「Amazonは脅威。このままいけばシェアは奪われる」と考える経営者は多いのですが、「チェーンストア経営の中で自社に活用できるのでは?」と考えると、その見え方は大きく変わってきます。なぜ、Amazonはあそこまで急成長し続けられるのか? その利益を出す組み合わせと思考法を知れば「ここは活用できるはず」という点も見えてきます。

Amazonは顧客に不満を抱かせない

 リアル店舗チェーンの競合となるのは、大きくみるとネット通販全域ですが、ネット通販と一口に言ってもAmazon、オンラインモール、メーカー直販など、さまざまです。全てスマホやパソコンから買物できる点では同じでも、実際に使ってみるとそこに大きな差があることに気付きます。

 例えば、Amazonでいつも購入している商品を、国内の大手ネットモールで注文すると分かることがいくつもあります。その1つが、注文1週間後ごろに、「商品が入荷しなかったのでキャンセルさせていただきました」と品切れの通知メールがきたりすること(そのときはいろいろなやり取りをしたのですが、結局、入荷未定で買えませんでした)。

 想像するに、これは「品切れの連絡が遅い」「品揃えの拡張性が弱い」「顧客の声に耳を傾けない」などが重なった結果でしょうが、今回注文したのは、いわゆる普通のコンビニの棚に並んでいる清涼飲料水。残念ながらそのたった1つの商品も買えなかったのです。「あれ? ひょっとすると製造中止になったのでは?」と思いきや、今度はAmazonで注文したら問題なく2日後に到着。

 つまり、Amazonはここで挙げた顧客の不満は少なくとも全てクリアして、商品・サービスを提供できているということです。

Amazonに顧客流出するリアル店舗が拡大

 チェーンストアの経営も同じ。夕方、スーパーマーケットに買物に行ったときに欲しい商品が品切れしていたら、夕食のメニューを変更しなければなりません。有職主婦が増え、ご主人の残業が減って、自宅での食事の機会が増える中、1日中、全ての商品がそろっていなくてもしょうがない……とか、朝一に刺し身や惣菜はそろってなくても……といった、旧態依然の売場体制で店舗展開をしていればどうなるか。

 こうしたマーケットの変化に気付かぬまま、顧客が望む商品をそろえておかなかったら、顧客はAmazonで注文をして今後はそちらにスイッチ、二度と戻ってこないということが起こります。

 実際に書店は衰退しているし、家電量販店やホームセンター、最近では釣り具といった趣味の領域でもこうしたことが頻繁に起きていることが分かっています。

 つまり、今後は自社でAmazonにビジネスアカウントを持ち、品切れを起こしやすい商品は売場にQRコードを設置、そこからAmazon経由で自社商品を売って配達することも考えねばならないわけです。

品切れ対策の不備がAmazonを成長させる

「そんな面倒なことを……」との声が聞こえてきそうですが、おっしゃる通りで、もし品切れ問題を真剣に考えるなら、企業としてここまで徹底して品切れ防止策をとることが重要で、それで顧客の流出が防げます。

 そして、そこまでやるチェーンであれば、それが話題となり、お客さまを引き込める活用策としてもAmazonは使えるという話です。

 国内ナンバーワンの靴チェーンでは、お客さまから「このデザインのこのサイズはないのか?」と尋ねられ、サイズ切れしていたとき、近隣店舗まで走って取りに行き、提供すると話題になったことがありました。

 靴に限らず、食品、雑貨、衣料品でも、顧客が使い慣れたものが「品切れ」して無ければ、それをリカバーする方法や手法を企業が持たない限り、店の力は弱くなりなる一方。Amazonはそこをカバーすることで、売上げシェアを奪っていることに気付かなければなりません。

ただ、単品の大量発注にはAmazonも弱い

 今度は「うちではそんなに品切れはしていないはずだ」という声が聞こえてきそうですが、「貴社の店舗の朝10時の品切れ総件数は何件ですか?」とお聞きすると、皆さん「えーと?」と言葉を詰まらせます。

 自社の品切れ件数の実態を知り、その需要を予測できるようにすることで、Amazonにはできないことも可能になります。例えば、Amazonは品揃えの幅が1兆アイテムと限りなく広くても、単品の在庫数はそれほどたくさん持てません。従って、大量注文が入ると長期間「品切れ」となるわけです。

 これに対して、チェーンストアは自動発注体制を全店導入することで、1年365日の日々の発注予測を立て、特定の単品の在庫確保できる点が強みになります。もちろん、それを正しく運用するには人時割りレイバースケジュールがあり、地域情報収集や日々の品切れ点検は必須となりますが、そうしたことに再投資することが、今、チェーンストアに最も必要なことと言えます。