今、スーパーマーケットが最優先で取り組むべきは「生鮮のPBで高い商品価値を作ること」だ!

 商業界の専門誌『販売革新』に、4年前から「新しいチェーンストア理論:再考と展開」というシリーズを連載しています。

 書き始めた理由は、渥美俊一氏亡き後、チェーンストア理論を進化・発展させて述べる人がいなくなったからです。渥美氏のチェーンストア理論はウォルマートが始めたサプライチェーン前の1980年代までのものでした。

 商品開発論(=マーチャンダイザー論)は破産したシアーズの1970年代のものでした。このため、食品では、米国で進んだ「生鮮のグロサリー化論」だったのです。弁当と惣菜を売る日本型コンビニは否定していました。店内調理はもちろん否定です。

『販売革新』の連載は来月号(2019年3月号)で41回目。1冊の単行本より、長くなりました。最近2回は「食品スーパーの開発マーチャンダイジングの方法」を書いています。インターネット上の「商業界オンライン」でも連載を続けています。

 今回、「商業界オンライン」編集部から「チェーンストア理論を進化・発展させて記してもらいたい」とコラムの執筆依頼を受けました。そこで、新連載を始めようと思います。

 第1回のテーマは「日本のSMの平均店舗数が少ない理由」です。

SMとコンビニの差はどこから生まれた?

【1980年代中期からSPAに】

 ユニクロやニトリは、中国で企画製造する専門店チェーンが米国で輩出された1980年代の中期から、SPA(製造直売型の専門店)になっています。

 メーカーが作った商品を仕入れて陳列し、販売するのではありません。中国や、近年は人件費が上がった中国よりコストが低いインドネシア、ベトナム、カンボジアを含めた東南アジア全域の工場で商品を作り、輸入して日本で販売しています。

 アップルと同じ、ファブレスメーカー(工場を持たないメーカーという業態)です。アップルは台湾のホンファイの中国工場でiPhoneを作っています。

【最も古くから多店舗したSMだが……】

 わが国の小売業で最も売上げが大きいのは、全国で1万8611店のスーパーマーケット(SM)です。総売上げは18兆円。1店平均10億円です(2017年)。わが国の食品と飲料の総需要40兆円のうち45%をSMが売っています。

 SMは米国では100年前から、日本では1970年代から最も早くチェーン化を目指す多店舗経営になっています。需要額が大きかったからです。

 しかし、このチェーン化とは

・「商品価値の高い商品」の企画・製造ができる条件を作るために、

・店舗数を500店以上に増やすことです。

(注)日本では、チェーンストアは連鎖店と訳すだけで、画一的な商品構成の店舗としてだけに受け取られました。消費者にとってNBより高い商品開発を作るという面が無視されたのです。

 日米SMの平均店舗数には大きな差があります。

・米国のSMでは1位のクローガーが3825店、

・スーパーバリュが1588店、

・顧客満足度が全米ナンバーワンのパブリックスも5000平米以上の大型SMが1200店です。

・2万平米のウォルマートも生鮮とグロサリーの食品売上げが大きいのですが、5284店です(2016年)

 チェーン志向の企業群で最も古いわが国SMの店舗数が、なぜ平均30店で止まっているのか。誰でも、素朴に疑問に思うでしょう。

【コンビニは超多店舗化】

 食品と飲料が主力のコンビニは総計5.5万店。SMの3倍の店舗数があります。国内店舗数は

・1位のセブン-イレブンが2万437店(1店売上げ2.3億円)、

・2位ファミリーマートが1万5469店(1店売上げ1.5億円)、

・3位ローソンが1万4289店です(18年7月:1店売上げ1.6億円)

(注1)セブン-イレブンは、海外に日本国内の2倍以上の4万6780店を擁しています。セブンイレブンの1店平均売上げはローソンの53%増し、ファミリーマートの44%増しです。

(注2)立地、売場面積、商品数、店舗のパートは同じ技術なのに、異業種のように売上げが違います。コンビニ比較での顧客にとっての商品価値の違いが、1店の売上げの違いをもたらしています。セブン-イレブンは他よりはるかに開発新商品の投入数が多いのです。

 消費者が買う衣・食・住・エレクトロニクスの中で最も需要の多いわが国の食品で、なぜチェーン店の規模が平均30店と小さいのか? 

