3月1日、(株)AOKIはオーダースーツ専門店の新業態「Aoki Tokyo」を銀座、池袋に同時オープンさせた。「Aoki Tokyo」は、同社がスーツ専業店の単独ブランドとして立ち上げたもの。この方式ではコナカが「DIFFERENCE」、オンワード樫山が「KASHIYAMA the Smart Tailor」を立ち上げており、青山商事を除く上位チェーンによる「オーダースーツ専業店」が出そろい始めたことになる。

 オーダースーツとは、初回来店時に採寸からフィッティング、生地選択、購入までを行うもの。納期は最短で1週間(長くて3週間)で受け取れ(店頭または宅配)、1着3万円程度からの価格設定。そして2回目の注文以降はオンライン注文対応となっている点が伝統的なオーダースーツ店とは異なる。

 コナカ、カシヤマはいずれの店舗もオフィス街の路面店、またはベッドタウンの大型ショッピングセンター内に立地。つまり、想定顧客であるビジネスマン層の職住の生活圏内に出店することで帰宅、買物動線に張り付き、立ち寄り率を高めている。

 店舗の多くは小ぶりで50㎡にも満たない売場は試着用の完成品が数点と、シャツ、ネクタイなどの小物が品揃えしてあるのみで、サンプル生地のディスプレーが中心。従業員も1~3人程度。従来、主力としてきた郊外ロードサイド店舗とは異なっている。

「Aoki Tokyo」(銀座店)は1号店であるだけに、やや大ぶりで完成品のスーツ、バッグ、ネクタイなどの雑貨も品揃え、受注用のカウンターも幅広く確保し、5~6人の従業員が配置されている。

 現状、オーダースーツ業態の陣容はコナカが先陣を切り、2016年10月に1号店を開設し、2018年9月時点で50店舗を展開している。ほぼ同時期にスタートした「KASHIYAMA the Smart Tailor」も2019年2月末時点で40店舗を超えるまでの展開となっている。

事業ポートフォリオの再構築で業績堅持する紳士服チェーン

 各社が専業店にかじを取った背景にスーツ市場の低迷が挙げられる。同業チェーンの出店、イオン、イトーヨーカドー等総合スーパーチェーンの参入、さらにクールビズなどの浸透、若者世代のスーツ離れも重なり、家計調査で2000年には1万円前後であった支出も2017年には4676円と半減となった。

 各社の業績をみると、2018年3月期ではトップチェーンの青山商事は売上高2548億円(前年比100.8%)、AOKIホールディングスは1984億円(同102.3%)。わずかながら増収を維持しているが、青山の場合、アメリカンイーグル等のカジュアル業態、カード事業などを手掛けている。また、AOKIはカラオケ、ブライダル事業も手掛けており、カラオケ事業については売上高で10%弱、利益で20%弱の構成比を占めるまでになっている。スーツ市場が低迷する中で上位企業が業績を維持する一因に、こうした事業ポートフォリオの再構築を進めていることが挙げられるだろう。

 その中で基幹分野であるスーツ市場に新たに切り込むのが各社のオーダースーツ専業店なのである。

 先の購入層の行動を意識した出店パターン、来店、採寸、受け取りまでの時短も意識した購入スタイル、オンライン対応のリピートオーダーなどは、ZOZOに代表されるオンライン専業とは違ったデジタル時代の新しいリアル店舗の姿を示している。