テリトリー権の定めがなければ何でも許される?

 FC契約書にテリトリー権の定めがなければ、原則として本部は加盟店の近隣に自由に出店することができますが、その場合、本部は全く自由に直営店や他の加盟店の出店を行ってもよいのでしょうか?

 この問題に関して参考となる裁判例(福岡地判平成23年9月15日判時2133号80頁)があります。

 この裁判例は、本部による近隣への出店の是非に関して、加盟店のテリトリー権を否定する一方で、FC契約書に「加盟店と本部とが相協力して事業の繁栄を図ること」が契約の目的の1つとして掲げられ、「加盟店の営業努力が十分報いられるように本部が配慮する」と規定されている趣旨を考慮し、本部による出店が加盟店の売上げや生活に与える影響の程度、それに対する本部の認識ないし認識可能性の有無によっては、本部による出店が信義則(民法1条2項)に反するものとして債務不履行を構成する場合や不法行為を構成する場合もあり得ると判示しました(ただし、事案の結論としては債務不履行・不法行為の成立を否定しています)

 この裁判例によって、加盟店の近隣への出店にあたって本部に「配慮義務」が課される余地が出てきました。

 とはいえ、配慮義務の具体的な内容は事案により千差万別ですし、実際に配慮義務違反が認定され、加盟店の本部に対する差止請求や損害賠償請求が認められても、それはかなり限定されるものと考えられます。

 なぜなら、新規に店舗ができた場所が加盟店の近隣といえるか否かは距離だけで決められるものではなく、店舗の規模や商圏によって左右されますし、出店行為と損害(売上げの減少)の因果関係の立証はハードルが非常に高いからです。

法律上の問題となる前に

 このように、加盟店のテリトリー権の問題は契約書の内容によって決まるといってよいでしょう。

 ただ、近隣への出店については、法律上の問題とは別に加盟店とスーパーバイザー(本部の経営指導員)との関係にも着目すべきです。

 近隣への出店がトラブルとなる場合、それ以前に加盟店と本部との関係が悪化しているケースが散見されますが、その原因の1つが本来であれば加盟店と本部との調整役となるべきSVがその役割を果たしていないことが挙げられます(FC契約締結後の指導援助の場面でもSVの不適切な言動がトラブルの原因となるケースが多く見られます)。

 加盟店としては十分な役割を果たしているとは言い難いSVや相性の悪いSVについては、本部にSVの交代を申し入れるべきです。

 本部としては、SVに対する教育・指導をしっかりと行った上で、SVを通じて十分な情報提供と指導援助を行うとともに、出店計画の必要性に関する説明と加盟店の経営への配慮を尽くすことがトラブルを未然に防ぐためのソリューションとなることを肝に銘じるべきです。