 疑問を持つのは普通のことでしょう。ところが、わが国のSM側はこの問いへの回答を持っていないように思います。

 端的に答えます。

 コンビニの生鮮であるファストフード(惣菜、弁当など)は、フランチャイズの商品本部が開発した商品です。商品価値の高い商品の製造は弁当でも車と同じように、1品目の大規模な生産数が有利です。

 1品目当たりの製造数が商品価値での競争優位を作るので、店舗数の多い方がさらに店舗を増やし、トップのセブン-イレブンは2万店以上になったのです。

 わが国のSMはどうか? 

 グロサリー(乾物食品と飲料)はメーカー製です。小売用語ではNB(全国的ではなくても、ナショナルブランド)と言っています。

【卸売業の小口バラ物流網】

 わが国では、NBの商品を小分けにして全国の隅から隅まで小口でもバラ配送してくれる卸売りの物流網が発達しています。

(注)米国のSMでは、グロサリーでも小売りのPB開発が主力です。

 NB商品の卸売業が最も発達しているのは日本です。米国では店舗がPB(プライベートブランド)の商品開発をするチェーンストアなので、卸売業が介在する余地が無くなってきました。

【米国の卸売業は消滅した】

 戦後の1950年代までは米国でも家業店が多かったので、卸売業がありました。60年代、70年代、80年代で一部を除き、消えました。原因はチェーンストアの店舗数が大規模化してPB開発を行ってきたからです。

 米国での卸は、およそ病院と調剤薬局(米国型ドラッグストア:医療用医薬の調剤売上げが80%以上)が相手の医薬品だけになっています。病院と調剤薬局は医薬のPB開発はしないからです(ゼロではありませんが、少ない)。

【SMのPB商品は少なかった】

日本でもようやく、PB開発が動き出した。

 わが国のSMでは、2000年までPB商品化がほとんどなかったため、1店が小さくても仕入れができ、商品価値で劣位にならず商売ができてきました。まず、これがわが国のSMの平均規模が30店と少ない理由です。NB卸の発達のため、5店でも30店でも仕入れ・販売ができたのです。

 NB商品の卸からの仕入れでは、30店より100店が有利という商品条件は少なかったからです(ゼロではありません。仕入価格で、割引リベートを含んでも数%以下)。

【生鮮商品でのわが国の固有な事情】

 もう1点、わが国のSMの特有な事情として、生鮮4部門(青果、肉、魚、惣菜)の売上構成比の大きさがあります。平均10億円の店舗で、生鮮4部門が平均では50%を占めます。

(注)日配品(毎日、発注・補充する食品)を入れれば65%です。

マグロでも、ここまで商品化ができる(ライフ桜新町店)。

<鮮魚の事例>魚の例を示します。鮮魚では最も売れるマグロの刺身。これはインド洋やアマダガスカルの遠洋漁業で採ったものを冷凍し、日本の漁港に水揚げしたものが多くなっています。インド洋で採っても、水揚げした港がマグロの産地になります(日本の“食品法”)。下関の名産とされるフグでも、玄界灘でとれたものはごく少量です。

 解凍し、解体して、刺身にしています。日本の食文化では生の生鮮を生のまま食べることが米国より数十倍も多いからです。

【米国の生鮮はここが違う】

 日本食は近年、米国でも人気がありますが、SMで刺身や寿司を買う人はマレです。肉はほとんどを冷凍の塊で買い、数週間分を冷蔵庫に保管し、少量を解凍して調理します。

 青果(果物と野菜)は大規模な農場で採った直後に4℃の20トン冷蔵車に入れて店舗に物流するコールドチェーン。だから、店頭陳列の消費期限が10日間と長い。これはコールドチェーンのない日本のSMなら腐る期間です。

【日本人の食文化】

 わが国では、生鮮の生食が多く、店頭での消費期限(品質が劣化するまでの時間)が1日しかない(肉は3日間)。これを日本のSMではどのように売っているか?

