昨年5月に販売されたアマゾンのエコードットキッズ版(米国限定)。

 ウォルマートは1月、『グーグルショッピングアクション』および『グーグルエクスプレス』から撤退した。グーグルショッピングアクションは昨年3月に立ち上げたオンライン・マーケットプレースで、グーグル検索にリストアップされた商品を、グーグルホームやスマートフォンで販売し、グーグルエクスプレス(地域配送サービス)で配送するもの。最大の特徴はボイスショッピングも可能なことだった。

ウォルマートはボイスショッピングを自社開発か?

 開業時にはウォルマートの他、ターゲット、ホームデポ等が参加し、アマゾンエコーに抗戦する構えだったが、ウォルマートは1年もたたないうちに撤退した。理由は明らかでないが、“売上げがそれほど成長しなかったのでは”という憶測の他に、ブルームバーグ社のマシュー・ボイル氏とマーク・バーゲン氏は「ウォルマートがボイスコマースを自社開発するのではないか」と指摘している[1]

 ウォルマートは2016年のジェット・ドット・コム買収後から、Eコマース事業拡大のために人材獲得、オンライングローサリー拡大、配送サービスの拡充、店舗のフルフィルメント機能拡大などの戦略に注力。さまざまな試行錯誤を通じて社内にEコマースの最新戦略やテクノロジーを開発できる体制が整いつつあるのでは、という推測もある。

 例えば、オンライングローサリー事業で提携しているインスタカート社とは、同社が提供する店内でのフルフィルメントサービスはウォルマート側で行い、配送だけで交渉した。今回も、グーグルのボイスは欲しいが配送は自社で対応、という判断があったのかもしれない。

 グーグル社もウォルマート社もそれぞれ、『グーグルの音声制御式デジタルアシスタントで働くソフトウェア開発は継続する』と発表しているので、新たな動きが期待される。

アマゾンはWi-Fiルーター企業買収で家庭内の足場作り

 アマゾンはメッシュWi-Fiルーターの イーロ(Eero)社の買収を2月に発表した。同社ルーターは子機を複数利用でき、家中でいつでも、どこでもスピーディに接続、インターネットを使用できる。動画配信サービスを行い、ボイスショッピングの拡大を狙うアマゾンにとって、家庭内のWi-Fi環境向上は必要なインフラ整備だ。

 1月初旬にアマゾンはエコーを累積1億台以上販売したと公表した。また数年前から、エコーにコネクトするさまざまな家電や家電アクセサリーを開発・発売し続けている。例えば、スマートプラグ(25ドル)、自動車用の「エコーオート」(50ドル)、屋内外両用監視カメラ「スティックアップカメラ」(180ドル)、エコー制御可能で商品自動補充「ダッシュボタン」機能のついた電子レンジ(60ドル)など、現在150以上の製品をエコーを通じて制御できるようになっている[2]。エコーを購入した人が自然に関連商品も買ってみたくなるよう誘導している。

ボイスショッピングはAIアシスタントへの親近感から?

 米国のボイスショッピング市場は現在の18億ドルから2022年には400億ドルに膨らむとOC&Cストラテジーコンサルタンツ社は試算している[3]。同レポートによると米国の13%の世帯がスマートスピーカーを所有しており、そのうち62%が少なくとも1回、36%が定期的にボイスショッピングをしていると回答している。購入品目は食品20%、娯楽用品19%、家電17%、衣料品8%だ。単価が低く、よく知っている商品がボイスで買われる傾向がある。

 同調査によると米国の家庭でのアマゾンエコーの浸透率は10%、グーグルホーム4%、マイクロソフトのコルタナは2%だ。一方、直近のスマートスピーカー出荷台数を見ると、2019年第4四半期にアマゾンが1370万台、グーグルが1150万台で、2社が市場を大きくリードしているものの、アマゾンとグーグルの差は2年前に比べて縮小している。両データを単純に比べると、グーグルホームは出荷数の割には使われていないようにも見える。

 筆者はアマゾンのアレクサと同居してはや4年目を迎えるが、使い慣れるとただ便利というだけでなく、毎日声を掛けるせいか、ペットを飼っているような感情移入が起こりやすい。グーグルホームもすぐに購入したが、起動コードの「ヘイ、グーグル」という企業名連呼に少々うんざりして会話回数が減ってしまった(注:設定を変えれば名前を変えられるが怠惰で変えていない)。

 グーグルホームは検索エンジンのおかげで知識は豊富だが、日常生活であれこれ話し掛けるには7万スキルを持つアレクサの方が自然な会話という視点からは守備範囲が広いように感じる。うちに遊びに来る子供たちがアレクサを困らせようとしてあれこれ質問を浴びせ掛けて、返答に感心したり笑ったりするシーンをよく見るが、こういう心理的な近さは購買行動にも影響をするのではないだろうか。

 ウォルマート社もひょっとしたら自社でサム(創業者名)を作らないと販路として育たないと感じたのかもしれない。

 

[1] Google’s Bid to Battle Amazon Suffers Blow as Walmart withdraws, wired.com, 2019年1月24日

[2] More than 100 Million Alexa Devices Have Been Sold, techcrunch.com,  2019年1月4日

[3] OC&C Strategy Consultants, 2018年3月