マッサージに行ったことがある人は分かると思いますが、通常、お客さまと交わされる会話は大抵決まっています。受付を済ませたら着替えを促される、施術体勢の指示を受ける、施術中に力加減の確認が行われる程度です。大抵はお客さまにリラックスしてもらうため、あまり積極的な会話は行われません。

 が、先日、私は「『会話』が気持ちいいな」と感じました。

 特別なおもてなし対応をされたわけではありません。むしろ、荷物を施術ベッドの下に片付ける際には、不注意からか彼女の足がぶつかってしまい「あっ、すみません!攻撃してしまいましたね……」と言われました。また、施術が終わった後には「使い終わったタオルは、そこのイスにポイッて置いておいていいですからね」とカジュアルに言われました。

 では、なぜ心地良かったのか、その理由を突き詰めて考えたところ、施術者の彼女が発する言葉に、自分の感情が込められていたからだと気付きました。

 これが通常だと、終わった後の声掛けは「使用されたタオルは、そちらのイスの上に置いておいてくださいね。ごゆっくりお着替えください」で、ぶつかってしまったときは「申し訳ございません。痛くなかったですか?」だと思います。

 どちらの対応も間違いではありませんし、そもそも接客に正解はないと思います。でも、文字にしただけでも不思議と印象が違いませんか?

 誰にでも通用する事務的なマニュアル対応は、考えなくていいので楽です。でも、要件を伝えるだけならロボットでもできます「接客のないホテル」に宿泊して感じたこと)。

 

 不思議なもので、事務的な対応は相手にも伝わっています。逆に、相手が本気で自分に応対してくれている、向き合ってくれていると分かると、人は安心できます。自分から心を開くのは受け入れられるかが分からず、怖いものですが、相手が好意的だと好意を返せる人は多いです。

 彼女は終始ニコニコしていましたが、いわゆる無理した営業スマイルではなく、案内も自分の思ったことを素直に話しているように私は感じました。