米国大手チェーンの18年度(19年1月期)決算が出そろい始めたが、ウォルマートの本格的復活に“デス・バイ・アマゾン”の荒波を乗り越えるチェーンストアの反攻を見た。

“デス・バイ・アマゾン”の荒波を押し返すウォルマート

 ウォルマートの19年1月期決算は売上高が2.8%、営業利益が7.4%伸びたが、純利益は32.4%減の増収減益となった。米国ウォルマートのEC売上げが40%も伸び、既存店売上げも後半伸びて3.6%増加し営業利益を押し上げたが、ブラジル子会社の株式売却損や資本提携先のJDドットコムの株価下落による含み損計上、EC事業への投資負担で減益となった。

 米国ウォルマートのEC売上げは第1四半期の33%増から第2四半期が40%増、第3四半期、第4四半期が43%増と加速して年間でも40%増となり、米国アマゾンの推計商品取扱高2044億ドル(当社推計)には遠く及ばないものの、アップルを抜いてeBayに続く全米EC売上げ第3位を占めたとeマーケッター社は推計している。

 18年1月期のEC売上げは115億ドルだったから今期は161億ドルに伸び、EC比率は4.85%になった。店受け取りや店出荷に加えて800店以上で食料品の配達サービスを行うなど店舗をC&C(クリック&コレクト)拠点として顧客利便を訴求する一方、店舗の業務負担を軽減すべく700店以上にピックアップタワー(無人受け取りロボット)を配置し、2100カ所以上の食料品受け取り拠点を配備している。

 米国既存店売上げはC&C効果の押し上げもあって18四半期に渡ってプラスを続けており、19年1月期はECの伸びを差し引いても2.7%近く伸びているから、店舗売上げの減少をECの伸びで補っているわけではない。C&C戦略が正しく奏功していると評価すべきだろう。ウォルマートのEC売上げ伸び率40%は米国アマゾンの商品取扱高伸び率27.9%を上回っており、積み増し額こそアマゾンの10分の1にすぎないが、“デス・バイ・アマゾン”の荒波を乗り切って押し返し始めていることは間違いない。

 EC事業は先行投資もあって赤字を脱していないが、161億ドルという流通規模の運営コストは20%を大きく下回っているはずで、先行投資で肥大していたウォルマート総体の経費率も今期は20.8%と前期の21.5%をピークに下降に転じている。ウォルマートのC&C戦略は先行投資段階を脱して離陸したと見てよいだろう。

 

C&Cで反攻に転ずるチェーンストア

 急成長するECに圧迫されショールーミングにおびえる中でオムニチャネルが言われだした14年ごろは試行錯誤と先行投資の経費増に苦しむチェーンが少なくなかったが、ECプラットフォームを確立して店舗との連携が進むにつれ、EC専業者に対するチェーンストアのアドバンテージが見えてきた。

 EC専業者のアキレス腱は現物確認の困難と宅配物流費負担であり、店舗と同等のお試しを訴求すれば返品と宅配物流費に収益を圧迫される。EC専業者に対するチェーンストアのアドバンテージは店舗を拠点としたC&C利便に尽きるが、それが武器になるにはECプラットフォームをベースとしたW&S(ウェブルーミング&ショールーミング)が前提となる。

 自社ECサイトの商品情報/店舗在庫情報やSNSから店舗へ誘導し、店舗の商品タグ(QRコードが速い)から自社ECサイトへ誘導して購買利便を図るのがW&Sで、店舗物流とEC物流を組み合わせてEC商品の店受け取りやお試し、EC注文の店在庫引き当てや店から宅配出荷、店から配達で顧客利便と在庫効率、コスト効率を最大化するのがC&Cだ。一括配送の店舗物流は個別注文に対応する宅配物流より桁違いに低コストで、多頻度ルート便を使ったテザリングや集中修理加工と組み合わせば顧客利便も効率も一段と高まる(宅配物流にはデイサイクルという限界がある)。そんな仕掛けは店舗網を持たないEC専業者には不可能だ。

 ECサイトの運用が外部任せだったり、在庫と顧客の一元運用ができていなかったり、EC物流と店舗物流の連携運用ができていないとC&Cは実現できないし、店舗のオペレーションや人員運用をC&Cに対応して再編しないと運用負荷で混乱を来す。仕組みができても繁忙期の運用など経験を積み上げないとスムースには回らないから一朝一夕には難しい。

 仕組みを確立し運用経験を積んでオムニコマース・プラットフォーマーに変貌すれば、EC専業者はもはや怖くない。怖いのは同じようにC&Cを確立したライバルのチェーンストアやチェーンストアを買収してオムニコマース・プラットフォーマーに変貌したEC事業者なのだ。

IT装備でニューリテール化するチェーンストア

 オムニコマース・プラットフォーマーに変貌すればC&Cで顧客利便に応え在庫効率も改善できるが、多数の店舗を抱える以上、人件費と不動産費の負担は免れないし、少子高齢化が加速する中、人手不足も深刻になっていく。それはEC専業者に対するディス・アドバンテージともなる。その壁を越えるのが省人時・省在庫を実現するIT装備のニューリテールだ。

 Amazon Goなど“無人店舗”が注目され、さまざまなIT仕掛けのニューリテールが台頭しているが、実態は“無人決済”あるいは“無人精算”であってマテハンは残るから“無人運営”ではない。初期の「ID認証決済×バーコード/ICタグ精算」方式から、画像認識AIの加速度的進化でバーコードやICタグによる精算を要せず、ビッグデータ収集より処理速度を選ぶならID認証も要さないICカード決済方式など、実用普及段階へ急速にお手軽な仕組みが確立されつつある。“無人運営”も、顧客が陳列からピッキングしない巨大自動販売機型キオスク店舗ならすぐにでも現実になる。

 決済と精算は無人化できても、在庫を積んだ在来型のままではマテハン人時も不動産費も圧縮できない。テザリングで補給する省在庫店舗やサンプルだけのショールーミングストア、受け取り・お試し専門拠点も組み合わせて店舗網を再編し、C&Cを前提としたエリア・マーケティングを確立すればマテハン人時も不動産費も格段に圧縮できる(筆者の近著『店は生き残れるか』に詳説)。

 前世紀に確立されたチェーンストアは時代の変化に取り残され、高コスト化してECに駆逐されるかと思われたが、C&CとITで武装してオムニコマース・プラットフォーマーへ変貌すればEC専業者に対するアドバンテージを確立して新たな成長も可能になる。ウォルマートの変貌と反攻、IT進化によるニューリテールの現実化はデジタルエイジに生き残るチェーンストアの姿を鮮明に予感させる。