 それは3つです。

(1)地域の魚屋を店舗に入れて、刺身を作って売っている。コンセッショナリー・チェーン(妥協型チェーン)と言いますが、SMはこの方法をとったのです。デパ地下と同じ方法です。

(2)自社の鮮魚担当が店舗のバックヤードで刺身を作る。

(3)セントラルキッチンになる工場で作って、店舗に1日1回、配送する。消費期限が1日と短いので、大量には作れない。

【零細な加工・製造数】

 以上のように、30店のSMも100店のSMも、販売商品の開発製造という点では共に零細です。100店舗が店舗PBである生鮮商品の製造量の面で有利で、顧客にとっての商品価値(品質÷価格)が高いということはなかったのです。

【米国のSMチェーンは生鮮をグロサリー化した】

 店舗PBである生鮮の商品開発で量の優位を作らなくても、商売ができたのがわが国のSMです。米国のSMは生鮮を生のままに売ることは少なく、生鮮もグロサリー化しました。

 例えば、肉はハイエンドのSM(ディーン&デルーカなど)を除き、冷凍のままの塊で売っています。米国でも家業の肉屋は生の肉を売っていました(欧州も同じ)。チェーン型SMはこれを冷凍化したのです。

【これに対して、日本では……】

 日本では解凍して、陳列の消費期限を3日に短くして売っています。このため、量の優位が出にくかった。

 以上が、わが国のSMの平均店舗数がチェーンストア以前の30店でとどまっている理由です。商品開発がなく、卸からの小口仕入れと物流で商売できると、チェーン店の店舗数を増やしても有利にならない。NB商品の仕入れが便利だったからです。

【日本のSMには何が必要か?】

 コンビニは商品開発型なので、店舗数を増やすと商品価値を高める基盤ができることから、1万店以上になったのです。

 SMが店舗数を増やして店舗数の多さ、つまり1品目の販売数の多さが有利になるように転じるには、生鮮のPBで高い商品価値を作る必要があります。

鮮魚でも、ここまでできる(ライフ桜新町店)。
一工夫で見掛けが変わる(ライフ桜新町店)。

 食べる顧客にとっての商品価値は「品質÷価格」です。生鮮の品質は「見掛け、鮮度、味」です。「見掛け、鮮度、味」÷価格、つまり、食べる顧客にとっての商品価値を、他より高めることです。これがSMの売上げと店舗数増加の突破口です。

 ところが、店舗PBである生鮮の商品価値に気が付いているSMの経営者は少ない(経験的に言って、経営者の10人に1人でしょうか)。まず、価格の低さ・高さは分かっても、「品質÷価格」で示す商品価値についての理解が浅い。「NBを仕入れて販売する」と考えてきたからで、生鮮はSMのPBだという認識も浅い。

 だから、店舗数が平均30店にとどまっていて、店舗数を増やしてもコンビニのようには顧客にとっての商品価値で有利にならない理由は何か、ということへの真正面からの回答を持っていないのです。

【原材料の仕入れ量が増え、商品価値が向上】

 コンビニは商品開発型なので、店舗数が多いと明確に商品価値の高さにおいて有利になります。開発商品の1品目当たりの製造数が増え、原材料の仕入れ量が増えるからです。担当のマーチャンダイザーも少数の品目の開発に責任を持てます。

店舗数が多いところがさらに強くなる

 セブン-イレブンは国内2万店なので、取扱商品のほぼ全部の販売数(=商品開発数)で、断トツのナンバーワンです。このため、1店の売上げが他より40%以上大きく、その結果として増加店数も1位です。開発新商品の投入数でもナンバーワンです。

 わが国特有のことですが、SMの平均店舗数が他の業種のチェーン店数よりはるかに少ない理由は、

・売上げの40%のグロサリーと日配は卸からのNB仕入れ型であり、

・売上げの60%の生鮮4部門では、各店舗で零細な量の製造を行っていて、店舗数の多さの有利さが出ないからです。5店舗のローカルチェーンも残っています。

 以上は前置きで、ここからが今回のまとめです。

(まとめ)「職人生産から近代工業への変化」と同じ

 商品開発論は「国富論」のアダム・スミスが書いたピンの製造(1776年)の原理と変わることはありません。ベルトコンベアでの多段階分業のためには「製造数=販売数」の大きさが必要だからです。そのため、商品構成での標準化店舗数の多さを、チェーンと言っています。

 車も同じです。2000年にはトップメーカーがグローバル400万台でしたが、製造数は今、1000万台規模になっています。これはセブン-イレブンのフランチャイジーの店舗数(製造数=販売店数×1店平均売れ数)が増えたことと軌を一にしています。

 産業は同時発展します。エレクトロニクスでは、日本が負けてしまったスマホの生産数=販売数が象徴的。最先端の商品であるスマホの世界販売数で負けたことは、日本の製造業が2010年ころ中、国に追い抜かれていたことを表しています。