私が楽天のあるショップにメールを送付したのは、月曜日の22:44。送った直後に、ショップから返信が届きました。通常ならばスタッフは帰宅しており、対応できない時間帯です。

 自動返信メールかなと開いてみると、「お世話になっております。〇〇スタッフAIです。私は〇〇のITシステムの中で働くロボットです……」という文面に、驚きました。

 スタッフAI(ロボット)から、メールが届いたのは初めてでした。

 ネット通販では、特性上、注文や問い合わせは24時間受け付けています。大抵は注文や問い合わせをすると、内容の確認メールが翌日には飛んでくるシステムになっています。ちなみに、文面は業務的なものが大半です。

「ついにAIからメールが届く時代になった!」と深夜に興奮する私に、横にいた夫は冷静に「この文面だけじゃ分かんなくない?」と言いました。

 確かに、メールの趣旨としては「問い合わせを受け付けました」「今は営業時間外で返信できかねるので、スタッフが折り返し連絡します」というもの。文面さえ作ってしまえば、自動返信メールでも対応できそうな内容でした。

 ただ、仮にそうだとしたら、私はますます面白いと思いました。仮に小さな企業でAIシステムを導入する予算がなくても、工夫をすればクレームを防ぎ、AIに近い対応ができるということです。

①スタッフAIだった場合

 

 私は、送信者の主語が「スタッフAI」だった点がとても面白いと思いました。受け取ったメールには、こうも書いてありました。

「私(スタッフAI)はまだお客様のお問い合わせにご対応できるほどの能力は備わっておりません」

 その他、〇〇ショップの営業時間、メールは翌営業時間内にスタッフ(※AIではない)が一件一件確認して、順次返信する旨が書かれていました。内容としては、至ってシンプルなものです。

 確かに、冒頭で私が送ったメールの内容は「問い合わせの回答に対する感想とお礼」でした。このメールの返信内容を考えるのは、スタッフAIには少し難しそうです。

 これがもし、通常の「スタッフ」を主語にすると、以下のようになるはずです。

「スタッフAIでは、お客様のお問い合わせにご対応できません。

(〇〇ショップの営業時間は✕✕です。翌営業日に、〇〇スタッフが一件一件改めて確認の上、順次ご連絡いたします)」

 ほんの小さな違いですが、受け取り手の印象は、だいぶ違うのではないでしょうか?

 前者には「そりゃあ、『AI(ロボット)なら』細かい問い合わせに対応するのはまだ難しそうだよね」という気持ちが生まれます。

 でも後者だと、スタッフ目線であるため「問い合わせに対応できない」という文面が強く印象に残ります。受け取り側は「じゃあ、その『スタッフ』はいつ対応してくれるのかな?」という気になります。

 あえてお客さまとスタッフの間に「スタッフAI」という1クッションを置くことで、回答が遅れること、営業時間外であることが受け止めやすくなっていると感じました。

 取扱商品数がそこまで多くないので、恐らく規模の小さな企業のはずです。仮に問い合わせ対応に設備投資しているとしたら、とても効率的だと感じました。

②自動返信メールだった場合

 

 大抵の問い合わせは、お客さまは「早く返信がほしい」と思っています。情報が早く手に入るようになったことで、私たちは昔よりもかなり待つことが苦手になってきています。(過去記事:行列店に30分並ぶより、スタッフを3分待つ方がツラい?

 先日も『路線バスの運転手が発車間際に来た車イスのお客さまの乗車を待てずに乗車拒否を行った』としてニュースになりました。背景には、運転手の問題だけでなく、定刻通りの運行を求める環境もあると思います。

 人手不足の今、企業が全ての問い合わせに瞬時に対応する環境を求めることはあまり現実的ではありません。とはいえ、問い合わせる側は待たされれば待たされるほど、「ちゃんと受け付けられているのだろうか」「いつ返事がくるのだろうか」と、不安な気持ちが増していきます。

 そうであれば、二次クレームを防ぐための対策、自分たちの不在を補うツールの活用術に気を配っていくべきだと感じました。

 実際には、金銭が絡む注文変更や商品に関する細かい質問など、受け付けたとしても即答できないイレギュラーな問い合わせも多いはずです。特に営業終了間際や営業時間外に来た問い合わせ対応は、翌営業日にスタッフが確認し、対応するのが通常だと思います。中にはスタッフではなく、責任者でなければ判断できないものもあるでしょう。

 焦って不十分な回答をする、常に早く対応しようとスタッフが無理をする、正確な回答をするために相手を不安にして長く待たせるのではなく、どうやったら顧客が気持ちよく待てるかを考えていくべきだと思いました。

ツールの先にいる、受け手の感情を大事に

 冒頭のショップのメールが、スタッフAIによるものだったのか、自動返信メールなのかは分かりません。また、送信する文面を考えたのは〇〇スタッフなのか、システムの担当者なのか、詳細は一客である私には分かりませんでした。

 いずれにしても、決して大きくない一企業が、こういった対応をしているのはすごいことだなと感じました。

 今回、私が利用したのは楽天に出店する専門店の一ショップです。でもネット通販ショップだけでなく、リアル店舗を運営する人にも活用できるはずです。

 三菱総合研究所は35自治体と「AIスタッフ総合案内サービス」の実証実験を既に行っており、2019年4月より本格運用する予定です。ヤマト運輸や郵便局も、既にLINEで再配達の申し込み等を受け付けています。よくある問い合わせ対応なら、ある程度のコストをかければ自動返信で対応できる時代になりつつあります。

 企業や店舗のスタッフも、消費者と直接つながるためにSNSや最新のテクノロジーを活用しています。直接つながれば、当然、時間に関係なく、さまざまな意見や苦情も直接寄せられるようになります。

 24時間動き続けるビジネスの世界。そこで重要なのは、各ツールの効果的な使い方を追うことよりも、ツールの先にある相手が何を感じ、どんな気持ちで行動しているのかを、もっと深く考えることだと感じています。