今年4月に働き方改革関連法案が施行。これにより残業時間の削減や、有給休暇の取得もしやすくなる。GWも最大で10連休になるなど、私個人としても今から何をしようかと考え、ワクワクが止まらない日々を過ごしている。

 しかし、2月19日に開催された、第2回「目覚め方改革プロジェクト」セミナーで、その浮ついた気持ちは淡くも破れさってしまった。

 目覚め方改革プロジェクトとは、睡眠の重要性の認知を高め、健康で活動的な毎日を過ごせる環境を作ることを目的に2018年8月29日に設立され、「目覚め方と体内リズムの重要性」に関する情報を発信しているもの。今回は、日本人の睡眠問題や仕事との関連性を中心にセミナーを行った。

日本人の5人に1人は睡眠に課題を抱えている

 まず、睡眠の基本は「体内リズム」・「量」・「質」。「量」と「質」はそのままの意味だが、「体内リズム」とは朝が来たら目覚め、日中は体と心が活動的になり、夜になったら自然に眠くなるという、無意識で動く体の時計のことである。

 この時計の中心は、脳の視床下部の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」にあり、体温や自律神経、ホルモン分泌など、あらゆる体の働きを調整している。ほぼ全ての臓器にも同じように時計が備わっており、眠ったり起きたりという「睡眠」にも、「体内リズム」が大きく関わっている。

 この体内リズムが乱れることが睡眠障害につながっていることが多く、日本人の5人に1人は睡眠の問題を抱えているとも言われている。

 睡眠の役割は、

①脳・体の休養、疲労回復

②脳の加熱を防ぐための体温下降

③エネルギーの保存

④身体の成長(成長ホルモン分泌)

⑤免疫機能増加

⑥記憶の固定

 とさまざまだが、日本人の睡眠時間は国際的に見ても低水準となっていた。アメリカが8.8時間(2016年のデータ)に対して、日本は7.4時間(2016年のデータ)で、1.4時間も睡眠時間が少ないという結果が出ている。

 睡眠不足が続くと知らず知らずのうちに脳や体への悪影響が蓄積してしまう恐れがあり、認知と神経行動学的機能の障害が起こってしまう。具体的には、情報処理能力の低下により、仕事の遅れや間違いが多くなる。そして、注意力、集中力の保持ができなくなり、1つ以上の仕事の遂行が困難になる等のことが生じる。

 では、なぜ日本人の睡眠時間が少ないのか。大塚製薬が30~60代男女2400人を対象にアンケートを行ったところ、働いている男女の8割以上の睡眠時間が理想の睡眠時間より短いと回答。理由を聞くと1位「仕事」、2位「睡眠自体の問題」、3位「家事」と回答しており、仕事に多くの時間を取られていることが分かった。

 

 世界的に見ても日本の長時間労働者の割合は多く、韓国に次いで世界2位となっている。そして、この結果を見ると日本人は5人に1人が睡眠に課題を抱えており、世界で2番目に睡眠時間が短く、世界で2番目に週50時間以上働く国であることが分かった。寝る間を惜しんで仕事に励むので、それなら労働生産性は高いと思いきや、世界22位となっている。

 

 長時間労働の結果、熱意のある労働者の比率は132位(139カ国中)、自社を信用していない労働者の出現率が世界1位という不名誉な結果も出てしまっている。

 睡眠不足により労働生産性が低下するが、ノルマが終わらないので労働時間を増やしてそれをカバーすることで、熱意のある労働者が減り、自社を信用しなくなるという悪循環が起こっているのではないか。

飲酒運転には厳しく、睡眠不足運転には緩い日本

 現在、日本では飲酒運転をすると、酒酔い運転(アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態)は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。酒気帯び運転だと3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。酒気帯び運転は、呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上で適応される。呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラムは、ビール1~2本、日本酒1~2合で達するといわれている。

 

 このように飲酒運転には厳格な規定が定められ、居酒屋でお酒を飲む際は車で来ているかの確認が入るなど、社会的に飲酒運転を断絶しようという動きが見られる。

 しかし、睡眠不足運転についてはあまり認識されていないように思える。起床から17時間起き続けている場合、呼気1リットル中のアルコール濃度0.25ミリグラムの酒帯び運転と同程度のパフォーマンスが低下することが分かった。さらに、24時間起き続けている場合だと、呼気1リットル中のアルコール濃度は、0.5ミリグラムと同等になる。これは、免許取消2年間の酒帯び運転が適用されるレベルだ。

 睡眠不足から、大事故へ発展する可能性もあるのだ。世界的に見ても睡眠不足が原因の大事故は多く、1986年1月に起こったスペースシャトル・チャレンジャー爆発事故(打ち上げ責任者たちの長時間労働・睡眠不足による判断ミス)や1989年3月のアラスカ沖エクソン社バルディーズ号 原油流出事故(勤務4時間、休憩8時間を1日に2回という極めて特徴的なスケジュール下で、事故前夜は勤務前に6時間以下の睡眠しかとれず、眠気と疲労が原因となった人為ミス)が挙げられる。

 普段の業務では問題なく行えていたことが、睡眠不足により行えなくなる。睡眠不足は酩酊状態と変わらないと言えるだろう。

体内リズムの整え方

 体内リズムの乱れによる睡眠不足を予防する方法がある。私もよくやってしまうのだが、休日の遅起きや疲れを取るため余計に寝ることは、休み明け前半のパフォーマンスが下がってしまう。

 休日に遅起きをすると、メラトニン(睡眠促進ホルモン)が出るのが遅くなり寝つきが悪くなる。リズムが乱れがちな休日も、いつも通りに起床することが大切である。

 春分の日から日の出が早くなるので、早い時間から朝の光をあびて朝型リズムを整え、「すっきりとした目覚め」から1日をスタートすることが日中のパフォーマンス向上につながる。

 多様で柔軟な働き方のカギになるのは睡眠が必要。日本人の働き方改革は、体内リズムの改善から始めた方がいいのではないだろうか。