消費者が購入体験に求めているもの

 私は、リアル店舗で購入する魅力は、自分が気付いていない面も含めてたくさんあると思っています。

アマゾンでトイレットペーパー18ロールと柔軟剤の詰め替えを購入した際の梱包。緩衝材として、54×76cmの大きな雑紙が10枚入っていました

 一例ですが、ネット通販で商品を購入した際、商品を保護するための緩衝材の多さに苦戦しているのは私だけではないと思います。場所を取る大型段ボールの解体や大量のゴミ捨てが毎回手間で、あえてシールなどのエコ簡易包装で済む店を選ぶ人もいるでしょう。

 他にも、人間の五感が挙げられます。視覚・聴覚についてはブラウザ越しでも現実世界の体験に近付いてきましたが、触覚、味覚、嗅覚は現時点ではまだ感じ取ることができません。立体的な商品が平面で展開されることで、魅力が伝わりにくい面もあるでしょう。

 現在は、今までのように「買物の全てをリアル店舗で」という時代ではありません。それは悲しいことではなく、リアル店舗が「消費者が買う理由」を見詰め直す機会だと思っています。

 その証拠に、インターネット発で小さく始めたビジネスの多くは、事業拡大に伴ってリアルな場作りに乗り出します。ネット通販だけでも商売自体は完結するはずなのに、実店舗を出店する、顧客と接点を持つためにイベントを開催するなど、あえて利用者と会う機会を作っています。

 これだけリアルタイム配信が主流となり、相互に情報発信ができる時代になっても、顧客と触れ合う場は大切にされているのです。

 今後は店舗によっては、価格を最重視する顧客とは一線を引くことも、必要になってくるかもしれません。また現実的には、どの店舗も、自社以外のプラットフォーム依存比率を下げていく時期がきているとひしひしと感じます。

 これらは一時的には売上減を招くかもしれませんが、価格以外の価値を見いだしている顧客との付き合いを重視することが、長期的には実店舗が存続する唯一の対抗策になり得ると考えています。