アパレル各社の1月の売上数字が出そろい、都内百貨店や主要チェーンの2月第3週末締め(17日)の数字も入ってきているが、婦人服、紳士服とも商況は苦しいようだ。各社の明暗を分けている要素を数字と商品展開を見合わせて推察してみた。

何が1〜2月商戦の明暗を分けたか?

 1月は冬物セールの期待外れか弾切れ、2月は春物プロパーの需給ギャップが低迷要因となる。アパレル各社の商況をヒアリングする限り、1月は昨年のダウン不足のような弾切れは起こらず、防寒衣料の値崩れが例年より早かったためセール第2弾が盛り上がらず、値引き率を高めても在庫を残したアパレルが多かったようだ。

 2月に入っては冬物セールが早々に勢いを失う一方でスプリングコートなど春物アウターの動きも鈍く、ニット・カットのトップスや布帛(織物)・ジャージのボトムス、初夏物ライクなシャツやワンピースが先行。ブルゾン類や軽いオーバーサイズアウターは動いているものの、従来型のスプリングコートは動きが鈍い。

 年々、アウターは婦人服、紳士服ともフィットが緩くなって合繊軸の軽い作りにシフトし、春立ち上げはインナーが先行するパターンが強まっているが、従来型春アウター軸の品揃えを引きずったアパレルは消化が進まず、早くも値引き訴求が散見される。

TPOのズレと部門の壁が災いしている

 どちらも低迷していることには変わりないが、百貨店では昨春まで婦人服を上回っていた紳士服の前年比が夏商戦を境に逆転し、秋冬商戦では婦人服を下回る月が多かった。駅ビルやSCなど商業施設では秋商戦まで紳士服が上回り、冬商戦でも大差なかったが、両者の傾向の違いは何に起因しているのだろうか。その背景は2つあると思われる。

 第1はライフスタイル(TPO)対応の格差で、商業施設がカジュアル化、とりわけ近年のスポーツミックスなアスレカジュアルに対応しているのに対し、百貨店の紳士服はオンのクロージング・洋品とブランドショップに偏重して手頃なカジュアルが抜け落ち、ゴルフなどを中核とするスポーツ部門との壁もあってアスレカジュアルにも対応できていない。カジュアルチェーンと紳士服チェーンの前年比格差も拡大傾向で、マーケットのカジュアルシフトが加速しているのは明らかなのに百貨店紳士服は対応できていない。それは婦人服とて同様だ。

 第2は部門の壁で、商業施設ではもはやカップル型・ファミリー型の業態が主流を占め、モノ・ジェンダー業態は減り続けているのに、百貨店ではまだ部門の壁が厚く、婦人服・紳士服とフロアが分かれたままだ。百貨店でもスポーツ部門ではカップル型が主流だが、紳士服に併設されているケースが多く、婦人服との客流は十分とはいえない。近年は阪急本店のように好調な化粧品と婦人服や婦人服飾を複合するケースも見られるがまだ例外的で、部門の壁を越えるフロア編成はテナントゾーンに限られる。

 百貨店に限らず、TPOのズレと部門の壁は顧客を遠ざけ、売上げの低迷を招いている。古典的なビジネスウエアや通勤服の幻想を抜けられないアパレルチェーンはもちろん、アメカジ&ジーンズからアスレカジュアルへの変質に目を背けるカジュアルチェーンも客数減に苦しんでいるし、部門採算に固執する量販店は壁を超えた荒利ミックスを仕掛けるドン・キホーテやドラッグストアチェーンに売上げを奪われ続けている。マーケットも競争環境も10年もたてば一変してしまうというのに、10年どころか四半世紀も前の固定観念に縛られ続けては、はやりのAIに飛び付く意味もないのではないか。

売上げ・在庫の予算も固定観念にとらわれている

 毎月、公表される各社の既存店売上げ前年比を見るにつけ、月ごとの前年比に一喜一憂する小売業の体質は“固定観念”にとらわれ過ぎているのではないか。

 家計調査の月々の収入も支出も年々、平準化が進んでいるし、長期的に見れば小売売上げも徐々に平準化しているが、家計消費との乖離はむしろ広がっている。消費の実態に対応するには政策的に月度売上げを平準化すべきだが、前年対比にとらわれては前年踏襲から出られなくなる。

 売上げを平準化すれば消化回転が円滑になって値引きロスが圧縮され、物流量も平準化してマテハン人時量も物流費も抑制できる。実際に類似業態を比較すれば、平準化しているほど売上げ伸び率も収益率も高い傾向が認められる。自社の積み上げてきたデータや経験則にとらわれては前年踏襲の縛りを出られず大きな改善は望めないが、政策的に予算を組み替えれば奇跡が起こせる。

 国内ユニクロは前年踏襲の枠を脱するべく、16年から11月末の創業祭と5月末の生誕祭の山を伸ばしてセール月の山を下げ、値引きロスの圧縮に成功しているし、冬期への極端な偏りも着々と補正している。毎月の前年比に一喜一憂する意味はなく、ピークからセールの山を抑えて値引きや残品のロスを圧縮し端境月を底上げすれば、売上げを伸ばさなくても収益性は飛躍的に改善できる。

 加えてテナント出店型のチェーンでは端境の2月、8月の売上げを底上げすれば、最低保障売上げを割って家賃負担がかさむリスクを回避できる。2月、8月の家賃負担で年間の賃料負担率が2〜3ポイントもかさんでしまうチェーンもあるから、必死で解消すべき課題ではないか。