アマゾンが2兆円で買収したホールフーズ・マーケットは、ライフスタイルを通じて体によい商品を提供するスーパーマーケット(SM)です。

 同社はこれまで各地のナチュラルフード店を買収し、当時は他社がまだ注目していなかったオーガニック市場に参入、1992年に上場を果たしました。

 当時を思い起こすと、店舗入り口に陳列されたセージなどのハーブ類は料理する楽しさをイメージさせ、籠に入ったオーガニックのイチジクは味覚の秋を探す体験となりました。

 そして、青果売場では10数種を超えるリンゴが産地やオーガニックで分類され、そこにかわいいパッケージデザインのオーガニックアップルチップスも。こうした売場を見て、「やっぱり、ホールフーズはオーガニックだから安全で安心でおいしいんだ!」と感じたことを思い出します。

 ホールフーズは、楽しさとおいしさと「オーガニックというブランドの安全・安心」で、顧客に競合他社よりも20%以上割高な価格でも価値を感じてもらっていたわけです。

 しかし、オーガニックがどこでも買えるようになった今、顧客は「ホールフーズはオーガニックと称して実は高く売っているのでは?」と疑問を感じ始めています。

中食中心でセルフを増やせば安くできる!

 そして、ホールフーズは競合との価格競争に引きずり込まれ、オーガニック商品をビッグサイズにして割安感を訴求したり、自社ブランドの「365」を値引きしたりして、価格で対抗するように。同時に、価格を下げても利益率を落さないために、売場に十分な人を配置できなくなる悪循環も生まれました。

 その結果、セレクションが売りであるホールフーズらしさを止め、商品を絞り込まないといけない状況に直面したのです。

「手を打たなければこのまま利益率が下がる店舗を出店するしかない」と気付いたホールフーズは、今後も持続的に成長するためにオーガニックのセレクションを豊富にしつつも、ローコストオペレーションを可能とする中食を強化した新業態を開発しました。

 それが「365バイ・ホールフーズ・マーケット」です。

 

 そのセルフを中心としたローコストオペレーションを、今年の10月にロサンゼルスシルバーレイク店で調べました。その詳細は以下の通りです。

・精肉、鮮魚、デリの対面:平台に365ブランドの冷蔵・冷凍大量パック(オーガニックは1、2種類)。

・生鮮の限定オーガニック化:非オーガニックを6割以上、オーガニックはグリーンのハイライトで表示し、目立たせる。

・数種類の(世界の料理という形の)サラダバーとスープバー:2、3カ所のサラダバーとスープバー(10種類のトッピングと数種類のドレッシング)を設置。

・セレクション豊富なエリア展開するワイン:壁面部分(品種別・産地別)と限られたエンド(15ドル未満ピノノアール1SKUのみ)でダブらずに絞り込み陳列。

・デジタルタッチパネルでのこだわり商品や情報の提供:具材にこだわったピザのカスタマイズ注文、アプリによるワイン情報や口コミの確認ができる。

 とはいえ、人時コストがかかるバルク売りはオーガニックを志向する顧客に必須のため、10~20種類の小麦、ナッツ類などは扱っています。しかし、隣接したエンドでは米粉ラーメン10種類以上を陳列し、お湯を沸かすだけで食べられる便利さを訴求、もう一品買いたくなる客単価アップも狙っていました。

 つまり、この新業態は「健康を維持できる食事を半調理、調理済みでもとれる便利さを、価格を気にせずに得られる店」といえるでしょう。