成果に結びつく顧客体験(User Experience:UX)向上への取り組みの支援を、コンサルティングとソフトウェアの両面から実施している株式会社ビービット。長年コンサルタントとして数多くの業種でデジタルチャネルの成果向上の支援などをし、近年はUXやCX(Customer Experience)をテーマに多くのイベントへ登壇している同社執行役員/エバンジェリスト宮坂祐氏が、OMO(Online Merges with Offline)というO2O (Online to Offline)の先の新たな概念とともに、行動データを利用する新しいデータドリブン・マーケティングについて、最新事例を交えて解説した。

株式会社ビービット 執行役員/エバンジェリスト 宮坂祐氏

 「O2O」に代わる「OMO」とは?

 現代は、スマートフォンの登場・普及により、日常生活においてオフラインの状態がほぼ無いと言えるほどです。実際、日本人がスマートフォンを見る1日の平均時間は3時間、1日で画面を見る平均回数は150回にも上ると言われています。そこで、今日ご紹介したいキーワードがOMOです。OMOはオンラインがオフラインを包み込み、オフラインが無い状態を表す言葉です。

 

実店舗とECサイトをシームレスにつなげる生鮮スーパー

 OMOの概念をご理解いただくために、都市部におけるスマートフォンの普及率が97%を超えると言われる中国での先進事例を2つご紹介します。

 まずフーマーシェンソン(盒馬鮮生)。もともとはアリババが運営するECサイトで、3km圏内はアプリでの注文から30分以内で家に商品が届くサービスです。30分以内に届けるということは人口密集地に配送センターを置く必要があり、それが実店舗としても展開されています。

 フーマーシェンソンの実店舗には大きな水槽があり、その中にいる伊勢海老をフードコートで調理してもらうこともできます。実際に食べてみて、それが本当に新鮮でおいしいと分かれば、次回は生鮮食品の鮮度を直に確認できないECサイトであっても、顧客は不安を覚えることなく商品を購入することができるでしょう。

 興味深いのは、顧客接点となるアプリ、実店舗、ECサイトがシームレスに連携し、顧客は自由にそれらを横断して利用できていることです。実店舗というリアルのパワーをしっかり活かしながら、電子マネー決済「アリペイ」に紐づいたその利用状況がデジタル化できていることで、顧客データを集め、活かし、顧客により良い体験を提供することができているのです。

2億人と定期的につながりCMが不要になった保険会社

 もうひとつの事例は中国の巨大金融グループの平安(ピンアン)です。平安が提供する「平安グッドドクター」アプリは、医療における顧客のお困りの点(ペインポイント)を解決するためのもので、信頼できる医者に健康相談できるチャット機能を備えています。2億人もなる利用者の顧客IDはあらゆるデータに紐付いており、担当の営業マンは、自分の担当顧客が医者へ相談したとなると、電話で「その場合は保険が適用できますので、書類を後でお送りください」といったように顧客の状況に合わせたフォローをします。

 

 ユーザーとしては困っているタイミングで必要な手を差し伸べてくれので、感動体験として語られています。営業マンは感謝されることが増え、商品を売りやすくなったといいます。

 平安は2億人の顧客と定期的につながることで、テレビCMを打つ必要が無くなりました。テレビに認知させてチャネルで販売する従来の「ファネル型」から、顧客体験に寄り添い信頼を得て商品を売る「ジャーニー型」へと見事に移行したのです。これは、デジタルを活用したマーケティング変革と言えます。

 この2つの例に共通しているのは、行動データを集めて、分析して、顧客体験をより良くして、さらに行動データを集めていくというサイクルがしっかり回っていることです。データ活用の先にある、顧客体験の向上こそが最大のポイントです。