この新業態は「farm to table型SM」だ!

 ホールフーズが新業態をつくる過程でヒントにしたのは、アメリカの食を変えたと言われるアリス・ウォータース女史の存在です。

 1944年東海岸生まれで、カリフォルニアでフランス文学を学んだ彼女は、フランス料理に興味を持ち、27歳でカリフォルニア州バークレーにレストランをオープンします。

 1970年代は、味などそっちのけで肉やジャガ芋を食べ、やっと中流家庭にスフレ(メレンゲにさまざまな材料を混ぜ、オーブンで焼く)やホタテ貝のコキール(ホワイトソースであえたものを貝殻〈コキール〉の形の皿に入れ、粉チーズなどをかけてオーブンで焼く)が登場した時代。そうしたときに、大量生産ではない地元産のヤギのチーズやチコリなどの珍しい旬のオーガニック食材を使う、彼女のレストラン「シェ・パニース」のコンセプトは極めて斬新なものでした。

 旬の食材は調理されることでさらにおいしくなり、彼女の人気は世界的なものとなったわけですが、その彼女が提唱したのは、地元で採れた鮮度(フレッシュネス)を維持し、調理(要調理、半調理、調理済み)を経た後、できるだけ早く食卓に上らせるfarm to tableの重要性でした。旬の食材は鮮度が良いことで自然の恵みである栄養素が最大化されます。そうした食材を調理でさらにおいしくするというわけです。

※farm to tableは地産地消(地元で採れたてを食べる)だけではなく、採れたてを、食事(主菜や副菜など)に変えるという意味を含む。

オーガニックはライフスタイル志向になる!

 

 アメリカの「価格志向」「健康志向」「環境志向」という価値観の流れの中、ホールフーズはこの新業態で地元の旬の食材を提供し、farm to tableを打ち出すことで、特に環境を志向する顧客の支持を得ています。この層はビーガン(動物性食品を一切食べない)な生活を送ることで、動物愛護や地球環境を考える「心の健康」を求めています。

 こうした観点から見ると、この新業態は今後、アメリカの消費の核となるミレニアル世代(1980年代生まれ、7000万人以上に上る最大の人口層)を対象に「心の健康に共感する価値観」を具体化した業態だといえるでしょう。

 ミレニアル世代の価値観は5つあります。

1.コンビニエンス…セルフと中食で時間短縮

2.シンプルさ…セルフで知りたい情報や商品を得る

3.バリュー…体によい、環境によい価値

4.おしゃれさ…トレンド(健康、幸福という意味での)のこだわり商品(コンブチャ〈紅茶キノコ〉やコールドプレスジュースなど)

5.体験…タッチパネルなどデジタルサイネージでの楽しい買物

 この新業態はこうしたオーガニックだけでは満足しない層がスマートに時間を使い、スマートな価格で食事が解決できるようにデザインされています。

 オーガニックをアイコンとして扱うことで、「嘘のない」「体によい」「環境によい」「心の健康を提供する」ライフスタイルSMであることを伝えながら、売場の所々に調理プロセス(要調理、半調理、調理済み)を混在させる。ミレニアル世代のお客が買物を通じて、店内を回っていくと、体と心が元気になってくるさまざまな商品と出会い、必ずそこにはホールフーズの自主商品「365」のロゴが見えるようになっている。

 farm to tableなお店が提案するライフスタイルは、やはりシンプルでスマートなのでした。