいだけで寝心地がまただいぶ違う。

「これは横幅が少し広めの枕です。枕は頭を乗せるものですから、横に広いと安心感が自然と出ますし、寝返りもうまくうてるんです。だいたい70センチぐらい横幅があると理想的です」(笠原さん)

 

感じた「実際に試す」販売の必要性

 こうして実際に枕を試すと、自分がどういう枕を必要としているか?が初めて分かった。近所の商店街の寝具店でも枕を見たが、1500~7900円までの枕が豊富にそろいながらもビニール袋や箱に入ったままで、寝て試してみることはもちろん、生地を触ることもかなわなかった。最近、他の商店街で寝具店が相次いで閉店していくのを見て寂しさを感じていたが、睡眠や寝具への関心が高まる中、「実際に試す」販売を模索していく必要性を感じた。