私は吃音だ。言葉を話すようになってすぐに発症、それから約25年間、吃音が治らないまま今も生活している。3歳~15歳までが重度の吃音で、まともに話すこともできなかった。高校に入学してからは徐々に良化、現在も吃音は発症するものの、ある程度のコミュニケーションは取れるようになった。

 なぜ今、吃音について書くのかというと、先日深夜のドキュメンタリー番組で吃音について取り上げられており、社会の理解が進んでいないことが描かれていたからだ。これまでも映画、ドラマなどで吃音を題材にした作品は数多くあり、吃音について目にする機会はあるが、社会に正しく認知されていないと感じることも多いので、当事者から見たリアルを書くことで少しでも多くの人の目に触れ、理解が進めばいいと考えた。

吃音とは

 そもそも吃音とは言葉が円滑に話せない障害で、主な症状は3つある。

1.連発(語音・音節の繰り返し)

「タタタタマゴ」のように音を繰り返す症状で、どもり始めた初期にみられる。連発の症状がある人は誰でもどもっていることが分かる。

2.伸発(引き伸ばし)

「タ-マゴ」のように音を引き伸ばす言い方で、これも初期にみられるが、成人になるに従って緊張が加わる。

3.難発(ブロック)

「……タマゴ」のように詰まって音が出てこない。ブロックといわれる成人吃音の多くにこの難発がみられる。最初の一音が出れば後は割と話せるので、周りの人は吃音だと分からないことが多い症状。

 3つの症状の中では、あまり周りから認識されにくい難発が一番つらいといわれている。吃音症をもっていると成長につれ、周りからからかわれたりすることがあるため、話すことが恥ずかしいという意識が芽生え、言い換えたり、無言になることで吃音症であることを隠すようになる。

吃音の特徴

・発症:2〜4歳が多く、ほとんどが7歳までに発症

・発症率:約5%で、そのうちの約50%が自然治癒、もしくは簡単な指導で治癒

・男女差:男:女=3:1

・吃音児の約50%が家族に吃音児者がいる

・日本では100人に1人の割合で吃音者

<※学校法人敬心学園 臨床福祉専門学校のHPから引用(一部修正あり)>
 入学検討者向けの説明なので分かりやすく簡易的になっている。

進んでいない社会の理解と吃音者が見たリアル

 私が吃音を発症してから約25年たつが、社会の認知は全く変わっていないと感じる。小さい頃から吃音が理由で、からかわれることが多く、いじめにもあったこともある。吃音ははた目から見ると、お笑い芸人がトーク中に噛んで笑いが起きるのと同じで、どうしても面白く見えてしまう。

 小、中学生の頃は、授業中の発表でクラスの全員が注目しているときに、どもると笑いが起きる。そして先生までも、私のどもりのまねをして笑いのネタにすることが多々あった。

 高校、大学に入ってからは目に見えるいじめはなくなったが、一部の人からは裏でバカにされていた。私は難発でア行が出づらく、自分の名前(小野田)を言えないことが多いので、「あいつは自分の名前すら言えない」と話しのネタにされていたようだ。

 そして、一番苦労したのが就職面接だ。面接は自分をアピールしないといけないが、うまく話せなかったらどうしようと考えてしまい、言葉が全然出てこない。1分間の自己PRタイムで何も話せなかったこともある。面接官の方に笑われ、「それじゃ社会で生きていけないよ」と言われたこともあった。

 厳しい就職活動をなんとか乗り切って就職したが、そこでもからかわれる。客先からの電話対応が上手にできず、どもってしまうことが多かったので、その状況を会社の同僚にまねをされて笑われる。そんな状況が続き、「いつまでバカにされなきゃいけないのだろう」と思い、精神的に病んで会社を辞めてしまった。その後、もう1社同じ経験をして退職後、現在に至る。

 このように吃音を抱えている人にとって、生きづらいと感じる環境は変わらない。2013年には、病院に勤めていた看護師が吃音を理由に自殺したことがあった。病院ですら、吃音を理解できていないのが、社会の現状を物語っている。

 私自身、普通に生活したいだけなのにバカにされる。正直生きていくことがつらい時期もあった。しかし、生きていくしかないのだ。同じような人を増やさないためにも、社会の認知がもっと進まないといけない。

 大事なことは、吃音を抱えている人を理解すること。どもっても笑わないこと。どもってもよいから最後まで話させてあげること。これだけで吃音を抱えている人は、少し楽になるのだ。

吃音で悩んでいる方へ

 今も、過去の私と同じように吃音が原因で生きづらさを抱えている人もいると思う。「吃音さえなければ」「普通に話したいだけなのに」と考えてしまうことが多々あると思う。そして、吃音を原因に自分の可能性を狭めてしまう方も多いと思う。

 私も以前まではできるだけ人と話す必要がない職業を探していた。しかし、今は人と多く関わる仕事をしている。当初はどもってうまく説明ができないことはあったが、数をこなすうちに自然と話せるようになってきた。

 症状が良化したのは、吃音を気にしなくなったから。どれだけ話してもどもってしまうので、「どうせどもるし、気にしなくていいや」と開き直ったら、なぜか話せるようになった。人それぞれ抱えている状況や症状は違うので、「こうすれば治るよ」とは簡単には言えないが、頭の中で吃音について考えないで開き直ることも大事かもしれない。

 共に頑張りましょう。