5.逸脱してしまった経営管理から正道に戻る

▼仕入れ販売がMBOからの逸脱の原因に

 上級の管理者が行う経営管理とは、ドラッカーが提唱したMBO(成果目標による管理:Management By Object)です。PDCA(Plan-Do-Check-Action)としても同じです。マネジメント(経営)とは、経営管理に数値達成の責任を負うことです。

 一般に、MBOは会計的な観点から「翌年度売上金額」が目標とされています。商品担当は、担当商品の売上金額または荒利益額を達成目標として仕事をすることになります。

 しかし、売上げは顧客が棚の商品を自分で買った結果であり、顧客の購買はその店舗の商品価値を評価した結果です。結果を、商品担当が仕事の目標にしても、あまり意味がないでしょう。というのは、売上目標を達成するよう多く売るには特売や割引となるから。特売と割引の多発の結果は、店舗の営業利益の赤字です。

 売上目標は、営業利益(荒利益額-一般管理販売費)を高めるためのものだったのに、その目標を達成するための販売促進で赤字になっては元も子もなくなります。これが多くのSMの実際です。

 売上目標で仕事をするバイヤーをゴルフに例えると、ショット数(=プレーの結果)を目標にすることと同じです。スコア80打を目標にすれば、80打が達成できるものではないことは誰にも分かるでしょう。打数は結果です。原因になる打ち方の動作と着地点が目標でなければならないからです。ところがスコアが目標のため、リスクの高い冒険(特売+割引)をして自滅しているのです。

 特売と割引が営業利益に有効なのは、商圏の総需要が増える時代でした。それは実は1980年代に終わっていて、そこから30年もたっています。2010年からの商圏の総需要が増えない時代、地方では減る時代には商品価値の高い商品の開発投入でなければなりません。この面のマーケティング認識にも小売業界は遅れがあります。もっとも、地域人口が減り、総需要が減少する経験は、近代の150年、世界のどの国にもなかったので、致し方のないことかもしれませんが……。

 実際のマネジメントでは、今も商品担当の目標として、担当商品の売上高や荒利益額が示されています。これは目標よる管理、つまり経営からの逸脱です。商品担当をバイヤーとし、仕入れ販売を仕事としたため、本来の目標による管理(MBO)からの逸脱が起こったのです。

▼目標は比較優位の価値がある新商品の開発数

 今後、生鮮部門の商品担当の仕事達成目標は、比較優位の価値を持つ商品の開発数でなければなりません。幾つ、他店より価値の高い商品を開発するか、これが、会社が商品担当に示す目標でなければなりません。

 例えば、セブン-イレブンやローソンでは本部の商品担当(職能名はマーチャンダイザー)の仕事の目標は、惣菜や弁当、おにぎりなどの品質評価で合格する新商品の開発数です。

 開発数が目標になると、仕事に筋が通ります。実際は売上げを目標にしても、何をしていいか分からないのが実態でしょう。商品構成決定の後は新品目を入れるか、エンド陳列、多フェース、価格いじり、チラシ販促、特売だけしかないでしょう。これが商品担当の売上目標達成のための仕事になっています。商品開発に仕事を転じないと、閉店に至るまでこれが続きます。

▼バイヤーからマーチャンダイザーへ

 SMでは、生鮮部門の商品担当をバイヤーからマーチャンダイザーとし、比較優位のある商品の開発を目標にしなければなりません。これが商圏の総需要が減る傾向の中で、既存店の売上げ前年比の低下を上昇に転じさせる唯一の方法です。仕事の目標は商品開発でなければならないのです。

 生鮮の新商品開発の必要性は大手、中小の会社規模にかかわりません。レストランも同じです。いつも同じメニューでは、商圏の総需要が減る中では地域売場面積の増加になる新規出店はあるので、年間2%の割合で売上げが減っていきます。店舗数は相当に減っていますが、減る店舗よりも新しくできる店舗は大型化しているため、総売場面積は増え続けているのです。加えて、食品以外ではネット販売・宅配が年率15%で増えます。

 マグドナルドでも、中国での製造状態のひどさ発覚(2018年)からの苦境(売上減少)を脱出させたのは、販売促進や値下げではなく新商品の開発・投入でした。商品が変わらないと、同じ傾向が続くからです。

 加工、カット、調理をしない青果は仕入れ販売のように見えますが、実際は「品目、鮮度と味、販売単位、包装、価格」が商品化のための開発項目になります。肉、魚、惣菜、弁当でも同じです。

 ローソンに行くと「おにぎりの新商品(悪魔のおにぎり:1週140万個という驚異的な販売数)」が出ていました。これは本部の商品担当で新商品開発が目標になっているからでしょう。新商品開発の月間数が最も多いのが、セブン-イレブン。大量の新商品が、セブン-イレブンの他のコンビニより、単位面積当たりで30~50%は多い売上げを支えています。