産業の情報化で米国と中国の周回遅れになり、AIの利用では中国からは3周遅れと言われている日本。人海戦術に頼っている小売業界ではこの分野の取り組みが急務だが、いきなりAI化を図る前にできることがたくさんある。今回からRFIDを活用した生産性上昇の考え方と方法を紹介していく。

チェーン店舗数が少ないとIT化・AI化に遅れる!

 編集部:前回は、店内で最も作業時間がかかっている商品の棚陳列作業について、コンビニで進んでいる「スライド棚」の話を伺いました。

 実験では平均で40%、陳列作業の時間を短くできたという報告が出ていますね。売上げの多い、少ないによる違いはあるでしょうが、平均で40%も店舗作業の生産性が上がる(40%の時間短縮)ということは、すごいことですね。

 コンビニでも売上げの大きな店舗(例えば、年商3億円)だと、商品の補充・陳列の必要数が多いので、スライド棚による生産性上昇は大きくなるでしょう。

 吉田:スーパーマーケット(SM)では、店舗内総作業時間の40%くらいが陳列作業です。入荷したバックヤードから商品ごとに、所定の棚に搬送し、棚に必要数を補充する作業が陳列作業です。

 コンビニが商品作業の短縮を研究した理由は、パートの雇用が難しくなっていて、時間給が少なくとも年3%は上昇傾向になってきたことがあります。コンビニはわが国で5.5万店にも増えている店舗数では最大のチェーンです。店舗数の規模が大きいほど、人的な生産性問題は大きくなりますね。

 編集部:店舗数で最大は5万店のコンビニですが、売上げでは11兆円以上と最大なのはSMのチェーンですね。ところが、SMでは生産性革新のイノベーションが出てこず、いつも遅れます。

 この点では、店舗数と同じで、1番が5.5万店のコンビニ(総売上げ10兆円)、2番が2017年で1万5000店のドラッグストア(総売上げ6.8兆円:2017年)、3番が1万3000店のSM(総売上げ11兆円)でしょうか。

 吉田:SMは1店売上げでは全国平均で10億円くらいと大きい。コンビニは2億円、ドラッグストアはその2倍の4億円が平均です。

 しかし、SMはチェーン店の平均規模が小さい。総平均では1社30店くらいです。コンビニは1社1万店以上、ドラッグストアでは1000店以上になっています。SMの1社当たりの店舗数のスケールはわが国ではとても小さい。ここが1社の店舗数が1万店を超えている米国と違う点ですね。チェーンの店舗数の規模が小さいと、その業界のIT化、そして、これからはAI化を含む技術イノベーションに遅れます。

 もう1点、日本のSMの米国にはない事情が絡んでいます。毎日発注、毎日補充を行っている、生鮮5部門の売上げが店舗売上げの60~70%を占めていることです。

 米国の大手SMでは、肉と青果が中心の生鮮でPB化が図られ、例えば、肉は冷凍が多く消費期限による陳列の期間が長い毎日発注、毎日補充ではないのです。

 野菜と果物の青果も、生産地の農園から4℃という冷蔵車によるコールドチェーンで運ばれるため、鮮度維持期間が日本よりはるかに長い。日本では農園が零細で分散しているので、20トンの冷蔵車はなく、コールドチェーンが築けていないのです。

 青果で10日間、陳列した商品の鮮度維持ができれば、1週間に1回の発注と陳列作業で済みます。このため、米国のSMチェーンの人的な生産性は日本の2倍くらいと高いわけです。

 わが国のSMでは売上げの60~70%を占める①青果、②精肉、③鮮魚、④惣菜・弁当、⑤大豆や海産物の加工品などは日配商品とされ、陳列の消費期限が短い。

 青果が約5日間、精肉は最長3日間、鮮魚は1日、惣菜・弁当も1日、日配商品は1週間くらいです。

 日本型SMの生鮮5部門では「毎日発注・補充陳列」が行われていて、人的な生産性は低い。米国のSMの「1週間1回」に比べて、毎日だと7倍の作業時間を使っているのです。