江崎グリコが発売する「アイクレオ赤ちゃんミルク」

 江崎グリコは、日本初の乳児用調整液状乳(以下、乳児用液体ミルク)「アイクレオ赤ちゃんミルク」の全国販売を開始する。紙パック仕様の125ml入りで、希望小売価格は200円(税抜き)。全国のドラッグストア、ベビー専門店等で販売される。

 自社通販サイト「グリコダイレクトショップ」では2019年3月5日(火)16時より先行販売を開始しているが、初日はすぐに完売。アクセスが殺到し、一時はサーバーがダウンするほどの反響があった。

 全国販売日は、東日本大震災から8年目となる19年3月11日(月)。賞味期限は6カ月で、常温保存・飲用が可能だ。発売の背景には、災害時に弱者となる赤ちゃんの存在、子育て経験者を中心とした署名活動等の後押しもあった。

 また消費者庁は3月5日、「乳児用液体ミルクって何?」と題したPDFをホームページ上に公開。国が許可した「特別用途食品マーク」の説明の他、粉ミルクとの違い、液体ミルクの使用方法や注意点、栄養素の基準値について掲載した。

深夜、外出、災害時の活躍を見込む

           ※江崎グリコニュースリリースより引用

【粉ミルクの準備から、授乳までの手順】※筆者作成

①粉ミルクと消毒した哺乳瓶を用意

②必要量の粉ミルクを計量し、哺乳瓶に入れる

③70℃以上のお湯を準備

④粉ミルクの入った哺乳瓶に③を混ぜて溶かす

⑤乳児が火傷しないよう、ミルクを人肌まで流水などで冷ます

⑥授乳前に調乳者自身の手首等に2~3滴落とし、温度を確認

⑦作ってから2時間以内を目安に授乳

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「アイクレオ赤ちゃんミルク」と「粉ミルク」の授乳方法。従来の粉ミルクで必要だった粉ミルクをお湯で溶かす工程(③)、溶かした粉ミルクを乳児が飲める適温まで冷やす工程(⑤、⑥)は、乳児用液体ミルクでは不要となる

 乳児用液体ミルクは、母乳の代替食品として使用する。常温での飲用が可能な手軽さが最大の魅力で、授乳時には哺乳瓶に注ぐだけですぐに授乳が開始できる。主な利用シーンとしては、災害時、深夜授乳、外出時、調乳に不慣れな人に赤ちゃんを預けるときと想定されている。

 一方、従来の粉ミルクの授乳では、調乳に時間や手間が必要となっている。

 物理的な課題としては、調乳時には70℃以上のお湯(③)で溶かすこと(④)、乳児が火傷するため完成したミルクは適温まで冷ます必要があること(⑥)、災害時には調乳のための清潔な水やお湯の確保が困難なことが挙げられる。

 また、泣き叫ぶ赤ちゃんを待たせて粉ミルクを調乳する精神的な負担や、外出時に調乳用の水筒など荷物が増えることも課題として挙がっていた。

 子育て経験者・当事者を中心に、今回の発売は非常に好意的に受け止められている。災害時にはストレス等で母乳が出にくくなるケースもあり、新たな選択肢としても期待が高まっている。

 ただ海外では、既に乳児用液体ミルクが複数種類販売されている。中には付属の乳首を付ければそのまま飲ませられるタイプの製品もあり、「災害時に衛生的な哺乳瓶を用意できるか不安」「125ml容量だけだと月齢によっては使いにくい」と、さらなる利便性を期待する声もある。

消費者と直接つながり、声を聞く

江崎グリコの乳幼児関連商品。今後は消費者とつながり、ニーズを直接聞くことを目指す

 江崎グリコは、乳児用液体ミルクの開発に国内でいち早く名乗りを上げている。19年1月31日に乳児用液体ミルクの製造に関わる承認を厚生労働大臣より取得しており、3月5日に消費者庁から特別用途食品の表示許可を取得し、今回の発売に至っている。

「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、同社の産官学プロジェクト「Co育てPROJECT」の一環だ。「Co育てPROJECT」では「商品」「サービス」「産学連携」を3本の柱としている。さらに東北大学大学院とは、父母が互いに第一養育者としての自覚を持ち、共同で養育を行う「Coparenting(夫婦で協力して子育てすること)」の必要性を掲げ、共同研究を進めている。

 併せて、自社内の人財制度改革も進めている。「Co育て休暇」の対象・日数拡大の他、妊活対象の「プレCo育て休暇」、孫育児に使える「取り返しCo育て休暇」を新しく整備。子育て中の社員だけでなく、周囲で働く上司や今後の出産を考えている社員まで対象を広げることで、まずは社内から子育ての理解者を増やしていく考えだ。

江崎グリコの江崎勝久社長(「Co育てPROJECT」発表会時に撮影)

 2月6日の「Co育てPROJECT」発表会で、同社の江崎勝久社長は「グリコは商品を通じて消費者の豊かさに貢献してきた。創意工夫のDNAを、今回の『Co育てPROJECT』にも生かしていく」と宣言。

「(乳児用液体ミルクが)短期的な収益に結び付くとは考えていない。『SUNAO』や『アーモンド効果』のように、最近では商品の機能性が評価されている。乳児用液体ミルクも、利便性が重要なはず。今回の取り組みによって消費者の意見を聞く、直接ターゲットとつながりを持てることが重要だと考えている」と、新製品の位置付けを説明した。

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