今回はスーパーマーケット(SM)の生鮮部門での開発マーチャンダイジング(MD)の必要性と方法を示します。MDとは商品開発活動のこと。わが国の小売業は、100年前から商品開発をしていた米欧のチェーンとは違い、発達していた卸売業の流通網からの「仕入れ販売」を行っていたため、開発MDの取り組みは遅れているのです。

1.小売りチェーンの開発MDの歴史

 開発MDが始まったのは、1980年代末の中国と東南アジアでの企画生産によるSPA(専門店製造直売)からです。

 先行した代表はユニクロ、ニトリであり、両社は約20年の成長により、衣料と家具・インテリアの業界で他を引き離す世界水準のトップ企業になっています。中国製造業の一般工の賃金が1カ月500ドル(シンセン)から800ドル(北京)に上がったので、最近はベトナム(同200ドル)やカンボジア(同170ドル)での製造が増えています(2017年アジア賃金調査:JETRO)。

 年商が4545億円(18年3月期)の大創産業は輸入雑貨の販売をしていますが、重点は開発より、コンテナ単位での仕入れ販売でしょう。

 国内での商品開発が始まったのは1980年代のコンビニチェーンからでした。食品・飲料メーカーの仕入れ単位(ロット)を分解した個品仕入れを開始し、惣菜・弁当では専用工場(プロセスセンター)での開発を行いました。300坪以上の大型店の店舗数(約1万8000店)と売上げが最も大きなSMチェーン(総年商18兆円)では、食品の商品開発はコンビニに大きく遅れ、2000年代からです。

2.開発MDに遅れたSMチェーンの課題

 

 SMで商品開発が遅れた理由は以下です。

・飲料とグロサリー(メーカーの加工食品)および大豆加工品等の日配は、仕入れ販売型でした。

・店舗売上げの50~60%を占める生鮮食品のうち、農家や市場から仕入れる青果を除き、(1)肉、(2)魚、(3)惣菜・弁当では、多くが店内テナントの専門業者への委託販売方式をとってきました。

 家業店が激減し、地元の有力な魚屋や肉屋はSMに販売のマージンを払うテナントになったのです。肉・惣菜・弁当は需要が増えていますが、魚は減る傾向です。

【コンセッショナリー・チェーン】

 コンセッショナリー・チェーン(CC:妥協型チェーン)と言いますが、上記の3つの商品部門では多くがCCだったのです。委託販売のため、SMチェーンの本部では「生鮮部門の商品開発」という概念が希薄になっていました。SMも生鮮ではデパ地下のように業者委託が多かったのです。職人風の店主へのお任せの生鮮だったのです。

 SMの商品担当は仕入れ販売をするバイヤーであり、新商品の開発に専念するマーチャンダイザーではなかったのです。SMの店舗売上げの50%以上を占める生鮮は「テナント任せ」で、店舗は委託販売の百貨店のデパ地下風になっていたのです。

【家業店減少の時代】

 小売業で店舗数が130万店と最も多かった家業型の食品販売店(八百屋、肉屋、酒屋、乾物店、何でも屋)の経営が成立しなくなって減少し、その売上げがワンストップ型の大型店であるSMチェーンに移行している間の商品競争は、コンセッショナリー型でもやっていけたのです。

 ある著名コンサルタントは、この方法を「競合せず、相手の商品構成を包み込む戦略」と言っていました。SMは家業店を店内に包み込んだのです。ここが多店舗化して商品開発を行った米欧のSMとの発祥(出自)の違いです。

【単独世帯と、高齢者夫婦2人世帯の増加】

 2000年代に増えたのは、小家族化と個食化のニーズに合致して急速に店舗数を増やしていたコンビニと、食品部門を持つドラッグストアでした。SMの顧客対象はファミリーであり、家族需要に適合させる商品と商品構成をとっていたからです。

 1990年には845万世帯(構成比21%:全世帯4027万)だった1人住まいの単独世帯は、2017年には1361万世帯(構成比27%:全世帯5043万)に増えています。単独世帯では不経済になる調理は減り、外食とコンビニの中食が増えます。高齢者2人の世帯も似ています。カレーを作っても3日や4日分もあるからで、体が黄色くなる感じ。でも、少なく作るとおいしくない。

 県や都市単位のリージョナルチェーンが多かったSMでは、2000年代から商圏の食品需要額が増加しなくなったこともあって、現在は売上げ前年比を減少させる既存店が続出しています。2010年代の地方(総人口6000万人)では高齢化・小家族化に加えて人口減が始まっています。2018年からはそれが大都市圏とその近郊(人口6000万人)にも及んできており、東京圏では2020年から始まります。